アシロ

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1/10/2025, 2:49:09 PM

みたされない心
雷光が絶えず嵐のように吹きすさぶ
依然として、雲間は晴れず
変遷なども、起こるはずもなく
罵られ、嘲られ、それでも私は
変わりたかった。変わりたかったのだと
ギュッと握った縄の楕円に、首を通した



◇◇◇◇◇◇
初めての試みをしてみました。
色々遊べて楽しいですね、もっと引き出しを広げたい。

1/9/2025, 3:03:24 PM

 俺の趣味は天体観測だ。まだ小さい時、夏場に家族でキャンプに行った。その後それは毎年夏の恒例行事となるのだが、幼い自分にとっては人生で初めてのキャンプだった。ただ、幼かったがゆえ、当時の自分には「キャンプ」というものが何なのかよくわかっておらず、ただ、準備を進める親父やお袋が何となく楽しそうな雰囲気を醸し出していて、それを見ていた俺は「キャンプ」ってものは「楽しいこと」なんだなと解釈し、その楽しいイベントを心待ちにしていた。
 そうして始まった初めてのキャンプ。親父とお袋がテントを張るのを形ばかり手伝ってみたり、家の付近では見掛けることのない珍しい虫をたくさん見つけたり、足首ぐらいまでしか水深がない綺麗で穏やかな川で遊んだり、体験すること全てが「初めて」ばかりで、遊び盛りなクソガキだった俺は昼間のキャンプを心ゆくまで楽しんだ。
 だんだんと長かった昼が夕方に差し掛かり、そして夜を迎えた。テント内の上部に吊るされた縦長のライトが童話やゲームに出てきそうだな、とか思ったりして、そんな些細なことにすら興奮した。
「夕夜(ゆうや)、ちょっとおいで」
 そう親父がテントの外から手招きしながら呼ぶので、俺は素直にテントの入口へと駆けていき、もうとっくに真っ暗になった夜のキャンプ場へと躊躇うことなく足を踏み出した。
 ······あの瞬間を、俺は未だに忘れることが出来ない。
 真っ暗な夜の帳の中、無数に光り輝く大量の星々。やけに眩しく目を引かれるもの、その輝きに寄り添うようにひっそりと点在する明るさも大きさも控えめなもの。ただの点にしか見えないものまで、ありとあらゆるたくさんの星が、自分の頭上何処を見渡してみても広がっていて。その光景が、あまりにも美しすぎて。俺は······暫くの間、声も出せず、息を呑むことしか出来なかった。
「お、夕夜? お前、星が好きなのか?」
 そんな俺を見て親父は意外そうな口振りでそう言い、俺の隣に立つとその場でしゃがみ、当時の俺の身長と同じぐらいの大きさになると、でっかい手でわしゃわしゃと俺の頭を撫でくり回した。
「ねえ! これ、ぜんぶ、ほんとうにほしなの!?」
「そうだぞ〜? あのキラキラしてるやつぜぇーんぶ、お前の知ってるお星様だ」
「っでもでも! いつもとちがう! いつもはこんなたくさんみえない! どこにかくれてたの!?」
「ん〜、お星様は隠れてたわけじゃないんだよなぁ。ただ、家の周りだと暗さが足りなくて、ちゃんとそこにあるのに見えないんだよ」
「······よく、わかんないけど······」
 俺は首が痛くなることも厭わずに上空を見上げたまま、自分の願いを口にした。
「いえにかえっても、いつも、かくれてるやつもちゃんとみてあげたい」

 その後、誕生日に子供用の望遠鏡を買ってもらって毎晩夜空を眺めたり、学校が休みの日に頻繁にプラネタリウムに連れて行ってもらったりと、俺にとって「星」「天体」というものはどんどん身近なものへとなっていったし、毎年夏になれば家族でキャンプに行っていたのでそこで素晴らしい星空に出会うことも出来たが、初めて見た時の感動にはほんの僅か、届いていないような気がして。
 どうしたらまたあれに近い感動を味わうことが出来るだろうか? と考えては悩み、考えては悩みを繰り返している間に、気が付けば高校受験が迫ってくるような年齢になっており、たまたま資料で見つけた高校に「天体観測部」があると知った俺は、脳直でその高校を第一志望校にし、そして無事入学することとなった。

 そして月日は流れて。俺は二年生に進級し、それと同時に何故か部活で副部長に推薦された。どうやら部長からの提案だそうで、俺は星座や天体についての知識が豊富でやる気もあるから、とのこと。それを告げたのは全く関係のない三年生女子の先輩だったが、チラリと部長──星観(ほしみ)先輩を見遣ると、こちらに気付いた部長はゆるーくへにゃっとした笑顔と共にピースサインを向けてくる。どう対応するのが正解かわからなかったので、軽く会釈を返すだけに留めておいた。
 星観先輩とは今まで個人的な接点はそれほどなく、向こうが先輩というだけでこちらから何か話し掛けるというのも気が引けたし、そもそも俺が一年生で天体観測部に入部した時、先輩は既にただの先輩ではなく「副部長」という立場に収まっていた。この人が副部長だと知った時、当時の部長共々、俺は尊敬の念を抱いていたものだが······それも今となっては昔の話だ。
 先程の先輩の所作からわかるように、この人はやること成すこと全てにおいてゆるかった。前任の部長は割と熱血派というか、入部したての頃に天体観測への熱い気持ちを力強くぶつけられたこともあり、「あ、この人俺と同類だ」という親近感を抱くことが出来た。他の先輩や同期達は、みんなそれぞれ好きになったきっかけ、好きな分野、得意な分野など分かれてはいるものの、「天体観測」という共通の趣味で繋がっている仲間なんだと実感することが出来た。
 だが、星観先輩からはそういった「熱意」だとか「情熱」だとか、「天体観測が大好きなんだ!」という気持ちが微塵も伝わってこなかったのだ。部活動にはきちんと参加するし、夏の合宿などにも当然来てはいたが(副部長という立場上仕方がなかったのかもしれないが)、何処かぼんやりとした様子で望遠鏡の向こうを眺める先輩を見ては、この人は何故天体観測部に入部なんてしたのだろう? とずっと疑問に思っていた。
 それなので、俺は星観先輩についてほとんど何も知らない。もしも先輩の良いところを聞かれたとしたら「えーっと······名前が素敵ですよね」ぐらいしか答えられないであろう自信がバリバリにある。
 ······俺、副部長って立場でこの人と上手くやっていけんのか······?
 そんな不安が胸中を支配していた、桜が散り乱れる四月の前半であった。

 そして現在。季節は過ぎ、期末テストを終え、夏休みが到来した。
 その夏休みの初日。まだ夢の中の世界を漂いスヤスヤしていた俺を、お袋のクソデカボイスが概念的な意味で叩き起した。
「夕夜ーーー!! ゆーーうーーやーーー!! 早く支度しなさい、お友達もう待ってるわよ!!」
 俺は二重の意味で飛び起きた。シンプルにお袋のクソデカボイスにやられたこと。そして······え? 今お袋はなんて言ってた? 友達が? 待ってる? 何? どういうこと?? 俺今日なんも予定ねぇけど????
 全く理解が追いつかないが、ひとまず寝巻き代わりのTシャツとハーフパンツのまま自室を出て、お袋の声が聞こえる階下の玄関の方へと向かうため、眠気まなこを擦り欠伸をしながら階段を降りていく。
「うるっせぇな〜〜! 俺今日なんも予定とかねえって! 友達って誰、が······?」
 玄関が見える位置まで来て、俺の体は驚きのあまりその場でピタリと硬直した。こちらに体を向けて「全くもう」とでも言いたげにプリプリ怒っているお袋。その背後から、ひょこりと上半身だけを覗かせて微笑むへにゃり顔。
「ゆーうやくーん! あーそびーましょー!」
「は? ······ハァァァ!? 部ちょ、な、何で!? 俺の家!? てか、遊······ハァァァァアア??????」
「ほら、もう! とっとと出掛ける支度しておいでって! お友達にはその間、お茶でも飲みながら待っててもらうから!」
 お袋はそう言い、恐らく本当にお茶の準備をするべくキッチンの方へ向かっていってしまった。玄関に取り残された俺と部長。何気なく部長の姿を全身しっかり見てみれば······なんと、荷物の中に望遠鏡があるではないか。······え? 明日もしかして槍でも降る?
「あの、部長······? 俺なんもわかってないんですけど······? 俺に何の用ですか······?」
「え? さっき言ったじゃーん。あーそびーましょー、って」
「ええ······っと、ですね······。何して遊ぶと······??」
 ダメだ、この人と一対一で喋ると頭が痛くなりそう。全力で放ったボールをスッ、スッ、と意図的に空振りされているような、投げごたえが全くないと言うか、絶望的に噛み合わない感というか、そんなものをヒシヒシと痛感する。
 頭を抱えたくなった俺だったが、部長が次に放った言葉により逆に頭を勢いよく持ち上げることとなる。
「そんなの、一つしかないっしょ〜?」
 そう言いながら、部長は荷物に紛れている望遠鏡をチョイチョイ、と指差し、まるで幼い子供のように屈託なく歯を見せ笑った。
「星のかけら、一緒に探してよ」



◇◇◇◇◇◇
書きたいことに対してあまりにも時間がなさすぎたので、一旦キリのいい所で締めておきます。
また何か続き書けそうなお題が来たら書きたい願望。

1/8/2025, 1:23:42 PM

 ──リンリン リンリン 輪となり踊れ
 ──リンリン リンリン 輪となり歌え
 ──鐘の音八つ 鳴ったらば
 ──輪廻の内へ 永久(とこしへ)に

 私の住む町は、所謂「ド田舎」だ。地名にはお情け程度に「町」などと付けられてはいるが、「町」などとは程遠くむしろ「村」と表現したって何の違和感もない程度には程よく寂れている。
 背後に大きな山、周辺を細い川でぐるりと囲まれており、その川の内側が私達町民の住む居住地だ。川には数箇所に小さな橋が架けられていて、その橋を超えた先を私達は「外」と呼んでいる。
 住民の数は、このそう広くもない面積にしてみればそれなりに居る方だと思う。昨今では田舎の若者離れ、過疎化などといったことが問題となっているようだが、幸いこの町はそんな話題とは無縁で、とてもいい場所だと思う。
 町民のほとんどは農業や家畜の世話などで生計を立てていて、平和でのどかな田舎町そのもの、といったところだ。もしも気になるならば気軽に田舎ライフを満喫しに············と、お誘いしたい気持ちはやまやまなのだが、田舎というものは大抵の場合は内の結束力が強く、新参者・余所者を嫌う傾向にある。例に漏れず、この町にもそういった側面が勿論ある。
 この町には、幾つかの重要な「掟」が定められている。
 一つ。外から来た者を内に入れるべからず。
 一つ。「掟」は勿論のこと、町の内情を外に漏らすべからず。
 一つ。「わらべうた」を外で歌うべからず。内容を町民以外の者に語ることも固く禁ず。
 ······とまぁこんな感じに、良くも悪くも閉鎖的な場所なのだ、この町は。しかしそれだからこそ、この町の平穏は保たれているとも言える。とにもかくにも、外との繋がりを避け、外からの干渉を極力減らしたいのだ。長年この体制で続いてきた町だ、たった一人でも外の者を内に招いてしまえば、思わぬ所でトラブルの元となるかもしれない。だからこの町の内情も、古くから伝わり歌われ続けてきた「わらべうた」の存在も、その意味も、内部で共有するに留めておきたいのだ。今日に至るまでこの「掟」が守られてきたからこそ、贅沢は出来ずとも平和な暮らしを謳歌する「今」がある。
 それに、厳しいのは外の人達に関することだけで、外の者を内に招くのはご法度であるが、逆に内の者が外へ出ることに対してはある程度融通が利くようになっている。とは言っても、それは月に二度程度であれば外の大きなスーパーへ買い出しに出掛けても良い、というレベルのもので、例えば町から出て遠くの大学に進学するだとか、この町を離れ外へ引っ越すだとか、そういった長い期間、または永久にこの町を出る行為に関しては、何となく「やってはいけないこと」として暗黙の了解となりつつある。
 ······ここまで徹底して外との関わりを避け、内情をひた隠し、見知った顔同士のみで平和を築き上げた我が町であるが。外に知られたくない理由が、内輪のみで話を留めておかなければならない理由が、ちゃんと、しっかり存在している。

 何から説明すればよいのやら······ではあるが、まずは簡単な話から。この町の住人の最大寿命は、八十八歳だ。必ず、八十八歳まで生きたら八十九歳を迎えることなく死ぬ。勿論、病や怪我、事故などで八十八歳に満たない年齢で死ぬ者も中には居る。しかし、どう頑張って健康に気を遣い、長生きを心掛けたところで、その努力は八十八歳を迎えれば全て水泡と帰す。科学では証明出来ないものを人はオカルトと呼ぶそうだが、その説に則れば、これは正しくオカルトに寄った現象なのであろう。私達町民は、既に「そういうもの」として何の疑問も抱くことなく受け入れているのだけれど。
 オカルト、という単語が出てきたことであるし、次の話に移ろうと思う。八十八歳を迎え、死んだ者たちのその後のことだ。先に言っておくが、きちんと葬儀はするし、墓も用意し、仏壇も飾り、しっかり弔う。死者を無碍に扱うようなことはしない。ただ一つ、この町特有の現象がここでも起こる。例えば誰かの葬儀を終え、数日でも数ヶ月でも数年でもいいが、日が経ち何処かの家に赤ん坊が産まれたとする。その赤ん坊のことを私達は、直近に葬儀をした者の生まれ変わりだとしている。いや、しているという言葉は正しくない。実際、生まれ変わりなのだ。流石に喃語しか話すことの出来ない赤ん坊時代は特に何事もなく過ぎていくのだが、ある程度言葉を喋れるような人間になると、ふとした時に突然、前世に関することを口にする。前世で「最後に大福が食べたかったなぁ」と思いながら死んだとしたら、子供らしからぬ口調で「今すぐ大福が食べたいのう」と言いながら家の戸棚を開け大福がないか探し出す、とか、ざっくり説明すればそんなことが日常的に、そこかしこで当たり前のように起こる。みんな誰かの生まれ変わりで、その前世も誰かの生まれ変わり、そしてその前世も······といった具合で、一つの魂に数多の人生の記憶を宿しながら延々とこの町で生きていく。そういう人間なのだ、私達は。
 ······まぁ、信じられないのも無理はない。しかし、それがこの町で、それが私達で、それ故に外の者を招いてはならず、外にこの話を持ち出してもいけない。こんな話が世に出回りでもすれば、私達の平穏な暮らしは泥団子をぐしゃりと踏み潰すようにしてあっという間に瓦解してしまうことだろう。

 最後に、私が実際にこの町で体験したことを少しばかり。
 五歳の時に、曽祖父が亡くなった。八十八歳だった。
 それから四年後、曾祖母が亡くなった。八十八歳だった。
 それから三年後、祖父が亡くなった。六十五歳だった。死因は癌だった。
 そして、それから五年後。町内に唯一ある木造校舎の古い高校に当然のように私は入学し、勉学に励みながら日々の生活を送っていた。そんなある日、学校からの帰り道。幼稚園児ぐらいの年頃の男の子と、我が家の近くでバッタリ鉢合わせた。その子は私をジーッと見つめたあと、口を開いた。
「よう制服が似合うとる」
 やはりか、と私は思った。この子のことを私は一方的に知っていた。だってこの子は、祖父の葬儀の後に最初に産まれた子だったから。
 私は何の躊躇いもなく会話に応じた。
「久しぶり。最後、だいぶ苦しかったんじゃない?」
「まぁ、それなりになぁ。仕方あるまいて」
「可哀想だからさ、出来ることなら殺してあげたかったよ」
 すると目の前の男児は、下卑た表情で口元を吊り上げ笑った。
「俺を川に突き落として殺しておいて、殺してあげたかっただぁ? 地獄の閻魔も聞いて呆れるだろうよ!」
「何世紀も前のことをまだ根に持っているのか? あの頃はまだ殺生も自害も禁止なんてお触れは出ていなかったが、今は違う。だって、気に入らない“生”を授けられたからって理由でホイホイ自殺を繰り返されたんじゃあ、流石に人口の均衡が保てない。殺人も同じ理由で今じゃご法度だ。お前ならよく知っているだろう?」
 私ではない私がそう問えば、男児は実に愉快げにほくそ笑んだ。
「山の神を前に“お前”とな? 口の利き方がなっておらぬなぁ」
 それを聞き、私は恐怖に身を震え上がらせ······る、真似だけをして。負けじと不敵な笑みを拵え、男児の形をした“何か”を見下ろすようにし、真っ直ぐ視線で射抜く。
「口の利き方がなっておらぬのははたしてどちらか。我を川の神と知っての愚行か?」
 男児はその場でケラケラと笑う。それに釣られて、私······いや、“我”も笑った。
「いやはや······久しいのう、川の。いや······こうして外に出ることすら随分と久しい。どうだ、その後は? 仔細、滞りなく、川の流れのように順調であるか?」
「ふむ、以前直接会話をしたのは······ああ、そうか。自害者が増え始めた頃のことであったか? 先にも申した通り、その件はとうに型が付いておる。我らの願い通り、我が子らはこの土地にて平穏無事な暮らしを営んでおるわ。まこと、愛いことよ」
「山の神である儂と、川の神である主。二柱の神より寵愛を賜るこの地の民達のなんと幸福なことよ」
「我らが創りし“まじない”が、よほど馴染んだのであろうよ。いくら我が子らのためとはいえ、我ら二柱揃いも揃って一体幾つの昼と夜とを無駄にした? あの時のこちらを嘲り笑うかのような月の神の態度、今思い出しても腹の臓物が煮えかえる。······が、我が子らの幸福を確たるものとするためだ、何の苦にもならなかった」
 我は、小さな山の神の両手を取る。そのまま己の腕ごと横に開き、歪ながらも円を描く。
「折角の再会であるぞ? さあ、今一度」
「······我が子らへ“まじない”を」

 ──リンリン リンリン 輪となり踊れ
 ──リンリン リンリン 輪となり歌え
 ──鐘の音八つ 鳴ったらば
 ──輪廻の内へ 永久(とこしへ)に




◇◇◇◇◇◇
Ring,Ring
リンリン リングリング ○○ ∞ 8
という連想ゲーム的なところから因習村っぽい話に着地しました。
神様は気まぐれで戯れで身勝手。よほどこの土地の人の子らを気に入ったんでしょうね。

1/8/2025, 12:26:25 AM

 昨日はちょっと時間がなかったので、テーマとは全く違うことを書いてしまうのですが。
 前作、前々作とだいぶ読む人を選ぶような内容だったにも関わらず、思っていたよりもたくさんのご反応を頂けてとても有難かったです。上記以外の作品でも、私はどうにも不穏な要素を入れないと死んでしまう病ゆえに何処か漠然と死を連想させるものだとか倫理観ぶっ壊れたものを書きがちなのですが、作品を上げる度に都度反応を頂いていたので、本当に有り難いことですし感謝の気持ちでいっぱいです。どうも有難うございます。

 ここからは余談となるのですが、私は文字書きのくせに普段全然読書をしないダメな奴なのですが。
 中学生の頃からほぼリアルタイムで追っていた、西尾維新先生の『戯言シリーズ』『人間シリーズ』が大好きでして、文章の書き方は西尾先生に教わったと言っても過言ではないと思っておりますし、唯一尊敬している作家様だったりします。今でこそだいぶ薄れたとは思っておりますが、学生時代の頃とかに書いたものはめっちゃ西尾節っぽい何かが炸裂しまくってました。
 そして私、基本的にはずっと二次創作の畑で生きてきた人間でして、自分で一から設定など考え、そして文章を通して自分の頭の中の風景を読んでくださる方に伝えなくてはならない一次創作なんてとてもじゃないけど私には書けないと思ってましたし、実際ずっと書いたこともなかったです。でもいつまでもそれじゃいけないな、と一念発起して初めて書いてみた一次創作が、年末にこちらにも投稿させて頂いた『死で繋がる百合』シリーズ(?)でした。なので、本当に一次創作に関してはひよっこもいいところでして。
 そんな自分がこのアプリを友人から教えてもらい、毎日お題を確認してこんなにも一次創作を量産出来ていることが信じられないです。ビックリです。
 本当に、このアプリを使い始めてよかった。そういうお話でした。

1/6/2025, 1:51:05 PM

※昨日書いた話との繋がり有りなので、お手数ですがそちらに記載してあります注意事項をお読みになって頂き、大丈夫そうであれば是非こちらもお読み頂ければと思います。特技は地獄を作ることと地雷原を作ることです、よろしくお願いします。



 久しぶりに、幼い娘と二人で遠方へドライブに向かった。遠方とは言っても、車で片道二、三時間程度の場所ではあるが。狭い世界で生きている······いや、生かされているこの娘にとっては、その程度の遠出すら珍しいものらしく、また、特別なイベントの一種であるようだった。早朝、娘の現在の居住地の前へ車を停車させた途端、待ってましたとばかりに何が入っているのかよくわからない小さなリュックを背負い、水筒を肩から斜めに掛けた娘が玄関から飛び出してきたのを見て、あまりの気合いの入りように思わず小さな笑いが零れてしまった。

 娘は先日の誕生日で八歳になった。まさに育ち盛りな年頃だというのに、その成長を毎日傍で見守ることが出来ない現状が歯痒くて仕方がない。
 それには深い訳があり、有り体な言葉で済ますとするならば所謂「家庭環境の問題」という奴だ。更に詳しく付け加えるならば、娘の母親に当たる人物とは既に離婚が成立しており、娘の親権を母親が獲得したから、といった理由になる。
 当時の私は恥ずかしいことに、仕事こそきちんとこなしてはいたが、職場で溜まったストレスを妻にぶつけることでしか生きていけない情けない人間だった。溜まるストレス、増える煙草。時には妻に手を上げたことすらあった。
 そんな駄目な夫だったが、娘のことは心の底から愛していたし、なるべくそういった「悪い父親」の側面を娘の前では見せないよう努めていた。妻に対しての感情は、もうよくわからなかった。妻も妻でそれなりに気の強い女で、ただやられてばかりで泣き寝入りするような人間性ではない。本人はバレていないと思っていたのか、それともバレたところでどうでもいいと思っていたのかは知らないが、いつ頃からか他所で他の男と遊び始めたことに私は気付いていた。気付いていたが、あえてそれを指摘するようなことはしなかった。だって、もうどうでもよかったから。
 かくして「離婚」というものが現実味を帯びてきた頃、妻が出掛けている時に私は娘の前でしゃがんで、目を合わせ、聞いたのだ。
「百合は、お母さんのこと好きか?」
「? うん! 好きだよ!」
「じゃあ······お父さんのことは、どうだ?」
「お父さんも好き! もーっと好き!」
「もっ、と······?」
 まさかそのような回答を返されるとは思いもしていなかったので、俺は事態を飲み込めずにポカン、と大口を開けて呆けた顔をしてしまった。
 すると、娘は······百合は、こう続けたのだ。
「んっとね、ケンカしてるときの二人は、あんまり好きじゃないの。でもそれ以外の時は好き! お父さんもお母さんもやさしいから! でもお母さんはたまにね? こわいお顔で私のこと見てくる時があるの。お父さんはそんなことなくって、いーっつもやさしいから、だからもーっと好き!」
「そう、か······そうだったんだな······」
 百合の言葉に衝撃を受け、鈍器で頭を殴られたような心地になりながら、必死で目の前の愛しい娘を掻き抱いた。涙が幾筋か、頬を伝った。
「ごめん、ごめんなぁ······お父さん、気付いてあげられなくて······本当に、悪かった······!」
「お父さん? どうしたの? 何であやまってるのー? ねえ、お父さんってばー!」
 娘が私の背中を両手でポコポコと叩いてくる。とても、とてもか弱い力だった。か弱くて、無知で、無力な、守らなければならない私の娘。そう、再確認したのだ。
 だから勿論、親権については元妻と争った。しかし、私が妻に暴力を振るっていたこと、そして妻が浮気をしていたという決定的な証拠がなかったことにより、私は百合の親権を獲得することが出来なかった。自業自得だ。そう割り切ろうと思ったが、そんなこと到底無理な話だった。だから私は元妻に頭を下げ、一ヶ月に一度でいいから百合と会うことを許してほしい、と懇願した。元妻は何の躊躇いもなくすんなり了承した。思えば、元妻はあの時には既に百合への関心を何もかも失っていたのかもしれない。それなのに親権は譲らず、こちらに養育費の支払いを要求し、シングルマザーとして生きていこうとしていたのだ、あの女は。
 しっかりと百合の面倒を見、真っ当に育てていってくれるのならば私だってきっと納得した。なのにあの女は、その責任すら放棄した。いつのことだったか、百合と会った時に学校の話を振ったことがあった。楽しいか? 友達とは上手くやれているか? 確か、そんなようなことを聞いたのだったと思う。それに対する百合の答えに、私は驚愕するしかなかった。
「あのね、学校には行ってないの。お母さんがね、行かなくていい、って。お母さんがおしごとに行ってるあいだ、家をまもるのがゆりのしごとだよ、って」
 だから私、まいにちおうちをまもってるの!
 ······そう、屈託無く笑ったのだ、百合は。それが当然のことだとでも言うように。正しいことをしているのだと誇るかのように。
 なんて、なんて可哀想な子なのかと。百合をこんな目に遭わせている神を恨み、自分を恨み、元妻を恨んだ。
 比べる対象が居ないのだから、百合が自身で自身の置かれている状況が異常なものだと気付くことは出来ないだろう。そして何より、この子はとても素直な子なのだ。素直すぎて、無垢すぎる。それだから、母親から言われたことに対して疑問を持つことなどない。全て母親の言いつけ通りに行動するのだろう。そうやって、この先も生き続けていくのだろう。
 ああ、やっぱり。
 哀れで、痛ましくて、可哀想が過ぎる。本人には何の自覚も無く、この世界の誰よりも幸せだとでも言うかのような顔で笑っているのだ。今置かれている状況が世界の全てだと信じきって、自分が「可哀想」なのだということもわからずに。ただ、ただ、笑う。笑っている。ずっと、ずっと。
 ······そんな娘を見るのは、もう限界だった。

「帰りはちょっと遠回りしてみたけど、あそこなんて良さそうじゃないか? 百合も気に入りそうだ」
「············」
「······ハハッ。ぐっすり寝てるな。きっと疲れたもんな?」
「············」
「お父さんもな、百合。······もう、疲れたんだ」
「············」
「だからさ、百合。一人で寝てないで、お父さんと二人で一緒に寝よう? 誰にも邪魔されないように、いつまでも······いつまでも······」
 河川敷横の道路を走る、その車中。
 私は、助手席で死んだように眠る百合の顔をこれでもかと目に焼き付けて。
 ──川を目指してガードレールの方へと思いっきりハンドルを切り、アクセルを全力で踏み抜いた。

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