ウツロ

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8/9/2025, 2:04:51 PM

此処に来れば、何かがあるはずだった。
強い陽射しを耐え、青の境界線を目の前に立ち尽くす。煌めきが揺れているのにも関わらず、取り巻く空気はじっとりとした熱気を帯びたまま、動かない。匂いや音などの五感は遠く、まるで他人事のようだった。
此処には何もなかった。わかりきっていたことだった。
何の理由もないまま、半ば衝動的に向かったまで。単なる自己満足の結果は実に虚しく、視界を埋め尽くさんとする青に嘲笑われている。
己を包み込んだまま微動だにしない空気に、じわじわと蝕まれていく。そこかしこから雫が垂れるも、水分を補給する気にもなれず、暫しの間立ち尽くしていた。
動けなかった。動けずにいた。互いに、夏の風だった。

12/17/2024, 8:18:42 PM

ラストが苦手だ。どんな文章を書くときでも。
作文や小論文ならまだ良い。とりあえず最初に話したテーマをまた持ってくれば良いだけなのだから。けれど小説やこういった独白ではそうばかりじゃいけない。
無理に纏めようとすればする程、ただ冗長な文となり延々と終わりが遠のいていく。読み返してみれば文章同士の繋がりも希薄で、何ともまあ、とりとめのないものと化している。
それらはまるで、己の人生そのものだった。
強烈なシーンだけ浮き上がっていて、間にあたるものはすっかり抜け落ちている。そしていつまでもダラダラ、ダラダラと終わりなく駄文を綴っている。
わからないんだ。
物語をどう締めくくれば良いのか、生を全うした肉体がどう朽ちていくのか、魂はどう消滅するのか。
せめて手中の筆先だけでもラストをコントロールしたいものだが、一体どうすれば良いのだろうか。
誰か、教えてくれないか。

12/15/2024, 8:00:29 PM

小さな頃、冬の日は起きるとすぐにベランダに向かっていた。雪の降る日を心待ちにしていたのだ。
はらはらと雪が舞う日、一面に見える屋根や道路を真っ白に染め上げた日は身支度もそこそこに朝一番に飛び出した。
寒さなんて露知らず、白銀の中で踊る。まるで雪の精霊と戯れるが如く、ひとり笑っていた。
久し振りに、雪が振る日に外へ出た。
雪は今も昔も嫌いじゃない。
服の隙間から雪や北風が入り込んでは身体を冷やしていくのを感じた。
もう、精霊は見えないのだろうか。

12/8/2024, 8:18:41 PM

別れの際には言うべきではない。
最後に放つその言葉は呪いとなってしまうから。
情と贖罪を伝えてしまえば相手は忽ちに遅効性の毒で苦しむことになる。
真に相手を想うのであれば、冷酷非情に佇むべきなのだ。
呆れられるように、憎まれるように、演じろ。
怒りへと昇華させれば相手は楽になれるのだから。
チンケで噛ませ犬な悪役に徹する。
決して口には出さず、心に留めておくのだ。
ありがとう。ごめん。地獄の様な舞台の主人公様。先にオールアップといこうじゃないか。
少しくらい、恨んでいても良いだろ。
お前の代わりに飲んだ毒が酷く苦いのだから。

12/3/2024, 6:43:58 PM

諦めと切り替えは早い方なんでね。
お前にも端から期待しちゃないよ。
ほら行った行った。
──それは物真似のつもりか?
目障りだ。
さっさと消えてくれ。
早く忘れさせてくれ。

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