始まりはいつも、薄々と理解できていた。
視線、声色、接触の頻度、距離感。その全てで相手の好感度が手に取るように見えていた。とはいえ、こちらからは用でもない限り話し掛けない性分であった為、わかっていて当然ではあったのだが。
愛想笑いで世間話を続け、頃合いを見て相手の懐に入り込む。呆気ないほど単調な大人の駆け引きだった。
ホテルのソファで煙草を吹かす頃には恋人面したオトモダチが出来上がっている。
見る目のない奴だと、内心見下す。
しかしその滑稽な執着と単純さは何とも虚しい己の空いた心を慰めた。
一生、本当の意味では交じ合うことはないのだろう。
終わりさえいつも、薄々と理解しているから。飽きて離れていくその時までは素知らぬ振りして相手しようか。
10/20/2024, 6:14:23 PM