あなたがいたから、私の人生に色がつきました。
あなたは知らないのでしょう、私のこれまでの人生が灰色に覆われていたことを。
そして、これからもあなたに知られたいとも思いませんが。
あなたと出会って、私には夢ができました。
あなたの笑顔が見たくて、あなたの温もりを感じたくて、あなたが全てでした。
あなたとの間に子供ができて、また私の夢が増えました
いつだって、あなたは私を照らして導いてくれました。
あぁ…本当に、私の人生幸せでした。
私の大切な貴方、すぐに来たら許しませんからね。
今日も朝からシトシトと雨が降り続いている。
男は仕事場に行くために玄関を開け、誰もいない暗い部屋に行ってきますと小さく呟き、たてつけの悪い玄関を力任せに閉める。
ズボンのポケットから鍵を取り出し、鍵をかけ、年数の感じる鉄製のボロい階段を、カンカンと音をならしながら気だるそうにゆっくりと降りていく。
-雨か…嫌な雨だな。
そう考えながら階段を降り終わった時、男は冷たい雨を降らせているどんよりとした雲を恨めしそうに見つめる
しばらく物思いにふけっていたのだろうが、諦めた表情をして、コンビニで買った透明な傘を開いて歩き始める。
あの時、勇気を出して傘を指していれば、隣に君が一緒に歩いていたのだろうか。
答えが分からないまま、男は小さな水溜まりを踏みながら歩いていく。
踏まれた水溜まりが不満そうに小さく揺らいでいた。
落ちて、落ちて、深い闇の底にどこまでも落ちていく。
感情が消えて、手足の先から自分という存在が消えていく感覚が分かる。
-あぁ…どこまで落ちるんだろう。
落ちた先には何があるのだろう。
ついに身体の感覚が消えて、思考が深い闇の中に飲まれて消えていく。
-いやだ…こわい…誰かたすけて
ハッと目を覚ますと、身体中に汗をかいていた。
窓から外を見ると深い闇が見えて夜が明けていないことがわかった。
-また、今日が始まる。
地獄のような世界に今日も放り出される。
現実でも夢の世界でも逃げ場がないなか、深い闇の底に落ちるために目を閉じる。
―ミーンミーン
蝉が一生懸命暑苦しく鳴く中、私は近所の小学校の隣を歩いて通りすぎる。
小学校のグラウンドでは、お昼休みなのか、たくさんの子供たちが走り回っている。
私にもこんな時代があったんだろうが、今では友達の顔や名前をはっきりと思い出すことができない。
この子たちは将来どんなふうに育つんだろうか。
私は、恥ずかしながらも若い頃は小さな子供をうるさく煩わしく思っていた。
大人の言うことを聞かず好き勝手に暴れまわる姿には辟易したものだ。
そんな私にも子供ができた。
かけがえのない宝物だ。
小学校にグラウンドで駆け回る子供たちをみて思う。
-この子たちが国を作り、国を守り、祖国を繋いでいくんだと。
この子たちの未来を守るためなら、私の命などいつでも差し出そう。
そう心に固く誓い、平和を守るための制服に袖を通して今日も歩く。
1年前の今日の日なんて覚えている人の方が少ないのだろう。
私自信、1年前に何をしていたのか全く思い出すことができない。
思い出すことができない中でも、その時期に何があったのかは覚えの悪い私でもはっきりと覚えている。
それは、この先1年経っても2年経っても、100年経とうが忘れることはないだろう。
まだまだ上手く歩けない小さな君が、私の好きな人の大きなお腹の中にいたんだよ。
ママと二人で生まれてくる君の名前を、一生懸命考えたんだよ。
ちゃんと産まれてきますように
健康で育ちますように
神様にもお願いしに行ったし、病院に行って君に会いにも行ったんだよ。
1年前に見た空も、景色も、食べたご飯のことも思い出せないけど、ただ君に会えることだけを考えていた、そんな1年前の今日
ただいま「 」くん、産まれてきてくれてありがとう