しるべにねがうは

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10/29/2024, 2:43:12 PM

もう一つの物語

こんにちは。俺はオバケ引き寄せ体質の尾上蓮。
幼馴染のちいせぇ無害なヤツら(オバケ)と戯れていたところを転校生の縦ロールお嬢様に目撃されてしまった。
小さいヤツらと戯れるのに夢中になっていた俺は、背後から刀を振るわれたことに気付かず、目が覚めたら……。


オバケは除霊、俺は所詮「見えるヤツ」ってことで縦ロールお嬢様と同じ「陰陽師」になることが決定していたのだった。
いや厳密には違うらしいんだけど。とりあえず一般人として暮らしていくのに不自由ない程度にそういう知識と技術を伝授してくれるんだってよ。ありがた迷惑ですって一回断ったんだけどな。

『二十歳前に行方不明になるのと、怪異に食べられて生きたまま化け物になって2度と人の道をあるけなくなるのと、普通の人と同じように大学や就職するの、どれが良いですか?まだ選べますわよ』

それもはや一択だろ。
行方不明も人間やめるのも一緒じゃねえのと思ったが。まだ自由度が高そうな道ってことで今おれは柳谷邸にいる。
もしあの時お嬢に出会わなかったら、また違う道だったと思う。
行方不明になった後とか、怪異になって徘徊するのとか、知らないまま、そのみちの世界にかけだして行ったんだろうなと思う。

ハローハロー、お嬢に出会わなかった俺。
そっちはそっちで、元気にやってて。

10/28/2024, 12:55:38 PM

くらがりのなかで

「……電気つかねぇ」

繰り返しスイッチを押すものの電灯は暗いまま。
電球切れた?電球ってか蛍光灯。
接触が悪いのか。なんでもいいけど絶望感。

真っ暗闇の中、一人。

なんでこういう新月の日に限って夜中目が覚めるんだろう。
なんでそういう時ってめちゃくちゃトイレ行きたくなるんだろう。

ここで漏らしたら一生の恥だよな。
別にお嬢とか笹本さんに知られる前に片付けりゃいいしあの二人は俺が漏らしたところで「そんな時もありますよ」くらいで流してくれると思うけど。
どちらかといえば石蕗さんの方が「大丈夫ですか、ここに住んでる間はあなたの体質や諸々の面倒も世話もしますけどそのうち出ていくんですよ今からそんなんでどうするんですか」って顔すると思う。やけに具体的すぎる?こないだ言われたもん一字一句違わず。
でも怖いもんは怖い。

何が怖いのか。オバケ。
言葉が通じない、話が通じない、国家権力も通じない。
理屈も心も通じない。この世の異物。
そういうところだ。

電灯がつかないなら仕方ないので少しでも明るい通路を選んでいく。こっちからだと中庭をぐるっと回るルート。
井戸もあって空気がひんやりしている。夏は気持ちいいんだろう。な〜デッカい西瓜を井戸水で冷やしてさ。
風鈴つけてさ。縁側で食う。最高じゃん。塩かける。

後日加筆します

10/26/2024, 2:59:47 AM

友達

「お嬢って友達少なそうだよな」
「開口1番に失礼がすぎますわよ」
「いるの?いないの?」
「今の学校にしてもそのうち変わりますしコミュニケーションをとる必要性を感じませんわ」
「いらないの?できないの?」
「笹本も石蕗もいますし人間関係を全く築けていない訳ではないので。同年代の同業者って少ないですし少ない方が良いですし」
「家のお手伝いさんと世話係は友達にカウントしないんだぜ」
「む、無理に作らなくてもそれだけが人生じゃないって、矢車殿が…」

柳谷邸。日夜この世ならざるものと相対する祓邪組織、白咲を支援する柳谷家の持ち物。ここはそういう事件に巻き込まれて、日常に帰る術を失った子供の受け皿をしている。
要は見習い育成所。見習いは俺、尾上蓮。ここから定時制の学校に通ってる。リモートも可能。ありがとう。
見習いがもう1人。柳谷の本家直系のお嬢、柳谷柳子。
お嬢の世話係の石蕗さん、家の業務と管理を笹本さん。
あと時々仕事と仕事の合間に休憩に寄る人がちらほら。
付き合いの長さでお嬢に甘い大人がほとんどである。

「尾上君、お嬢様をいじめるのはやめてください。お嬢様は友達がいないので」
「いなくないです!!雨君と錦ちゃんが友達です!」
「人間の友達の話してんだけどな今」

庭の池に住んでる牛蛙と錦鯉を引き合いに出すな。

「友情に種族は関係ありませんよ」
「そこにあるの友情?飯奴隷じゃないの?」
「ううう、お、尾上君だってどうなんですの、友達いるんですか!?」
「俺同じクラスのやつと連絡取り合ってるし今度遊びに行くもん」
「初耳ですけど!?外出なら言ってください」
「なんでだよ面倒臭い」
「君が外出した先で事件に巻き込まれない訳ないです、予定すり合わせて厳戒態勢をとらねば…石蕗、笹本」
「とりあえず発信機と通信機を渡しますので」
「どこに行くかは教えてください、ドローンで追跡しますが近場で待機します」
「冗談で終われば良いんですけど、貴方の場合友達が真人間であるかどうかも疑ったほうがいいですからね……見過ごした自分が憎い……」
「真人間だし普通の友達だわ!!最新のプリ撮ってくるんだよ」
「女子高生みたいなはしゃぎ方しますね」
「駅前のゲーセンに新しいプライズはいったからな……絶対取ってくる」
「とりあえず半径五メートル圏内に私たち待機しますね」
「なんかあったら頼むわ、ないと思うけど」
「それが一番ですからねぇ」

当日

「宗教の勧誘と投資とマルチ商法をそれぞれプレゼンしてきて地獄だった」
「人間が一番面倒だったパターンでしたか…」
「プライズ取れたからやるよ……」
「やった、ありがとうございます」
「……友情に種族関係ないよな……」
「応援してますわよ」
「うん……」

10/23/2024, 12:30:07 PM

どこまでも続く青い空

真っ白の入道雲。
響き続ける蝉の声。じっとりと暑く、逃げ水を見る。
ぽたりと落ちた自分の汗をみて、水を取らなければと意識する。
途端に乾く喉が、茹だる気温が、意識を白く染め上げていく。

のを根性で耐える。

日陰に入らなければ。
時折虫の死骸が転がるアスファルト。
蟻の行列が細々と続き、かつて生き物だった物体を運んでいる。
じわじわじわじわ体力が削られる。
当たり前だ、こんな暑い夏の日、外で、いや待て。

なんで長袖なんか着てる?

この間衣替えがあったから?この真夏に?
学校に通っているわけでもないのに。いや通ってた。ずっと。
喪服じみた色彩の制服から解放されたじゃん。いつから?
単位制の、高卒資格をとるための学校に、あれ?

「お嬢?」

思い出した。
俺は学校の登校日の帰りだった。お嬢が一緒だから石蕗さんが車出すって言ってたんだけど、どうにも予定が合わなかったから電車に乗って帰る、その途中。だった。はず。
電車には乗った。電車乗るの初めてではしゃぐお嬢が3回改札に引っかかって涙目だったのは覚えてるから。気丈に振る舞ってたけどちょっと泣きそうだったなアレ。その後ホームでアイス食いながら電車待って、電車きたから乗った。そこまでは思い出した。
その先がわからん。

みんみん鳴く蝉がうるせぇ。
何かがおかしいと気付いたけどそれは何にもならなかったらしい。ただ暑さを倍に感じてる気がする。だって長袖だし。
脱ぐか?とりあえず日陰。暑い。全裸になりたい。
とりあえず俺って今どこにいんの?
電車乗った瞬間俺だけ誘拐された?それとも白昼夢みたいに意識だけもってかれてんの?それによって今ここで全裸になるかならないかが決まる。

ごじつかひつしむす

10/22/2024, 12:07:06 PM

衣替え

秋も深まる10月後半。金木犀の香りが庭に満ちる今日この頃。
朝が死ぬほど寒い。だってこの家暖房ないもん。クーラーもない。
ちょっと前まで冷感ブランケットで寝てたってのに季節の移り変わりがすごい。季節っていつもそうだよな。俺たちに優しくしてくれたと思ったらすぐ冷たくなったり殺しにかかってきたりする。
何?俺たち人間に恨みとかある?環境破壊しくさってるから?
覚えがありすぎる。しぶとく生き残っててごめん。
これからも地球に寄生する身分ですがなんとかして返していく方法模索するから見逃してくれ。虫が良すぎるかごめん。

「衣替えっつーか模様替えっつーか、しないの?この家」
「むしろなぜ貴方夏仕様なんですか。毛布とかださないんですか」
「石蕗さん男子」

後日加筆します

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