菜な子

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3/5/2024, 1:53:45 PM

いつも起こされる側だけれど、
たまには、と、早起きして
静かに寝息を立てる彼の元へと駆け寄った

でも、こんなに気持ちよさそうに眠っているのに
起こしてしまうのも忍びなくて、
結局、肩口を、
触れるか触れないかのぎりぎりのところで
ちょん、とつついただけだった

そればかりか、
あぁ、お布団いいなぁだなんて思って
いそいそと布団に潜り込んだ

ここまで来たらもうお分かりだろう

すっかり彼の体温と、
おふとんのふかふかさに絆された私が
彼が起きるまで大爆睡をかまして
折角早起きしたのに彼に起こされる羽目になることを


「たまには」

3/4/2024, 11:32:23 AM

大好きな君に伝えたい
頬を伝ったこの涙
貴方のおかげで止んだこと

大好きな君に伝えたい
頬を掠めたくちびるは
春風に溶けて消えたこと

大好きな君に問うてみたい
分からなかったくちびるの
触り心地はどんなかと

大好きな君に問うてみたい
私はとっても好きだけど
貴方はどれほど好きなのか

大好きな君に問うてみたい
私と一緒に暮らすこと
苦なのかそれとも幸せか

大好きな君が答えると
爽やかな風が耳を撫で
言葉は優しく染み渡る

大好きな君に渡したい
日頃の感謝と
愛込めて

大好きな君にやってみる
つま先で立って
引き寄せて


柔らかな頬に口づけを。




「大好きな君に」

3/2/2024, 10:08:01 AM

「行ってくる」
その言葉に
「生きて帰って来る、の行ってくる、ですからね」
と返すそいつの。
己の愛以上に、
この上ない愛を注いでくれるそいつの。

力無く振られた白い手の残像が、
無理に笑う中途半端な口角の上がり方が、
元気に伸びた腕になることを。
恋人と死別するかもしれない暫しの別れに、
手を振る必要などない世界を。
あいつが何の心配もなく、
柔らかく笑むことのできる世界を。

否、そんな己の自分勝手な願いより、
笑顔より、手より、あいつの心からの幸せを。

たった一つの希望として、俺は剣を振るおう。
光を受けた剣先は、己に仕舞いきれなかった希望。

俺の作る、
あいつの幸せを願って。
その幸せの隣りに、俺がいられるなら僥倖だ。
あいつの跳ねるような足取りを。
色とりどりの花に心躍らす姿を。
自らが愛し、愛される人に囲まれて、
笑顔で暮らすことを。
あいつを取り巻く全ての幸せを、
これでもかと言う程に願った全てが
光として燦然と輝いている。

あぁ、駄目だ。
あいつのそばにいて、
誰が希望をたった一つに絞れようか。

溢れ出す希望は、全てあいつの元へと集束する。
希望を纏った剣先は、今日も血肉を散らす。

いつかきっと訪れる、
あいつの幸せへの紅い道を作るために。





「たった一つの希望」

12/17/2023, 10:20:03 AM

何も特別なことなんてない、
何もおかしなことなんてない。
傍から見たらきっとそう。
なのに不思議だ。
私には、とりとめのない話だなんて思えない。
その証拠に、私はずっと覚えている。

とりとめのない話の中の、
なんの変哲もない仕草にも、
私はときめきを見つけた。

ふと緩められた口許がいとおしい、
緩めた唇から零れる言葉がうつくしい、と。

あなたにとっては、
ただのとりとめのない話 だったかもしれないけれど、
私はずっと覚えている。
私は全部、覚えている。

あなたから湧き出るその話は、
到底、「とりとめのない話」になんて
できないほどに、
いとおしさもうつくしさも、全部混ざって、
何か複雑な形となる。
私の心にずんと据えられる。

私の礎となる。

それが、私は時々怖くなる。
あなたにとってのとりとめのない話は
私にとって特別で特別で仕方の無い話であることが。
私とあなたの見える世界の違いが。

私はあなたと一緒に生きられる?
同じ世界で、同じ物事を見られる?

できる気がしなかった。

だから、私はあなたともっとお話がしたい。
私の世界を知って。
あなたの世界を教えて。

あなたの特別な話に埋もれたい。
埋もれて埋もれて、
特別だなんて言えなくなるほどに
その特別な話を積み重ねて、
どうにかあなたととりとめのない話がしたい。


あなたととりとめのない話がしたいの。
だから、一緒にとりとめのない話をしましょう。











「とりとめのない話」

9/29/2023, 12:22:08 PM

あなたのすすり泣く声さえ
静寂に溶け込み聴こえなくなった。
日暮れの終わった青い世界に
あなたの幻想を見る。







「静寂に包まれた部屋」

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