谷間のクマ

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4/3/2025, 9:54:02 AM

《空に向かって》

「いやー、いい天気だねー!」
 4月上旬、私、熊山明里は蒼戒と2人で並木町桜ヶ丘の片隅にある、天望公園にお花見に来ていた。
「こんなに晴れたのは久しぶりだな。最近花曇りが続いていたから」
「だねぇ。にしてもあんた、よく時間空けれたね。1番忙しい時期でしょ?」
「あー……、それはまあゴリ押しだというか何というか……」
 蒼戒がかなり遠い目をして言う。何か一悶着あったらしい。
「そりゃお疲れ。あ、見てみて、ここも満開!」
 天望公園は穴場中の穴場……というか存在すら忘れられた公園なので私たちの他に人はいないが、すごく立派な枝垂れ桜が咲き誇っている。
「私が昨日の夕方見に来た時は七分咲きだったのにねぇ〜」
「昨日今日とだいぶ暖かくなったからな……」
「そりゃ一気に咲くわけ」
「そういえば話は変わるがお前も今日部活なり生徒会なりあるんじゃないのか? 繁忙期だし」
「ああそれ? サイトウに全責任を押し付けて来た」
「通りであいつが死んだ魚の目をしてたわけだ……」
「ごめんサイトウ……桜の花の寿命は短いのよ……」
 あと機械の話だったからサイトウだけで何とかなると思ったんだけど無謀だったかなー……。

続きはまた後日!
3.31の《またね!》は書いたので読んでくれると嬉しいです!

2025.4.2《空に向かって》

4/2/2025, 1:03:59 PM

《はじめまして》

また後日!!

2025.4.1《はじめまして》

4/1/2025, 10:00:15 AM

《またね!》

「えー……、なんというか……このような場を設けてくれて嬉しいようなありがたいような恥ずかしいような……まあとにかく! みんな存分に楽しんでくれたまえ!」
 3月末、梅ヶ丘高校の格技室にて。俺、齋藤蒼戒が所属する剣道部の送別会(というかお別れ会?)が行われていた。送別会と行っても特別なことをするわけではなく、今年卒業する須堂先輩を含めた3年生5人と最後に軽く手合わせするだけだ。
「送別会と言っても齋藤とは何日か前に手合わせしたからなんか特別感ないよな〜」
 挨拶を終えた須堂先輩が俺の隣に座って呟く。
「でしたら手合わせしていただかなくても大丈夫ですが?」
 少し挑発的に言うと先輩は子供みたいに「やだやりたい!」と言う。まあ俺も先輩と手合わせしたいからいいのだけれど。
「ふふっ、冗談ですよ」
「えー、お前が私に冗談とかお前も大人になったなぁ〜」
「先輩は何目線で話しておられるのです?」
「先輩かな?」
「いや俺に訊かれましても……」
「そういえば話は変わるがこの場は誰が仕切ってるんだ?」
「え? 沖原じゃないですか? 次期主将だし」
「……の割には全然場がまとまってないが?」
「……そのようですね……。すみません、ちょっと見てきます」
 俺は先輩に断りを入れてから沖原を探しに立ち上がった。

 それからしばらくして、俺と須堂先輩の手合わせとなった。ちなみに全員が全員とやってたら時間がなくなるので立候補した人と指名があった卒業生が手合わせすることになっているのだが、俺と須堂先輩は暗黙の了解でもあるのか勝手にセッティングされていた。
「それじゃあ……始めようか、齋藤」
「はい、よろしくお願いします」
 一礼して、竹刀を構える。
 毎日のようにやってきた先輩との手合わせも、きっとこれから出来なくなる。やっぱり……寂しい。
 審判の合図で、試合を始める。
 メン、コテ、ドウ、ツキ。先輩は様々な技を連続で仕掛けてくる。
 長い長い黒髪を靡かせ、目を輝かせ、舞うように、踊るように、先輩は竹刀を振るう。その姿はまるで、戦いの女神。
 今まで何百何千回も戦ってきたから、その戦い方は熟知しているつもりだ。なのに、この人には一度も勝てない。
「ふふっ、もらった! ドオッ!!」
「しまっ……!」
 綺麗に先輩のドオが決まって、審判をしている顧問の柴田がパッと先輩のつけているタスキの赤と同じ色の旗をあげる。いつのまにか時間オーバーで延長中なので、この一本で先輩の勝ちだ。
 この人はとんでもなく強いから勝てないのはわかっているが、負けるとやっぱり悔しい。せめて最後くらい、引き分けたかった。
「「ありがとうございました」」
 互いに挨拶をして、格技室の隅に戻る。
「やっぱり強いねぇ、2人とも」
 座って防具を外していると、隣にいた東堂がのんびり呟いた。
「ああ。須堂先輩の強さはもうバケモノ級だな……」
「そのバケモノと延長にまで持ち込んだお前も相当バケモノじゃね?」
「うるさい。それより東堂、お前次やるんじゃなかったか?」
「あっ、いけね。行ってくる」
 東堂はそう言って竹刀を持って立ち上がる。
「はいはい行ってらっしゃい」
 俺はそれを見て適当に返事をした。

 それからしばらく手合わせが続き、ようやく解散の流れになった。最後はみんなでお見送りだ。
「齋藤……、今まで、世話になったな」
 見送りの前のわずかな時間で、須堂先輩が声をかけて来た。
「先輩……こちらこそお世話になりました。本当に、長い間……」
「……寂しくなるなぁ……」
「ですねぇ……」
 何度、こんなやり取りをしただろう。でも、やっぱり寂しいものは寂しい。
「なぁ齋藤……、私……」
「須堂せんぱーい! そろそろ時間がー!」
 タイミング悪く、須堂先輩が何かを言いかけたところで沖原が先輩を呼んだ。
「あっ、もう?」
「はい、もうっす!」
「仕方ない……。この話はお預けだな。それじゃあ齋藤……、またな!」
 先輩はそう言ってみんなに見送られながら一気に格技室を出ていく。
「まっ、待ってっ! 先輩っ!!」
 なぜだか、先輩が急に遠くなったような気がした。まだあまり離れてないのに。
「さいとーう、元気でなー!!」
 剣道部の仲間たちで造られた花道の向こうで、先輩がクルッと振り返って笑う。
「……はいっ! 先輩こそ、お元気でー!!」
「もちろんだー! またぜーったい手合わせしよう!!」
「当たり前です! 次会う時には先輩を倒して見せます!!」
「頼もしいな! 未来の主将!! 楽しみにしてるからー!」
「はいっ!!」
 先輩は今度こそ前を向いて先に花道を抜けた卒業生たちのもとに駆けていく。
 春先の、暖かい日。門出を祝福するかのような、気持ちよく澄み渡った青空。その暖かい春の日の光の下で、先輩が笑っている。先輩だって寂しいだろうに、そんな素振りはカケラも見せずに、晴れ晴れと。
 その姿を見て俺の目にうっすら滲んだ涙には、気づかないフリをした。
(おわり)

2025.3.31(4.2)《またね!》

3/31/2025, 7:21:53 AM

《春風とともに》

また後日!

2025.3.30《春風とともに》

3/29/2025, 4:22:10 PM

《涙》

「おーい、蒼戒ー! あーおーいー! どこ行ったー?」
 これは10年くらい前の俺、齋藤春輝と双子の弟の蒼戒が小学生になったばかりの頃のお話。
 午後7時過ぎ、夕飯の時間なのに姿が見えない蒼戒を探して俺は家の中を歩き回る。ちなみにこの頃はまだ俺がご飯を作っていて(壊滅的だったけど、親父は出て行ったし母さんは仕事でいないし蒼戒はやる気がないから俺がやるしかなかった)、蒼戒は道場で剣道をして帰ってきたところで部屋にいるはずなのだが部屋にいないのだ。
「蒼戒ー、メシ冷めちゃうぞー?」
 全然見つからないからおかしいなぁと思い始めたその時。上からすすり泣くような小さな声が聞こえた。
「上……ってことは屋根の上かな」
 とりあえず一度ベランダに出てみると、サンダルが一組足りなくて、普段は横になっているはずのハシゴがかかっていた。蒼戒が屋根の上にいるのは確実だと思うんだけど、今行ったらジャマだろうな……。
「あと5分くらい待ってからにしようかな」
 幼心にそう思って、俺はベランダから星空を見上げる。
 季節は春、星は綺麗だけど朝晩はまだまだ冷える。蒼戒、風邪引かなきゃいいけど(ここで自分より蒼戒の心配をしてしまうあたり俺は生粋の弟バカだ)。
 そんなことを考えている間にも、すすり泣くような、小さな声が聞こえてくる。
 内容はあまり聞き取れないけれど、想像はつく。先日……と言っても数ヶ月前……に死んだ姉さんのことだろう。蒼戒は姉さんによく懐いていたし、いなくなってつらいだろうから。
 それでもこうして一人で泣いているのは、きっと俺に心配をかけないため。あいつは変なところで意地っ張りで強がりで、すごく優しいやつだから。
 ったく双子なんだからそんなの気にしなくてもいいのによぉ。
 となんだかんだで時間は過ぎて、俺はそろそろいいかな、というタイミングを見計らってハシゴを登る。
「あー、こんなところにいた蒼戒! ご飯できたから食べよーぜ!」
 そして何も知らないように声をかける。
「春、輝……?」
 蒼戒は驚いたように目を丸くして、慌てて涙を拭う。
「ほら、早くしねーと冷めちゃうぜ! 行こっ!」
 俺はそう言って蒼戒を屋根の上から連れ出す。
「え、あ、ちょっと待って……!」
「待たないもーん。今日のは自信作だしー!」
「どうせ黒焦げなんだろうが」
「そんなことないもーん」
「じゃあ半生? それはそれで嫌だ」
「そ、そんなことないもーん」
「今ギクッてしたろ?」
「し、してない!」
「嘘つけ」
 このくらい雑談をできるようになればもう大丈夫。泣くだけ泣いたら、俺が笑わせてあげるから。だからお前は安心してればいい。
「嘘じゃないよーだ! あっそうだ! 明日からお前が作れば済む話じゃんか!」
「ヤダね。だったら別に食べなくてもいいし」
「だめだよーだ!」
 こんなことを話しながら、俺と蒼戒は階段を駆け下った。
★★★★★
 時は流れて大体10年、俺たちは高校生になった。
「おーい、蒼戒ー! あーおーいー! どこ行ったー?」
 高校生になっても蒼戒は相変わらずで、一人になりたい時は大体屋根の上にいる。
「あー、いたいた蒼戒! 一緒にメシ食べよ!」
「……春輝……? 断る。一人で食べろ」
「ヤダねー! 蒼戒と一緒じゃなきゃ食べない!」
「じゃあ餓死しとけ」
「鬼かっ!」
「鬼だが何か?」
 そしてタイミングを見て屋根に上がって、蒼戒を屋根の上から連れ出すまでがワンセット。たまに泣いている時は、たっぷりと時間を置いて。
「オメーは鬼じゃねーだろ? それに、」
 俺はそう言ってそっと蒼戒の目元を拭う。
「涙が拭いきれてないぜ?」
「……なっ、何すんだ馬鹿!」
 蒼戒は一瞬目を丸くして、俺の手を振り払う。
「どーせ俺は馬鹿ですよーだ。さ、メシメシ!」
 馬鹿は馬鹿でも、弟バカだけどな。
「いくらなんでも切り替え早くないか?」
「腹が減っては戦はできぬ! 腹が減っては泣けねーよ!」
「な、泣いてない!」
「はいはい。今日のことは黙っといてやるから一緒にメシ食べよー」
「……仕方ない」
 蒼戒はなんだかんだで優しいから、最後にはちゃんと頷いてくれる。
 というわけで俺と蒼戒はのんびり食卓を囲んだのだった。
(終わり)

2025.3.29《涙》
我ながらなんかめちゃくちゃだなー……
3.5《question》書きました!読んでくれると嬉しいです!!

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