今日も朝からシトシトと雨が降り続いている。
男は仕事場に行くために玄関を開け、誰もいない暗い部屋に行ってきますと小さく呟き、たてつけの悪い玄関を力任せに閉める。
ズボンのポケットから鍵を取り出し、鍵をかけ、年数の感じる鉄製のボロい階段を、カンカンと音をならしながら気だるそうにゆっくりと降りていく。
-雨か…嫌な雨だな。
そう考えながら階段を降り終わった時、男は冷たい雨を降らせているどんよりとした雲を恨めしそうに見つめる
しばらく物思いにふけっていたのだろうが、諦めた表情をして、コンビニで買った透明な傘を開いて歩き始める。
あの時、勇気を出して傘を指していれば、隣に君が一緒に歩いていたのだろうか。
答えが分からないまま、男は小さな水溜まりを踏みながら歩いていく。
踏まれた水溜まりが不満そうに小さく揺らいでいた。
6/19/2023, 2:19:59 PM