始まりはいつも、薄々と理解できていた。
視線、声色、接触の頻度、距離感。その全てで相手の好感度が手に取るように見えていた。とはいえ、こちらからは用でもない限り話し掛けない性分であった為、わかっていて当然ではあったのだが。
愛想笑いで世間話を続け、頃合いを見て相手の懐に入り込む。呆気ないほど単調な大人の駆け引きだった。
ホテルのソファで煙草を吹かす頃には恋人面したオトモダチが出来上がっている。
見る目のない奴だと、内心見下す。
しかしその滑稽な執着と単純さは何とも虚しい己の空いた心を慰めた。
一生、本当の意味では交じ合うことはないのだろう。
終わりさえいつも、薄々と理解しているから。飽きて離れていくその時までは素知らぬ振りして相手しようか。
「上目遣いが睨んでいるようにしか見えない」とひとりの友人に言われたものの、他の友人達からは「そんなことはない」と言われて自覚した。
嗚呼、お前は友人じゃなかったんだな。
吐いた煙は何処へ向かうのか。
風に乗って高く高く舞い上がり、やがてあの雲と同化するのだろうか。
星を隠して、月を隠して、そして雨となり、再び戻ってくるのか。
なあ、どうなんだ。有害物質さんよ。
延々と本を読んでいた記憶がある。
壁にもたれ、一日中。陽の明かりが無くとも夜目を使い、時間が許す限りありったけの本を読んでいた。
どんな娯楽よりも楽しんでいた。
それが、今では酷く羨ましく思えた。
在りし日の思い出。
時間を持て余した我々は誰言うとなく屋上へ行こうとなり、皆で階段を駆け上がった。各々がフェンスを触れる頃には太陽はなりを潜めながらも、鮮やかなオレンジは校庭で練習に勤しむ野球部を照らしていた。
青春だ、と皆口々に言っていた。
同意の言葉を返しながら校庭から目を離す。無邪気に笑う横顔を縁取る夕日はまさに青春を具現化したような光景だった。