ね。

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私は、書き続ける。
右手に常にペンを持ち、動くままに書き続ける。自然とそれは言葉になり、文になり、物語になっていく。




20歳を迎えた朝、私の指先は、異常に冷たくなっていた。誕生日は7月なので、季節外れだったが、クローゼットから手袋を出してきて数日過ごしてみた。しかし、あたたまるどころか、指先はどんどん冷えていく一方だった。医者にいっても原因は分からず、私は途方に暮れてしまった。
そんな私の元に、差出人不明の手紙が届いたのは、8月のあたまのことだった。



『右手にペンを持ち、とにかく書き続けること。』 
ポストの奥にひっそり置いてあった封筒の中には、白い紙切れ1枚と水色の美しいペンが入っていた。


訳が分からないが、とにかく私はペンを右手に持ち、家にあったノートに文字を書いてみた。すると、スラスラとペンが動いたのだ。私の意識とは違う、ペンが意図をもって何かを書いているのだ。不思議だった。どんどんノートは埋まっていく。ピタッとペンが止まったとき、私はあれほど冷たかった指先があたたまっていることに、気づいた。





あれから数年。
私はひたすら書き続けている。
書いた物語たちが、これからどうなっていくのかは、わからない。わからないが、私は自分の指先が凍えてしまわないよう、ペンを持ち続けるしかないのだ。


12/10/2025, 4:18:54 AM