職場でパソコンをカタカタと鳴らしていると、周りの景色が変わった。
そこは教室で、エンピツの音だけが聞こえる。
テスト中だとわたしは気付く。
エンピツのリズムは心地よく、しばらく目を閉じていると徐々に音が消えていった。
教室は静寂に包まれる。
わたしがいなくなった。
それがわかったとき目を開けた。
カタカタとまた音が聞こえた。
「あれ? なんか雰囲気変わった?」
と気になっていた同僚に声をかけられる。
「それはデートのお誘い?」
自分でも思っていない言葉が自然に出て、とっさに「あ、なんでもない」と否定する。
「なんでもなくなければよかったのに」と同僚は答えた。
また音が消えていく。
心だけがここにある。
9/29/2022, 10:30:57 PM