「しんじゃった、おとうさんにもみてほしかったな。」
ヨウくんは、誰にも聞こえないように、呟きました。
ヨウくんは、絵を描くのが大好きです。
今日も朝からずっと部屋に閉じこもって、ひたすら絵を描いていました。
気が済むまで絵を描くと、一緒に住むおじいちゃんやおばあちゃん、お母さん、お姉ちゃんに絵をみせてまわります。
今日の絵は、お父さんが生きていたころに、家族で行った海の絵でした。海辺でみんな笑顔で砂のお城をつくっているところで、ヨウくんの大切な思い出です。
ヨウくんのお父さんは、1年前に病気で亡くなりました。ヨウくんは悲しくて悲しくて仕方なかったけれど、お父さんは天国にいるんだ、と自分に言い聞かせて寂しさを紛らわせていました。
でも、今みたいにお父さんを思い出して、胸がきゅっとなることがあります。もう会えないのは分かったけど、やっぱりまた会いたいのです。
ヨウくんは気づきません。
本当は、ヨウくんのことをお父さんはずっと見ていることを。
ずっと側で和やかにヨウくんを見守ってくれていることを。
お父さんの想いはヨウくんにはハッキリとは伝わりません。
まだ幼いヨウくんにはうまく届かぬ想いかもしれませんが、ヨウくんが優しく包まれ、ほっとできる感覚のとき、それはお父さんからの想いなのです。
『神様へ
もうじゅうぶん
もうじゅうぶん生きました
わたしは消えたいのです
誰かの何かの記憶に残ることなく
きれいさっぱりなくなりたいのです』
こんな手紙がポストに入っていた。
綺麗な文字だった。
どんな人が書いたのだろう?
どうしてボクんちのポストに入れたんだろう?
奇妙だけど、不思議と怖くはなかった。
ボクは、しばらくその手紙を眺めていたが、丁寧に折り畳んで、ポケットに入れた。そして、人のこなそうな場所を見つけて、深い穴を掘り、その手紙を埋めた。
帰り道、なんだか無性に悲しくなったけど、今日はビールでも飲むか~、と気をとりなおし、ボクはいつものコンビニへ向かった。
快晴を気持ちいいと思える日
快晴を感じたくもないと思う日
いろんな日がある
今日の空をどう感じるかで
ボクの心が分かるような気がするよ
空は心のバロメーターだ
キミが いなくて
ボクは 悲しくて 寂しくて
ずっと 下を向いていたんだ
ずっと ずっと
空を 見ていなかったんだ
いつもの ように
足元を ぼんやり見つめながら
とぼとぼ と
ボクは 歩いていた
そういえば
今日は キミの誕生日だったなあ
実は ボクも 誕生日なんだよなあ
キミとボクは
まるで双子のように 仲が良かったんだ
そんなことを 考えていたら
後ろから
ぴゅるんっ と 風が吹いて
深く被っていた ボクの帽子が
風に 飛ばされてしまった
掴もうとして 慌てて手をのばしたら
目に入ってきた 青空が
とても とても 美しかったんだ
ああ 綺麗だなあ
久しぶりに 見たよ 空
ボクの 帽子は
風にのって 高く高く 舞い上がって
遠くの空へ 消えてしまったけれど
なんだか
ボクは 軽くなって
前を見て 力強く
ずんずん と 歩きはじめた
言葉にできない ものがあるとき
わたしは 進化しているなあ と 思う
すべてを
言葉の枠に あてはめてしまったら
それは もう
私のものでは なくなるのかもしれない
いや
本来の わたしであるから こそ
言葉にできない ものが
たくさん
湧き出てくるのかも しれない