ゆめをえがけ
「この俺に将来の夢を考えろと」
「おにぎりほしい!とかでもいいんですのよ」
「それお嬢が今食べたいんじゃなくて?」
「私はどちらかと言えば柏餅が良いですね……今年は食べ損ねてしまったので」
「……お嬢に美味しい柏餅が届きますように、と」
「七夕さんじゃありませんのよ」
んなこと言ったってよ。
当たり前に生きてきた日常は全て夢幻で、人間の恨みつらみ害意悪意虚をじっくり煮込んだあれそれを摂取し続けはや半年。
つまりは「対妖霊組織・白咲」に拾われてから半年。
常識ひっくり返されて対応するのが精一杯だわちくしょう。
まぁ半年もあったんだけど……いやねぇよ。俺3ヶ月くらい意識なかった時期あったもん。修行期間もそれくらいなかったか。どうだっけ。とにかくいっぱいいっぱいでんな余裕がねぇ。
「今はまだわかりません、でもよいのでは?こうなりたいです、が自分の中で定まっていれば話は別だと思われますけれど……なんですの、私の顔に何か……虫とかいますか?」
「………………なんもついてねぇよ」
「ならいいです」
どうなりたい。それなら。
「お嬢て祓魔検定何級だっけ?」
「準二級ですわよ。ついでに術師階級は下から四つめです」
「あんがと。じゃ祓魔検定二級と……術師階級下から5番めはなんてったっけ?」
「肆儀ですね」
「じゃあそれ」
あの日。妖霊に喰われる5秒前の俺を助け出してくれたヒーロー。
たったひとり、あんなでかくてやばそうなお化けを一刀両断してみせた、お嬢。あの日のアンタを超えること。
それが俺の、当分の夢です。
5/9/2025, 2:06:33 PM