ぶら下がっている目の前の0の縄を掴む、
首を通す、
台から飛ぶための足が震える、
飛べ、
飛べ、
飛んだ、
苦しい、
…、
あぁ、
夜が明けた。
〜愛〜
「あぁああ!!!見つけたぞぉおおお!!!」
「うるさっ」
「仕方ないだろ!!久しぶりの人の恋!!人の恋の仕事!!」
「知ってる?恋のキューピットってささやかな存在なんだよ?ささやかさもクソもないぞ」
「じゃあ知ってるか?恋のキューピットって可愛らしくて上品な存在なんだぞ?お前には可愛さも上品さもないな!!あと、私たちは恋のキューピットじゃなくて、恋の仲介者だから」
「細かい。普段の行動からは考えられないほど細かい」
「そんなことどうでもいいけど、早く仕事行くぞ。人の恋だ。今までてんとう虫やダンゴムシばかりだったからなぁ」
『しぃー』
『静かにしなさい』
『静かに』
『黙って』
そんな言葉を無視し続けた。「私」に強い自信があったからだ。
「もういいわ、お前」
あぁ、ついに言われてしまった。他人からの落胆の言葉。悲しみの奥に、ほっとしている「私」が居る。もうこれ以上落ちることは無い。落下の心配は無くなる。
こんなにほっとするなら、もっと早く『自分』の言葉を無視しておいて良かったな。
星が欲しい。
星を夜空から取り出して、私の書斎にしまって、ひとつの小さな明かりにしたい。
星を夜空から取り出して、私の押し入れにしまって、夜の明かりを減らしたい。
星を夜空から取り出して、私の体の中に閉じ込めてしまいたい。
心に星を入れて明るく澄んだ心にして欲しい。
目に星を入れて明るく澄んだ目にして欲しい。
星の明かりが、ただただ欲しい。
小さな夜明けを見たような気がした。鳴り止まない頭の鐘とは分離されたように、体の中は静かで淡々と暗かった。
月こそ夜明けの太陽なのかもしれない、なんて言う、典型的で平凡な暗闇をこの身で感じ、自分の中の虚空を探している。
月明かりが眩しくて眠れない。夜明けは、嫌いなのだ。朝の鳥が苦手なのだ。
目覚ましに音で涙が出るのだ。
実に涙脆くなった。昔は、冷静で穏やかな、空虚な、大人の真似事が上手だった。今は子供のように自分の奥底に従順だ。若返ったような感覚で。子供のように、奥底からの純粋なフリが上手くなった。
物語の始まりが、朝日から始まるなら…