川柳えむ

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 その日はたまたま家に寄った友達と、二人で犬の散歩に行くことになった。
 せっかくだから、いつもと違うルートを通ってみる。
 すると、家から少し離れた川の土手の先に、小さな小さな公園があるのを見つけた。
 置かれていたのはブランコくらいで、僕らはそこに腰掛けていろんな話をした。昨日見たテレビ番組のこと、好きな人のこと、夢のこと、未来のこと――くだらない話から、僕らにとって大切な話まで。
 繋がれた犬は暇そうに僕らを待っている。
 沈みかけた夕日はキラキラと輝いて、春の終わりの湿った土の匂いが漂って。まだまだ僕らは話し足りなくて。あぁ、まだ今日が終わらなければいいのになって、そんなことを考えていた。

 あの頃の僕らは、今、どこにいるんだろう。
 あれから何年もして、犬は遠い空の向こうへ行ってしまって、僕も地元を離れ、君は地元で働き素敵な人と出会って結婚もしてしまった。
 朝起きて、仕事へ行って、夜遅く帰ってきて、後は寝るだけ。そんな色のない毎日を繰り返す。
 そこへ、たまに君から届く「元気してる?」「予定が合えばご飯でも」のやりとりも、今は近くにいないものだと改めて実感して、少し寂しく感じる。
 ――今でもたまに思い出すんだ。

 楽しかったあの道のり。キラキラと輝いていたあの日。笑い合ったもう戻らない日々。


『友だちの思い出』

7/6/2023, 10:52:04 AM