工(たくみ)

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4/19/2025, 3:54:58 AM



小さな夜明けを見たような気がした。鳴り止まない頭の鐘とは分離されたように、体の中は静かで淡々と暗かった。
月こそ夜明けの太陽なのかもしれない、なんて言う、典型的で平凡な暗闇をこの身で感じ、自分の中の虚空を探している。
月明かりが眩しくて眠れない。夜明けは、嫌いなのだ。朝の鳥が苦手なのだ。
目覚ましに音で涙が出るのだ。
実に涙脆くなった。昔は、冷静で穏やかな、空虚な、大人の真似事が上手だった。今は子供のように自分の奥底に従順だ。若返ったような感覚で。子供のように、奥底からの純粋なフリが上手くなった。
物語の始まりが、朝日から始まるなら…



3/23/2025, 12:45:44 AM

「びぇぇええええ!!びぇぇええ!!」
赤子の泣き声が騒がしい…
友人から赤子を預かってかれこれ5時間目。
4時間近く泣き続けている。赤子とは数十分で泣き疲れるものではないのか…。
もう赤子の声はしゃがれているのだけど…。
「あぁもう!体力おばけなの!?なんなの!?はいはいよしよし!ねんねんころりよー!!」
あ、やけになって大声を出してしまった。
こんな大声であやしたところで意味はないのに…
ってあれ?赤子が泣き止んできている。
「びゃあ…びぇぇ…」
うん…。なんか行けるかも!
「はいはーい!!ねんねんこーろりーよー!!よーしよしよし!!」
「びぇ…びぇ……」
「よしよォし……おやすみ。で、ツトムさん、おはようございます」
「…なにそんな大声出してんの?」
「赤子をあやしてたんです」
「それあやしになってる?君の友達の赤子を預かるか、返却するかは、私の気分次第なんだからね?」
いっつも起きるのが遅い。どうせ、赤子をあやす声で起きたんだろう。
「まぁまぁ。しっかり目を覚まして。顔洗いましょ」
「えぇ…無理。夢の中へ…ByeBye〜…」
「………起きろおおお!!!!!」

3/1/2025, 4:02:10 AM

山道で、リスの死体を見つけた。
いつものように散歩をしていたら、カラスかなにかに殺されたであろうリスを見つけた。
腹をえぐられ、茶色い毛が赤く染まっていた。
血は毛にまとわりついて固まっていて、お世辞にも綺麗とは言えない。
汚いし、ダメだということはわかっていたが、つい触れてしまった。
やっぱり冷たい。
持ち上げてしばらく見つめる。
汚い、臭い、妙に冷たい。
嫌悪感ばかりが湧き上がる。
途端、リスの体がだんだんあたたかくなってきている事に気づいた。
生きている?生きている!!
嫌悪感ばかりだった感情が、急に救いたいという衝動に塗り替えられた。
リスをもって街へ走っている時にわかった。
温もりは、私の体温が乗り移っただけだった。
血で固まった毛が、柔らかくなっていた。

2/24/2025, 3:14:43 AM

魔法をかけましょう。
まず、時計を見てください。
見ましたか?
ちちんぷいぷいのぷい。
また時計を見てください。
時計の針の位置が変わりましたね?
これが、魔法です。
ありがとうございました。

1/13/2025, 2:14:31 AM

No.4
世良田 イト(女、17歳)
真田 玲史郎 (男、17歳)
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「はー…」
「わかりやすいため息〜」
「…」
「なんで今日一言も話さないの。今日聞いた声、出席の返事だけなんだけど」
「…なんでもねーし」
「口悪っ!……お腹痛いの?ストレス?」
イトは黙って頷く。
「まったく、とりあえず、塾休もうか?塾が嫌ってことだよね?」
「今日数学だから…」
「クラス担当の人、休みとか気にしないタイプなんでしょ?勉強手伝うから、塾は休んで」
「…うん」
「出席の時にお腹痛いって言いなよ」
「変な目で見られるから」
「そんなことない、心配してるの」
「今日、夢で、皆に嫌味言われた」
「それは夢」
「リアルだった。本当にありそうだった」
「…有り得ない」
「続いてるかもしれない」
「有り得ないから」
「…次体育だけど、保健室は?」
「体育行く」
「わかった。見学しといてよ」
「うん」
「はい、行こう」

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