みんなが私をちやほやするのは当たり前だし、私を羨んでしまうのも当たり前。
いろんな男が私に言い寄ってくるし、傅くのも当たり前。
何をしたって許される私、当たり前。
「わがまま」? そんなことないわ。そう言って、あなたも私がかわいくてしょうがないんでしょ。わかってる。当たり前だもの。
私にとってご都合主義の展開? 当たり前じゃない。
だって、この世界は私を中心に回ってる。当たり前でしょ!?
『私の当たり前』
山の中腹から見下ろす夜の街は明かりがきらきらと輝いて、まるで闇色の絨毯に零したたくさんの宝石か、あの高い空にある無数の星々のようだった。
そこから空に向かって、大きな音と共に、色とりどりの花が咲き乱れる。
こんな素敵な場所があったなんて、知らなかった。
ここへは花火がよく見える場所を探してやって来た。穴場だった。
小高い山の夜は少しだけ肌寒い。そう思っていると、彼がそっと背後から包み込んでくれた。
きっと、輝く宝石を見かけるたびに、夜空に広がる星を見るたびに、夏が来て空に打ち上がる花火を見上げるたびに。私はこの温もりと、今日見た街の明かりを思い出すのだろう。
『街の明かり』
『笹 大特価 500円』
7月7日。久しぶりに晩ご飯を自炊しようと寄ったスーパーで、笹を思わず買ってしまった。
500円が本当に大特価なのかはわからない。
笹を欲しがるなんて、七夕に浮かれている人かパンダくらいなものだろう。
しかし、せっかくの七夕なのだ。本当に願いが叶うなんて、もちろん思っていない。それでも、こうやって少しは楽しんでもいいんじゃない?
そんなことがあって、笹を担いで帰宅して、気付いた。
そういえば、短冊を買っていない……。
1番重要な短冊を忘れてしまった。笹だけあってもしょうがない。パンダじゃあるまいし。
ああ、でも、いいか……ポストに入っていたチラシの裏でなんとかしよう。吊す為のこよりは――輪ゴムでいいか……。
そうやって即席の短冊を作ろうとチラシを手に取る。目に入るスーパーの品々。そして、また気付いた。
あああ醤油切れてたんだああ買うの忘れたああああ。
何しにわざわざスーパーに寄ったと思っているんだ。笹を買ったところでお腹は膨れないんだ。パンダじゃあるまいし。
きゅるきゅるとお腹が鳴る。
もう、いいや、今日は……○ーバーを頼もうそうしよう……。
――[もうちょっとちゃんとした生活を送れますように]
『七夕』
その日はたまたま家に寄った友達と、二人で犬の散歩に行くことになった。
せっかくだから、いつもと違うルートを通ってみる。
すると、家から少し離れた川の土手の先に、小さな小さな公園があるのを見つけた。
置かれていたのはブランコくらいで、僕らはそこに腰掛けていろんな話をした。昨日見たテレビ番組のこと、好きな人のこと、夢のこと、未来のこと――くだらない話から、僕らにとって大切な話まで。
繋がれた犬は暇そうに僕らを待っている。
沈みかけた夕日はキラキラと輝いて、春の終わりの湿った土の匂いが漂って。まだまだ僕らは話し足りなくて。あぁ、まだ今日が終わらなければいいのになって、そんなことを考えていた。
あの頃の僕らは、今、どこにいるんだろう。
あれから何年もして、犬は遠い空の向こうへ行ってしまって、僕も地元を離れ、君は地元で働き素敵な人と出会って結婚もしてしまった。
朝起きて、仕事へ行って、夜遅く帰ってきて、後は寝るだけ。そんな色のない毎日を繰り返す。
そこへ、たまに君から届く「元気してる?」「予定が合えばご飯でも」のやりとりも、今は近くにいないものだと改めて実感して、少し寂しく感じる。
――今でもたまに思い出すんだ。
楽しかったあの道のり。キラキラと輝いていたあの日。笑い合ったもう戻らない日々。
『友だちの思い出』
私は星が好きだ。宇宙が好きだ。星空が大好きだ。
実は小さい頃は星空が怖かった。
暗闇の中に点々と白く輝くものがあって。なぜだかそれを見ていると、吸い込まれていくような気がして。星空に落ちていくような気がして。
だから、夜に外を歩く時は下を向いて、両親の手をぎゅっと握っていた。
いつからだろう? こんなに星空が好きになったのは。
何がきっかけだったかもわからない。
けれど、本格的に好きになったのは、天文学を学べば良かったと後悔するくらいには大人になってからだと思う。
今は暇があればプラネタリウムに行き、流星群があれば深夜に街をぶらつく。そうするくらいには星空が好きだ。
「星空」
気まぐれに始めた物書きアプリのお題に、その二文字が現れた。
私の大好きな星空がお題?
それなら、最高のものを書かなくては。
今までも星に関する物語を書いたことはある。
だが、それ以上のものを書きたい。もっと自分で納得できる、最高のものを!
そう考えると、余計に何を書いたらいいかわからなくなる。
思考が袋小路に陥って、どうしたらいいかわからなくなる。
――いや? そうか。
唐突に理解した。
そうだ。私がどれだけ星空が好きか、語ればいい。私が星空に抱く想いを、文章にして書き出せばいい。
私と星空の話。それが私にとっての最高の物語だ。
私は指を動かし始めた。
『星空』