こんにちは!
わたしたちは、森にすむ精霊。
森の奥の、そのまた奥の、だーれも知らない場所にいます。大きな木の根元に、深ーい深ーい穴があって、そこをいつも見守っているの。そして、その穴は、Xmasの夜にだけ光るのよ。
さて、今日はXmas。
誰かやってくるかしら?
実はね、数年に1度くらい、迷った旅人が偶然に、その穴を見付けることがあるの。
寒い寒い12月の終わりに、もう死ぬかもしれない、と思いながら、ふらふらと森を彷徨っている旅人が、光に引き寄せられるように木のもとにやってくるの。
大体の旅人は、光のあたたかさに安心して、穴に気づかず、そのまま眠ってしまって…2度と起きることはないのだけど…
あ、誰か来たわ!
木に辿り着いた旅人は、すぐに穴を見つけ興味深そうに中をのぞき込んでるわ。珍しいこともあるものね、今まで誰も穴に気づかなかったのに…
あ!勢いよく穴に飛び込んじゃった!
大丈夫しら?穴の中に入ったものはいないのよ、どうなるのかわからないわ…
わたしたちはその様子を見守ることしかできないのよ…
∞∞∞∞∞
どのくらいたったかしら。
ぴょこん、と、旅人は穴から出てきたの。
そして、
「ああ 幼いころに死んでしまった、母さんが…。」
と、ひと言つぶやいて、穏やかな笑みを浮かべ、目を瞑ったわ。息はしているから、眠ってしまっただけのよう。
不思議。
今までここに辿り着いて、生き残った者はいなかったから。
もしかしたら、この穴の中は生命力を与えてくれるなにかがあるのかもしれない、わたしたちが忘れてしまった、遠い日のぬくもりを感じられる大切なものがあるのかもしれないわね。
∞∞∞∞∞∞
目を覚ました旅人は、元気良く立ち上がり、穴に一礼をし、歩きはじめたわ。暗い夜道に1本の光の道がある。ずっと先に続くその光は、穴から出ているわ。なんて綺麗な輝きなの!
そこを辿っていけば、旅人は、きっと故郷に戻ることができるのてしょう。
毎年クリスマスの夜に、この街の人々はたくさんのキャンドルの真ん中に立つ。
大人も子どもも、みな、そうするのだ。
そして、キャンドルの灯がどのように揺れるかをみる。
大きく揺れる者は、右側の部屋に進む。
小さく揺れる者は、左側の部屋に進む。
まれに、全く揺れない者もいる。
その者は、教会に残り、街のために祈りを捧げる者となる。
キャンドルの揺れは、心のあらわれだと、昔から言い伝えられており、あまりに揺れが酷い者は、異端者とみなされ、すぐに処罰されてしまう。
クリスマスがこの街の人々にとって、どれだけ辛いものか。それぞれの部屋に別れたあとは、血のつながりは関係なく、家族の組み合わせをされて、新たにまた1年を過ごすことになる。
あまりにも理解しがたい風習なのだが、ずっとそうやって過ごしてきた街の人々にとっては、当たり前のことであり、街で生きていくためには、受け入れるしかないものなのである。
今夜はクリスマス。
街の教会では、今、たくさんのキャンドルに灯が灯されはじめている。
がんばったからさ、
もう これ以上、がんばらなくていいんだよ
素敵だね
生きてるって 愛だよね
自由なんだよ
全てをわたしが創り出すんだ
さあ
いこう
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光の中を歩く夢をみた。
「この雪は、ワシらの先祖たちの想いなのじゃよ。」
村の長老は、降り積もる雪をじっとみつめ、こう言った。
ボクの住む村は、一年中雪が降り続いている。村はずっと雪に覆われているが、気候は穏やかで、とても過ごしやすい。
そして、雪は大人の膝くらいまでの高さまでしか積もらない。ある一定の高さに達すると、自然と雪は溶け始めるのだ。どうして溶けるのか、溶けた雪はどこにいくのは、誰も知らない。
村にはこんな話がある。
あるとき、村の外から来た者たちが、雪の下はどうなっているのだろう?と興味本位で地面を掘りはじめたそうだ。しかし、どんなに掘ってもすぐに雪が積もってしまう。彼らはイヤになって掘るのをやめようとしたが、動きを止めることができない。彼らは身体が朽ちるまで、ひたすら掘りつづけるしかなく、最後の1人が息絶えたとき、雪は、なにごともなかったかのように彼らすべてを覆い隠した、と。
雪は、村を守っているのである。
雪の下に何があるのかは分からない。
でも、大切な何かがそこにあって、長老の言葉のとおり、雪は、村の存続を願うご先祖さまの想いなのだ。
今日も、雪は降り続く。この先も、雪は降って、溶けて、また降り続いて…を繰り返していく。
いずれボクも、この村を守るために、降り続く雪になるのだろうか。
『お好きなリボンを結んでください』
看板には、こう書いてある。
目の前には色とりどりのリボンが並んでいる。遙か遠くまで、真っ直ぐに伸びていくリボンの先はどうなっているのだろう?
「こちらは、貴方さまの未来です。」
と、後ろから声をかけられ、ボクは振り向いた。そこには、大きな白い帽子をかぶった猫が立っていた。びっくりして大声をあげそうになったけど、ボクは何だかその猫とどこかで会ったことがあるような気がして、ひとまず深呼吸した。深呼吸をするのが、ボクの唯一のリラックス方法なのだ。
「えーっと、未来、というのは、ボクにこれから起こること、っていう未来、ですか?」
訳が分からない状況ためか、質問も微妙に訳が分からない聞き方だったが、そうでございます、と丁寧に猫は答えてくれた。
「いま、ここから、貴方さまの未来は決まります。今回は特別にこのリボンの中から未来が選べる!というキャンペーン中でございます。見事貴方さまがそれに当選なさったのでございます。さっ、お好きなリボンをお選びください。」
猫はそういって、ボクの手をひき、ずらって並ぶリボンの前に立たせた。
なるほどー、と思いつつも、そんなキャンペーンに応募した覚えもないし、どこが主催してるんだ、そのキャンペーンは?とか、考え始めたら?マークがたくさんでてきてしまいそうなので、ひとまずまた深呼吸をして、とにかくリボンを選んでしまうことにした。どうせ、ボク未来なんて、どうなったっていいのだ。
ボクは右端まで歩いて(結構長かった)、そこにある黒いリボンを選んだ。それをみた猫は、リボンを結ぶようにボクに指示した。場所はどこでもいいらしい。ボクは右足にクルクルとリボンを巻きつけ、丁寧にリボン結びをした。実は昔からリボン結びが得意なのだ。
「では、目を閉じてください。あとは、貴方さまのお好きなリラックス方法で、そのときがくるまでお待ちください。」
猫はそう言い、ボクをじっと見つめて、ニッコリと笑った。ボクは言われたとおり、目を閉じ、深呼吸をした。
🎀🎀🎀
光があたっていることに気づき、目を開けると、ボクは病院のベッドの上にいた。ぼんやり記憶を辿る。ああ、そうだった。なにもかもイヤになってボクは死のうとしたんだった。でも、死ねなかったんだな。痛む身体を起こして窓の外をみると、一匹の猫がこちらをのぞいていた。なんとなく見たことがあるような…
目が合うと、その猫は、にゃ~ん、と大きく鳴いた。
あとから聞いた看護師さんの話によると、ボクは病院の前で発見されたとのこと。夜遅く、玄関先で猫がやけに大声で鳴いているなあ、と思い行ってみたら、倒れているボクの横で大声で鳴き続ける猫がいて、みな大慌てだったらしい。
それを聞いて、ボクは未来のリボンのことを思い出し、あれは夢ではなかったのかなもな、と感じた。なぜなら、病院のベッドの上で目覚めたときに、窓の外にいた猫は白い帽子をかぶったような柄をしていたから。そして、倒れていたボクの横で助けを呼んで鳴き続けてくれた猫も、同じ柄だったそうだから。
ありがとう。
本当に、ありがとう。
また、あの猫に会えるかな。