時間よとまれ
すみせ枠だけ
夜景
「君の瞳に乾杯、とかってありましたね口説き文句で」
「夜景に対して綺麗っつった奴に対して君の方が綺麗だよとかな」
「そこまで綺麗じゃありませんけどね夜景って」
「…………そうかな」
「そうですよ」
淡々と喋るお嬢は珍しく疲れ気味だろうか。
後日加筆します
はなばたけ
すみません枠だけ!
そらがなく
晴れ晴れとした青い空。洗濯日和のいい天気。
だったと思ったんだがなぁ。
ぽつぽつと地面がどんどん水玉模様。
急いで洗濯物を取り込む。
小物も服もなんとか無事に取り込めたら縁側で一休み。
「あれ、尾上様、洗濯物ありがとうございます」
「や、お世話になってる身なんでこれくらいは」
「お駄賃というわけではないですがおやつがありますよ」
「やった!」
笹本さんのおやつはいつも美味しい。
餡子なんぞ年寄りのスイーツだとか思ってすみませんでした。
まんじゅううまい。緑茶と一緒だとなおうまい。
「お嬢探してきます?」
「石蕗が迎えに行きましたので」
「あの人いつも早くないスか。どうやって探し出してんですか俺らを」
「単純に走り回ってるだけですよ、顔にも口にも出さないだけ」
「…………意外と根性派?」
「そうですよ」
「まじですかぁ」
GPS疑ってすみません。努力だった。
俺はオバケホイホイ体質の尾上蓮次郎。普段は陰陽師のお嬢に護衛されているのだがお屋敷にいる間は結界がどうのこうので1人でも大丈夫なのでわりかしお嬢とは別行動なのであった。
2人揃ってよく怪奇現象やらに巻き込まれてばっかりだよ。
石蕗さんはいつも俺らを迎えにきてくれる頼れる陰陽師。
早いからGPS仕込んでんじゃねって疑ってたのすんません。
「お嬢、早く帰ってくるといいですねぇ」
「そうですねぇ、とりあえずお風呂を沸かしておきますか」
「じゃあタオル畳んどきますね」
「お願いします」
お嬢は雨の日、なんか1人で出て行く。傘も持たずに、濡れに行く。プールでも海でもなく、雨に打たれるのが好き、なのか。
まぁそんな時もあるよな人間だから。
人間、だから。
お嬢を連れて帰ってくるのは石蕗さんの役割みたいなところある。
傘を持って行ったはずの石蕗さんもずぶ濡れになって帰ってくる。
そうして2人を風呂にぶち込んで、あったかいお茶を出すのは笹本さんだ。そうやって回ってきたんだろうこの人たちは。
ちょっとばかし、疎外感。
ま、適材適所ですよ。
俺は俺なりにここの人を信じて動くだけ。
一向に泣き止まない空を見上げて思う。
大丈夫大丈夫、きっといつかは晴れるから。
な。
君からのLINE
「ニャインってどう…パッと…出すんですっけ」
「おばあちゃんここを開くのよ」
「ひらく…?分解はしないんですけど」
「タップしてこれを」
「たっぷ」
「指をぺたっと」
「ぺたっと」
「まてそこから動くなアプリ編集になっちゃった」
「ここで開けますか」
「やめろ今はダメだ動くな動かすな!!」
「難しいですねぇ…」
「本当まってて代わりにやるから…」
「もうしわけない」
「んでニャイン開いてどうしたいのお嬢」
「ささもとに……ささもとの可愛いすたんぷを…真似したいんですけど……ラリったニコちゃんしかわかりません」
「どこにあんのそのスタンプ!?」
「ささもとにかわいいすたんぷおくりたいです」
「……とりあえず俺で練習すれば」
「やさしさが沁みます…ありがとうございます…デジタルマスターと呼びますね」
「やめろなんか絶妙にダサいから」
「コンピュータ師匠と呼びますね」
「ダサ度アップやめて」
「かっこいいと思いますのに……」
「ここでほら無料スタンプってのがあってな」
「こっちがいいです可愛いから」
「有料なのよそっちはよ」
「可愛いから……」
「とりあえず無料ので我慢しなさいよお試しだから」
「んぇぇ……」
ぺたんぺたんとゆっくりスタンプをダウンロードする。
この人本当機械苦手だよな。オールアナクロ人間。
「そこ、それ俺とのトークルームな」
「談話室という事ですね」
「……まあ間違ってねぇけれども」
「談話室ならそっち行きます?」
「通信端末の意味をもう一度説明させる気かお前」
「現実にあるなら使えばいいですのに…」
「行けないやつもいるからな。今すぐとかな。」
「はーん…お仕事ですのね」
「そういう日もあるが」
「なるほど怪異に巻き込まれている時など」
「高確率で圏外だけどなそういう時って」
「…………一体いつ、なんの目的で使うんですのこれ」
「怪異に巻き込まれずともすぐ迷子になる誰かさんと連絡を取るためとかかな」
「あ、尾上君すぐ迷子になりますものね、全くダメですよ石蕗が見つけてくれるからいいものの…」
「お前だわ箱入りお嬢様」
お嬢様すぐ迷子。絶妙な語感の悪さ。
こないだ行ったデパートで3秒目を離したらいなかったんだよびっくりしたわ。まぁそんななのであそこマジでオバケいないんだろうな。お嬢そういう場所だと俺から離れないもん。対おばけプロ護衛さすがである。あとまっさら経営の新築デパート最高。建築もホワイト。人柱で5人ほどとかそういうあれもない。隣の県にはありました。もう絶対行かない。
「電波さえ立ってりゃ鳴るなりなんなりするから、そしたら出てくれよ」
「何に…どこへ…」
「携帯がなるから通話してくれって事だよスマホ音痴」
「試しにかけてみても?」
「いやこっちからかける絶対用事が多いから」
「ふぅん…?お願いします」
鳴り響く通知音。切られる着信。
「予想通りだよ!!緑の方タップして!スライド!」
「すらいど」
「こう!」
「こう…」
「そう!!」
「できました!!」
「やったー!!」
「で、すたんぷは?」
「ここでこう」
「ほほう」
そしてぽん、とくる通知。
トークルームで踊り狂う緑の豚。
「これで私もすたんぷマスターですね」
「なぁこれ何処にあんの!?ねぇ!?」
その後笹本さんからお礼を言われた。
俺のおかげでお嬢がちょっと映えな飯写真とスタンプができるようになったとかで。
「次はフリック入力ですね」
「あれっ俺もしかしてお嬢のスマホ講師にされようとしてる!?」
もちつもたれつ、ということで。