「ただいま。会いに来たよ」
冷えた缶を頬に押し付け君は無邪気に笑う
それは1年越しの約束が果たされた瞬間
「おかえり。やっと会えたね」
汗ばむ背中に腕を回し力強く抱きしめた
暑さを誤魔化すように一口だけ口に含んだ
炭酸が抜けてしまった飲み物は、
色のついた砂糖水のようで甘さがクドく感じた。
君は、対話が苦手だと薄々気づいてる
私が一方的に話す会話は、まるで空虚で意味をなさない。
たまに相槌を打ってくれるけど話は広がらない
なんて淋しい関係性なんだろう
「沈黙より君の声が聞きたい」
ポツリと溢れた本音は君を戸惑わせる
視線を泳がせそっぽを向いた
いつか君に私の想いが届くように
波に流されガラスの瓶が遠ざかっていく
ささやかな願いを書いた手紙を入れて海に流した
言い伝えに縋って試したけれど、願いは叶うのだろうか
また君に会いたい……一緒にいたい
自らの愚かさから失ってしまった君
全てが終わったあと、後悔してもすべてが遅い
絶えることのない後悔を抱え
一人涙を流し続ける
ちょっとした悪ふざけのつもりだった。
_____あなたに会いたい、そうメッセージを送った。
今は学校は夏休み。
対面する口実なんて浮かばないし、あの輝くような
笑顔が見たくて。
彼を戸惑わせ困らせる事は目に見えてた。
我慢すればいいだけなのに、できなかった。
返信は8月になってからきた。
____いいよ。俺も会いたい。
表示された返信に目を疑い、頬をつねった。
走るような鋭い痛みが現実だと知らしめる。
緩む頬を押さえながら、その日を待つ。
会う日は2人にとってかけがえのない日に______
「………はっ」
そこで目が覚めた。
ものすごく幸せな夢を見ていた気がする。
然し、夢の内容は思い出せなかった。
無邪気に笑う姿が、眩しすぎた。
悲惨な過去を背負いながら、弱音を吐かずに笑っている。
暗闇の中を彷徨う俺にはそんな強さはなく、
胸が焼け付くほど妬ましくもあった。
僕が、柵に雁字搦めにされ身動きがとれない中でも
君は自由だった。
余分な重荷を背負うことなく、自分の人生を謳歌する。
そんな君の姿を見ながら、
嫉妬と羨望が胸の中で渦を巻き身を蝕む。
すべてのものから、自由になりたい。
君からも解放されたい。
もう苦しみたくないんだ。