ウツロ

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11/26/2024, 6:27:06 PM

37度5分の肉と骨を抱いて眠りにつく。ひとより平均が高いのだと君は言っていた。
以前の部屋は欠陥だらけで、夏は暑く、冬は寒かった。
腕いっぱいに眠るそれから温もりを貰っていた。
ピピピと機械音が鳴る。37度5分、風邪をひいたようだ。
今の部屋はエアコンの効きが良い。夏も冬も凌ぐには充分な働きだ。
憂鬱を抱きながら、額に手を当て目を閉じる。
今日はやけに冷えるな。

11/24/2024, 8:02:10 PM

「お揃いの服が着たい」ということでセーターを買った。
白と黒の横縞に、有名なキャラクターが載ったセーター。どちらも普段全くと言っていいほどに着ないデザインだった。
あれから3年の月日が経ち、衣類整理の際に再び手にした。一度着て、それきり箪笥の奥に仕舞い込んでいたのだった。
何となしに着て鏡を見る。……やっぱり似合わない。
絶妙な太さの横縞は着太りして見える上、ピッタリサイズのセーターはピッタリな故にシルエットがイマイチだ。特にでかでかと印刷されたキャラクターが気に食わないほど合っていなかった。
すぐに脱いで不要と書かれたゴミ袋に詰め込んだ。
あの一度きりの時に見せた君の笑顔は、充足の微笑みだったのか、不格好さを見下す嘲笑だったのか。もう覚えていない。

11/22/2024, 8:20:08 AM

大抵のことはすぐにわかる。事態を把握し、自身に合った解決策を合理的に導けば良いだけだ。
全てを忘れ、全てを手放す。簡単なことだ。何もかも手放して、特別製のネクタイだって用意した。
頭では充分わかっているんだ。
嗚呼、わからない。
無意識に言い訳をして、他人に愛想を振り撒いて、自分へのプレゼントを棚の奥へと隠してしまう、この感情の対処法が。

11/20/2024, 10:18:54 AM

宝物は全てゴミに出した。今頃は溶鉱炉に投げ込まれているか、埋め立てられていることだろう。
大切に保管していたつもりだったが、もう必要はない。廃棄すべきだ。
友人だった者、恋人だった者、貰った物、共に買った物。粉々になった硝子は、酷く痛いんだ。
なのに貴女のことは捨てられずにいる。
唯一救ってくれた者、貴女の物。どれだけ傷付きどれだけ液体が溢れ出ようが手放せない。
煌めきが褪せてくれないんだ。

11/19/2024, 4:45:17 PM

部屋中の明かりを消す。空の浴槽に身を沈め、キャンドルに火を灯す。ぼんやりとしたオレンジが静かに揺らめきながら、無機質の白を染めてゆく。
噛み煙草を喫む。
心拍さえもきこえない無音の丑三つ時、心地好い夜に深く深く呑み込まれてゆくのを感じながら、すっと息を吐く。まるで魂が天に昇ってゆくかの如く、白煙が景色を鈍く濁した。

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