むかしむかし
大好きだったあの人は
わたしの目の前で死んでしまった
あの人はわたしに
とてもとても優しかった
わたしはあの人がいなくなって
とてもとても悲しかった
でも ある夜
空に光る星をみていたら
あの人の笑った顔にそっくりで
ああ
人は死んだら 星になるんだ
と感じた
わたしは
いつ星になれるのか わからないけど、
星になれたら
あの人の隣で、一緒に輝きたいなあ
とおもっているよ
カーン カーン
高い鐘の音がきこえる。
高い鐘の音は、空気が安全だという合図だ。ボクは窓を開け、大きく息を吸い込む。新鮮な空気が身体中を駆けめぐり、生きていることを実感させる。
空を見上げると、久しぶりに鳥たちが飛んでいた。不思議だ。空気が汚染されてから、あちこちで生きものたちが死んでいったのだ。鳥たちはどこから来たのだろう?どうやって生き延びたのだろう?
この村に住む人びとで、今生きているのは10人に満たない。普段はそれぞれ家の中で過ごすしかなく、お互い食料は分け合ってはいたものの、残り少なくなっていた。
他の村はどうなっているのだろう?と、考えることもあったが、この場から出る勇気がボクにはなかった。今ある食料と誰かが鳴らしてくれる、鐘の音だけを頼りに生き延びていた。
ふと、鐘の音がずいぶん長く鳴り響いていることに気づいたボクは、思い切って外に出てみることにした。食料の受け渡し以外で外に出るのは久しぶりだった。
鐘の音の方角をみると、遠くに光る柱がたっていた。かなり大きい。その柱は、ピンクと紫がかかった柔らかな色で、高く高く空までのびていた。
ボクは引き寄せられるように、その柱へ向かって歩きはじめた。光の輝きがあまりに美しく、触れてみたくなったのだ。怖くないといったら嘘だが、どうせこのまま村に留まり家の中にいても、死を迎えるしかないだろう。なら、今進みたい気持ちを優先してもいいじゃないか、とボクは感じたのだった。
村を振り返ると、窓から数人の人びとが心配そうにこちらを見ていた。手をふってみたが、誰もこたえるものはなかった。
ボクはひとりで行くしかないのだ。
どのくらい歩いたのだろうか?
光の柱を目の前にしたとき、ボクは溢れる涙をとめることができなかった。柱の中で鳥たちが飛んでいるのが見えた。死んでしまったと思っていた生きものたちがそこにいたのだ。ただ穏やかに、輝いて。
ボクは、そっと光の中に足を踏み入れてみた。ほのかにあたたかった。ボクは目を瞑って深呼吸をしてみた。身体が宙に浮き、溶けてなくなっていくような感じがする。
鐘の音が大きく鳴り響いてきた。
ぼくの なまえは 「スノー」
なまえから そうぞうできる とおり、
ゆきだるま だよ。
ん?
なんさい って?
あはは
ぼくは ゆきだるま だから
あったかいと すぐ とけちゃうんだ
だから わからないなあ…
でも
なんさいか しりたいの?
うーん
じゃあ キミと おなじ 2さいにしよう
ぼくは ゆきだるま の スノー
2さい だよ
あさから おさんぽかい?
え?
まいご なの?
おにいちゃん いなくなっちゃったの?
それは たいへん!
でも だいじょうぶ だよ
ぼくが いるからね
スノー と いっしょ
だから だいじょうぶ!!!
そういえば キミの おなまえは?
ん?
もう いっかい おしえてくれるかな?
そっか!
ララ と いうんだね
なんて かわいい なまえなんだ!
ララは、さむくないかい?
ぼく?
ぼくは だいじょうぶ だよ
ゆきだるま だからね!
ララ
みてごらん ぼくの はな
これは さっき ことりさんが つけてくれだんだ
きれいな あかい み でしょ
ん?
ララは おなかがすいたの?
よかったら あかい み を どうぞ
すこし すっぱいけど
きっと げんき が でるよ!
あれ?
とおく から こえ が するぞ
ララー!ララー!
って よんでる
ララ の おにいちゃんだ!
よかったー!!!
そうだ ララ
おにいちゃん が くるまえ に
やくそく して ほしい ことが
あるんだ
あのね
ぼくが おしゃべり した ことは
おにいちゃん には ないしょ だよ
うんうん、ふたりだけの ひみつ ね!
さて
おにいちゃん が くるまで
もう ちょっと だけ はなしていようね
かわいい ララ
無数の星々が輝く夜、一羽の鳥が夜空を真っ直ぐ飛んでいた。大きな羽根をゆさゆさと上下に動かし、ただひたすら前を向いて進んでいる。よくみると、背中に小さな子どもが乗っていた。こんな寒空に鳥の背に乗っているのだから、人間の子どもではないかもしれない。
ボクは、その子が落ちないか少しだけ心配になり、その後を追ってみることにした。その子を落とさないように、鳥も気づかっているのか、それほど速くないスピードだったから、ボクは歩いてあとをついていくことができた。
しばらくすると、鳥は地上に舞い降りた。そこは森の中の湖があるところだった。鳥は背中に子どもを乗せたま湖にはいり、そろそろと泳ぎはじめた。休憩しているのだろうか?ボクは木の陰からその様子を見守ることにした。
見上げた夜空は、さっきよりも輝きが増している。ひとつだけ大きな星がより光っているのに気づいた瞬間、目の前の鳥の背中のあたりが輝き始めた。小さな子どもが光っているのだった。空の星はゆっくりとその子どものところへ降りてきている。子どもの方もその星の方へ向かって登りはじめた。光が眩しくてボクは目を瞑った。
⭐⭐⭐⭐⭐
目をあけるとあたりは暗く、しーんとしていた。鳥も子どもも星もいなかった。
ふと夜空を見上げたボクが見たのは、二つの星が、キラキラと仲よく夜空を超えて消えていくところだった。
いつもの散歩道を歩いていると、ばったり幼なじみに会った。親戚の結婚式があるため帰省中とのこと。ボクは彼女を誘い、公園の中の小さな喫茶店でお茶をすることにした。
外が寒かったので、ボクたちは、あたたかいココアを注文した。幼なじみは、
「キミもまだココアが好きなんだねえ。あの頃はおしゃれな喫茶店なんかなかったから、自販機のココアを二人でよく飲んだねえ。」
と、言って笑った。昔と変わらず、陽だまりのような笑顔だった。
ああ、ボクは、彼女のこの笑顔が大好きだったんだよなあ…ボクの思いは伝えられなかったけど、懐かしいあの頃の記憶が蘇る
。
ボクたちは日が暮れるまで一緒に過ごした。お互い次から次へ話が溢れてきて、時間が逆戻りしたかのようだった。いつまでもこうしていたかった。
別れ際、連絡先をきこうか迷ったが、なんとなくやめた。幼なじみである彼女の思い出を大切にしたいとおもったから。
最後にボクたちは、昔のように握手をした。彼女の手のぬくもりが、あの頃と変わらずあたたかかった。