《もしも君が》
書けたら書く!
2025.6.14《もしも君が》
《君だけのメロディ》
書きたい!!!
2025.6.13《君だけのメロディ》
《I love》
書きたいけど時間ない……
2025.6.12 《I love》
《雨音に包まれて》
こっちも時間ない……
2025.6.11 《雨音に包まれて》
《美しい》
※昨日の続き(のつもり)
『この世界は、美しいと思いますか?』
授業の一環で聞かされた講演会の講師の問いかけに、俺、齋藤蒼戒は馬鹿げた問いかけだと本気で思った。
そもそも美しいとはなんなのか、そこを定義することから始めるべきだと思う。視覚的なことなのか、精神的なことなのか。そこでかなり変わってくると思う。
視覚的なことだとしたら、答えはYesだ。天望公園の桜やふと見上げた青空は綺麗だし、美しいと思う。
しかし精神的なことだとしたら、答えは絶対にNoだ。世界は広くて、残酷だ。この世界は綺麗でも美しくもなくて、ただただ醜いだけだ。そんなこと、身をもってわかっている。
と、ここまで考えたところで視界の端に春輝が体育館を抜け出そうとしているのが見えた。
大方、この訳の分からない講演に嫌気が差した、というところだろう。いつもは明るい顔をしているあいつが驚くほど暗い顔をしているのは心配だが。
「……紅野、ここ任せていいか。春輝を追いかけてくる」
俺はちょうど隣に座っている紅野に小声で言う。
「ああ、ハル今出て行きましたもんね……。僕が行きます。蒼戒くんはここにいてください」
「なぜだ?」
「あんな暗い顔、君には見られたくないでしょうから。あいつ、変なところで意地っ張りなので」
「そういうものだろうか……」
「君の前では明るくいたいというハルなりのプライドがあるみたいです」
「そんなこと気にしなくていいのに……」
「それはごもっともなんですが……。まあとにかく、今君が行っても逆効果だと思うんで」
「そうか……。じゃあ頼んだ」
「お任せください」
紅野はしっかりと頷いて体育館を出ていく。後ろの方に座っていてよかった。
それはそうと、俺は講演に意識を戻す。なるほど、春輝が抜け出したくなるのも納得の、なんとも言えないくだらない話だ。
世界は美しいのか。この問いはどうやら精神的なことを言っているようで、今度は性善説の話になっている。
しっかしそうだとしたら答えは分かりきってるんだよな……。
戦争、裏金、殺人事件、増税、米不足。これだけのことが起こっているのにどうして世界は美しいと言えるのだろうか。いや、俺は絶対に言えない。
それにもし仮に世界が美しかったら、姉さんは死なずに済んだはずだ。あの人は俺たち双子を、世界の闇から守って死んだのだから。
ああ、最悪の気分だ。世界が美しいだなんて、反吐が出る。春輝が抜け出したくなる気持ちがよくわかる。
まあいい。どうせあとで感想を書かねばならないのだから、適当に聞き流しつつ感想は定型分で書くことにする。
(おわり)
2025.6.10《美しい》
やっぱめちゃくちゃだ……消そうかな……
《どうしてこの世界は》
『この世界は、美しいと思いますか?』
授業の一環で強制的に聞かされた、とある講演会でのこと。突然投げかけられたこの問いに、俺、齋藤春輝はくだらない、と本気で思った。
だって世界は美しくなんかないし、むしろ残酷で汚いと思う。
世界が美しければ、姉さんは死なずに済んだ。蒼戒はあんなに苦しまずに済んだ。誰も、泣かずに済んだ。
みんなみんな、世界の残酷さが生んだ結果だ。
講師は続けてこうも言った。僕は世界は美しいと思うんです、じゃなきゃこんなに輝いているはずがない、と。
反吐が出そうな響きだ。世界が美しいわけない。
仮に世界が美しいんだとすれば、どうして姉さんは死んだんだ。どうして蒼戒はあんなに苦しむハメになったんだ。
『もちろん、すべてが輝いているわけじゃない。でも、この世界の本質は善だと思うんです。悪が全くないとは言いません。ですが善の方が圧倒的に多いはずだ。つまり何が言いたいのかと言うと……』
何が善だ。何が楽しいだ。胸糞悪い。
俺はこれ以上聞いていられなくなって、こっそり講演会の会場となっている体育館を抜け出した。
「くそっ……、最悪だ……」
体育館を抜け出した俺は、部室から野球のバットを持ってきて、人気(ひとけ)が一切ない校舎裏で素振りをする。
性善説、というものがある。人間の本質は善である、というもの。あの講師は絶対性善説を信じてる。
別にそれは悪いことじゃない。言ってることも確かに間違いじゃない。でも、それを俺たち生徒に押し付けないでほしい。
「あ、いたいた。ハル!」
「……紅野?」
時間的にまだ講演会の途中だというのに、紅野の声がして俺は目を瞬く。
「まったく。心配させないでもらえます? 突然出てったと思ったらどこにもいないんですもん」
「……わりぃ。つーかお前、講演会いいの?」
「その言葉そっくりそのままお返ししますが?」
「あ、いや、俺は……」
「わかってますよ。あの話に嫌気がさしたんでしょう? まあこれでも飲んで落ち着いて」
紅野はそう言ってよく冷えたアイスコーヒーの缶を差し出す。
「え、」
「いいですから。さ、飲んで飲んで」
「わーったわーった。……いただきます」
紅野から缶を受け取って、プシュッとプルタブを開ける。
一口飲むと、口の中に苦味が広がった。いつもはちょっと苦いなと思うけれど、今ばかりはもっと苦くてもいいと思った。
「……落ち着きました?」
紅野は俺から少し離れたところに座って言う。
「……まあ……、な。ありがと、紅野」
「気にしないでください。正直僕も嫌になったところでしたし」
嘘か本当かはわからないが、そういうところもまた紅野らしい。
「……なあ紅野……、この世界は、美しいと思う?」
俺は校舎の壁に背を預けて口を開く。
「そうですね……、僕は、美しくないと思いますよ」
「だよなぁ……」
紅野は昔の話をあまりしたがらないから紅野が並木町に来る前まで何をしていたか知らないけれど、時折妙に達観して落ち着いたところがあるのでそれなりの苦労があったんだと思う。
「そもそもなんなんですかね、この講演。何が言いたいのかさっぱりわからない」
紅野はお手上げ、という様子で肩をすくめる。
「だよなぁ……。性善説を推したいのはわかるんだけど、こんな世の中で言われてもなぁ」
ニュースをつければやれ誰が殺されただのやれどこどこで事故があっただの、やれ裏金だのやれ戦争だの。こんなんで性善説を信じろっつーにも無理があるにも程がある。
「あーあー、どうしてこの世界はこんな残酷なんだろうなー」
運命、と言ってしまえばそれっきりだけど、姉さんは死ななくてもよかったはずだ。蒼戒は苦しまなくてもよかったはずだ。みんなみんな、もっともっと笑えてるはずだ。
「それ考え出したらキリないですよ……。あ、そういえば話飛びますけど蒼戒くんが心配してましたよ」
「え、蒼戒が?」
俺より少し前に座っていた蒼戒には絶対気づかれないように抜け出してきたはずなのに。
「ええ。蒼戒くんが追いかけようとしてたんですけど僕が止めました。だってハル、蒼戒くんの前じゃ素直に弱音吐けないでしょう?」
「ったくお前は〜。余計な気ィ回さんでいいっつーの」
「あ、もしかして蒼戒くんの方がよかったです?」
「いや、そーゆーわけじゃねーけどよ……」
今あいつに会ったら言っちゃいけないことまで言っちゃいそうだし……。
「ならいいですね。愚痴でもなんでも聞きますよ」
「……じゃあ聞いてもらおうかな」
俺は紅野の隣に移動して話し出す。詳しいことは言わないけれど、この世界に対する不満とか、そういうもの。
「…………ありがとう、紅野」
「それ、さっきも聞きましたって。さ、戻りますか、教室」
「そーすっかー」
講演会が終わった頃、俺たちは話を切り上げて教室に戻る。その頃にはもう、さっきの胸糞悪さは消えていた。
(終わり)
2025.6.9《どうしてこの世界は》
我ながら無茶苦茶だなー……。あとで消すかも