ぼくの なまえは 「スノー」
なまえから そうぞうできる とおり、
ゆきだるま だよ。
ん?
なんさい って?
あはは
ぼくは ゆきだるま だから
あったかいと すぐ とけちゃうんだ
だから わからないなあ…
でも
なんさいか しりたいの?
うーん
じゃあ キミと おなじ 2さいにしよう
ぼくは ゆきだるま の スノー
2さい だよ
あさから おさんぽかい?
え?
まいご なの?
おにいちゃん いなくなっちゃったの?
それは たいへん!
でも だいじょうぶ だよ
ぼくが いるからね
スノー と いっしょ
だから だいじょうぶ!!!
そういえば キミの おなまえは?
ん?
もう いっかい おしえてくれるかな?
そっか!
ララ と いうんだね
なんて かわいい なまえなんだ!
ララは、さむくないかい?
ぼく?
ぼくは だいじょうぶ だよ
ゆきだるま だからね!
ララ
みてごらん ぼくの はな
これは さっき ことりさんが つけてくれだんだ
きれいな あかい み でしょ
ん?
ララは おなかがすいたの?
よかったら あかい み を どうぞ
すこし すっぱいけど
きっと げんき が でるよ!
あれ?
とおく から こえ が するぞ
ララー!ララー!
って よんでる
ララ の おにいちゃんだ!
よかったー!!!
そうだ ララ
おにいちゃん が くるまえ に
やくそく して ほしい ことが
あるんだ
あのね
ぼくが おしゃべり した ことは
おにいちゃん には ないしょ だよ
うんうん、ふたりだけの ひみつ ね!
さて
おにいちゃん が くるまで
もう ちょっと だけ はなしていようね
かわいい ララ
無数の星々が輝く夜、一羽の鳥が夜空を真っ直ぐ飛んでいた。大きな羽根をゆさゆさと上下に動かし、ただひたすら前を向いて進んでいる。よくみると、背中に小さな子どもが乗っていた。こんな寒空に鳥の背に乗っているのだから、人間の子どもではないかもしれない。
ボクは、その子が落ちないか少しだけ心配になり、その後を追ってみることにした。その子を落とさないように、鳥も気づかっているのか、それほど速くないスピードだったから、ボクは歩いてあとをついていくことができた。
しばらくすると、鳥は地上に舞い降りた。そこは森の中の湖があるところだった。鳥は背中に子どもを乗せたま湖にはいり、そろそろと泳ぎはじめた。休憩しているのだろうか?ボクは木の陰からその様子を見守ることにした。
見上げた夜空は、さっきよりも輝きが増している。ひとつだけ大きな星がより光っているのに気づいた瞬間、目の前の鳥の背中のあたりが輝き始めた。小さな子どもが光っているのだった。空の星はゆっくりとその子どものところへ降りてきている。子どもの方もその星の方へ向かって登りはじめた。光が眩しくてボクは目を瞑った。
⭐⭐⭐⭐⭐
目をあけるとあたりは暗く、しーんとしていた。鳥も子どもも星もいなかった。
ふと夜空を見上げたボクが見たのは、二つの星が、キラキラと仲よく夜空を超えて消えていくところだった。
いつもの散歩道を歩いていると、ばったり幼なじみに会った。親戚の結婚式があるため帰省中とのこと。ボクは彼女を誘い、公園の中の小さな喫茶店でお茶をすることにした。
外が寒かったので、ボクたちは、あたたかいココアを注文した。幼なじみは、
「キミもまだココアが好きなんだねえ。あの頃はおしゃれな喫茶店なんかなかったから、自販機のココアを二人でよく飲んだねえ。」
と、言って笑った。昔と変わらず、陽だまりのような笑顔だった。
ああ、ボクは、彼女のこの笑顔が大好きだったんだよなあ…ボクの思いは伝えられなかったけど、懐かしいあの頃の記憶が蘇る
。
ボクたちは日が暮れるまで一緒に過ごした。お互い次から次へ話が溢れてきて、時間が逆戻りしたかのようだった。いつまでもこうしていたかった。
別れ際、連絡先をきこうか迷ったが、なんとなくやめた。幼なじみである彼女の思い出を大切にしたいとおもったから。
最後にボクたちは、昔のように握手をした。彼女の手のぬくもりが、あの頃と変わらずあたたかかった。
私は、書き続ける。
右手に常にペンを持ち、動くままに書き続ける。自然とそれは言葉になり、文になり、物語になっていく。
✒
20歳を迎えた朝、私の指先は、異常に冷たくなっていた。誕生日は7月なので、季節外れだったが、クローゼットから手袋を出してきて数日過ごしてみた。しかし、あたたまるどころか、指先はどんどん冷えていく一方だった。医者にいっても原因は分からず、私は途方に暮れてしまった。
そんな私の元に、差出人不明の手紙が届いたのは、8月のあたまのことだった。
『右手にペンを持ち、とにかく書き続けること。』
ポストの奥にひっそり置いてあった封筒の中には、白い紙切れ1枚と水色の美しいペンが入っていた。
訳が分からないが、とにかく私はペンを右手に持ち、家にあったノートに文字を書いてみた。すると、スラスラとペンが動いたのだ。私の意識とは違う、ペンが意図をもって何かを書いているのだ。不思議だった。どんどんノートは埋まっていく。ピタッとペンが止まったとき、私はあれほど冷たかった指先があたたまっていることに、気づいた。
✒
あれから数年。
私はひたすら書き続けている。
書いた物語たちが、これからどうなっていくのかは、わからない。わからないが、私は自分の指先が凍えてしまわないよう、ペンを持ち続けるしかないのだ。
寒さで目が覚め、窓の外をみると、あたり一面雪の原が広がっていた。静かな静かな朝だ。
「ああ、もう足跡も消えてしまったな…」
わずなや雪の上に残された足跡だけが、彼女の手がかりだった。こんなに雪が積もってしまっては、もはやその足跡はすべてなくなってしまっただろう。
昨晩遅く、ボクは彼女がいないことに気づいた。いつも部屋にこもって絵を描いている彼女は、夜遅くまで起きていることも多い。ドアのすき間からランプの灯りがもれていたものの、なんとなく人の気配を感じず、部屋をそっと覗いたのだ。
描いている作品はそのままキャンバスに置かれ、飲みかけのコーヒーもそのまま。彼女だけがすっぽり消えていた。ボクは慌ててあちこち探したが、見つけたのは窓の外に続く彼女の足跡だけだった。
彼女はコートを羽織らず出ていったから、もしかしたら寒さで帰ってくるかもしれない、と思い、ボクは家で待つことにした。気まぐれな彼女のことだから、すぐ帰ってくるさ、とのんきに考えていたのだ。しかし、彼女は帰ってこなかった。いつの間にか眠ってしまっていたボクは、すぐに追いかけなかったことを心から後悔した。
「雪原の先に何があるの?」
ふと、彼女がこう言っていたことを思い出した。彼女は、窓の外をよく見ていた。新しい何かを見つけたい彼女の気持ちは、正直ボクにもよく分かった。しかし、村の人びとが謎の病で次々と倒れ、いまはボクたち二人きりでなんとか生きている状況で、この場から出ることは怖かった。そとの世界に飛びだす勇気がボクにはなかったのだ。慎ましくも彼女と暮らす、いまこの場が安全なんだ、と言い聞かせて日々暮らしてきたのだ。
…でも、彼女はいなくなってしまった
「仕方ないな。行くか。」
ボクは彼女のコートをリュックに詰めこみ、ブーツの紐をキツく結んだ。気合いを入れて、力強く足を踏み出す。彼女の足跡は消えてしまったが、方向は覚えている。
雪原の先へ、ボクは進んでいく。