moi.

Open App
11/23/2022, 11:01:19 AM

どうしても愛せなかったこの世界を
頭から爪先まで ゆっくりと
落ちてゆく
刹那 けれど時が止まったように ゆっくりと
柔らかな日差しも流れ行く雲も
思えば俯いてばかりの人生だった
仰げばこれほどに美しい景色があったのか
ああ、最期に生まれたこの未練が
来世もこの地球(ほし)に産み落としてくれるだろうか
どうしても愛せなかったこの世界に…

あの美しい空にもうすぐ、届く。 


                 「落ちてゆく」

8/22/2022, 10:52:38 AM

真っ直ぐ言葉にできたら良かった。
それでも、愛していた。
思い通りにいかないのがもどかしくて、悔しくて
きつく当たっては焦燥感に襲われる。
愛してる。分かってよ。愛情の裏返しなんだ。
どうか嫌いにならないで。
君の困った顔や泣き顔すら愛おしくてたまらない。
罵って蔑んで愛して愛して愛して
こっちを向いてほしかったんだ。
愛されたかっただけなんだ。
どうか嫌いにならないで。


もう遅い


真っ直ぐ言葉にできたら良かった。

                 「裏返し」

8/21/2022, 3:15:24 AM

自惚れていた。もう一度会いたい、その想いが通じたのだと。
目の前に居る彼を見つめる。顔も、身体も、全てが間違いなく大好きな人のそれだった。
私に会うために、そう思った。でも違う。彼が求めてきたのは私じゃない。
恋人の想いよりも彼をこの世に引き止めたものがあることに、とっくに気がついていた。
「久しぶり」
目の前の“それ”から、あの日…彼が死んだ日から
何度も脳内で再生した声。
「久しぶり、」
そう返そうと口を開いたのに、「なんで…?」呻くような声が漏れる。
「なんで此処に……」
「お前に会いに  」
嘘つき嘘つき嘘つき。期待していたはずの言葉を心声が遮る。
違う、そうじゃない。あんなに会いたいと願ったのに。
思いがけない再会が、嬉しくて仕方ないはずなのに。
どんな姿になったって、大好きなはずなのに……
「……会いになんか来て欲しくなかった」
呟くような声に、彼が顔をしかめる。
「会いになんか来て欲しくなかったっ…また別れが来るなら、会いになんか来て欲しくなかったっ!!」
堰を切ったように溢れ出す涙で、彼がどんな顔をしているのか分からない。
皮肉だ。拒絶するような真似をして、その足は勝手に彼に向かっていく。
その身体に手を伸ばす。幻でも、なにか感じられれば良かったのに。
頬を伝う涙が、やけに熱かった。
ずっと会いたくて、後悔だけが渦巻いていた。もっとしたいことが、伝えたいことが沢山あった。
じきに彼は消えてしまうんだろうか。それとも、永遠に彷徨うのか。
こういう時、なんと言えばいいんだろう。
でも、「おかえり」も「ありがとう」も言わない。
……言えない。
そんなことを言えば、もう二度と離れられなくなる気がした。
こんなことを言えば、残酷だと責められるだろうか。
それでも、私たちはもう戻れない。何度出会ったって、続けることも、やり直すこともできない。
すり抜けていく身体を抱き締める。
二度と戻れない私達への遺言を。
「“愛してた”よ」
頬には、誰にも拭われないまま乾いた本音の跡が幾筋も残っていた。

                                    「さよならを言う前に」

          

8/17/2022, 10:17:02 AM

スマホの画面をスクロールする。
野良猫、セミの死骸、フラペチーノ……
見切れた君の後ろ姿。
ピントの合っていないぼやけた写真。
小さく写る人影。
でも僕には分かる。これは君だ。
こっちを向いてポーズする、そんな写真は一枚もなくて。
遠くに小さく写りこむ後ろ姿や横顔だけが何枚も。
くだらない写真で容量はもういっぱい。
捨てきれない想いでこの身体はもうパンクしそう。
きっと減ることは無いんだろう。
でも良いんだ。増えることももう無いんだから。
……暑い。
扇風機の風量をあげた。
君が死んだ日も、丁度こんな暑さだったな。

           「いつまでも捨てられないもの」

8/16/2022, 11:55:46 AM

何もかも中途半端で 誇れるものなんて持っていなかった
頑張り方さえ知らなくて かけられる「頑張れ」に耐えきれなくて
逃げた。
宛もないのに しがみついていた居場所を捨て去って
何やってんだって 馬鹿じゃないのって
嗚呼、この身体は不良品 どこか重大な欠陥を抱えてるんだ
明けない夜に雨模様。
さぁ、生きてくださいと産み落とされて
でも生き方なんて分からなくて
不安と焦燥感が己を蝕んでいく。
穴だらけのボロボロの心と身体。
それでも歩いてこれたのは 自分でもよく分からない。
ただ、明けない夜はないのだと この人生においての前代未聞の大発見が
今は少し誇らしい。

                            「誇らしさ」

Next