正月の朝、月が高くあがっている。
父の実家から我が家へ帰る朝だ。電車に乗るための小銭がポケットの中でちゃりちゃりとなる。
ああ、帰りたくないな。
帰ったらまた憂鬱な日常が、わたしを迎える。
そう思えば思うほど、冷たい風がこの非日常への未練を粘り強いものにさせる。
カラスの声が耳に届く。
わたしの日常からは遠く離れた場所の日常を、今この耳で聞いている。
「行かないで、いいよ。」
そんな言葉をかけられているような気がした。
思えば、わたしは歩き出していた。
家とは逆方向に。
わたしがまたここに来るのは、1年後だ。
10/24/2024, 11:31:02 AM