目を潤ませ髪を涙で濡らす主様。
辛かったんですよね。孤独だったんですよね。
何もかもくすんで見えたんですよね。
そんなに辛くても、なんで自分が辛いかわからなかったんですよね。
私の言葉は通じない。
だから、寄り添うことしかできない。誰にも気付かれず、独りで苦しむ主様に。
「泣いてはいけないよ。たくみ。余計辛くなる。」
主様は自分自身に泣いてはいけないと言い聞かせている。けど、主様が辛いという事実は変わりやしない。私は寄り添うことしか出来ないけれど、泣いてもいいんですよ。主様。
夕方、とある空き地にひとりと一匹の影が映る。
また会うための、愛言葉。
正月の朝、月が高くあがっている。
父の実家から我が家へ帰る朝だ。電車に乗るための小銭がポケットの中でちゃりちゃりとなる。
ああ、帰りたくないな。
帰ったらまた憂鬱な日常が、わたしを迎える。
そう思えば思うほど、冷たい風がこの非日常への未練を粘り強いものにさせる。
カラスの声が耳に届く。
わたしの日常からは遠く離れた場所の日常を、今この耳で聞いている。
「行かないで、いいよ。」
そんな言葉をかけられているような気がした。
思えば、わたしは歩き出していた。
家とは逆方向に。
わたしがまたここに来るのは、1年後だ。
始まりはいつもあの人だった…なんてことがもしあるなら、それがわたしの理想だ。
始まりはいつもわたし自身だった。何をするにも、何を考えるも自分自身から始まった。
わたしは幼い頃から幼いうちには考えないような事ばかり考えていたせいで、わたしの考えていたことを誰にも共有できなかった。わかって貰えなかった。
故にいつも頭の中では孤独だった。
最初から何も無いのに、喪失感があった。
付き合いの長い友達はいた。一緒にいて楽しい友達もいた。けれど、本当に心から話し合える友人はいなかった。
そして、心から話し合える友人がいたなら、それはわたしの命以上の存在だ。
わたしの1番に求めるものは、
"自分以上の大切な人"だ。
こんなことを考えるのも、わたしが始まりだ。
-鋭い眼差し-
純粋じゃなくなってしまったからだろうか、
死にたいと何度も思ったからだろうか。
幼い頃は暖かいと思っていた太陽の眼差しが
とても鋭くなったような気がする。
楽になるため幾度も自分を上書きした結果の今の自分がわたしは好きだ。
気楽に重くは考えず
これは本心だと言うのに。
ひとつ前のわたしが太陽を恨んだからだろうか。
今のわたしが月を愛したからだろうか。
太陽の眼差しがとても鋭い。
今のわたしは貴方も愛しています。
きっとそうです。