piyo

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8/19/2025, 10:39:57 AM

私はよく泣く。
小さい頃から今まで、嫌なことがあると自分の意思関係無く涙がこぼれる。

「なぜ泣くの?」

そんなの自分でも分からない。泣きたくて泣いていないんだから。

私が泣いている時、お母さんは嫌な顔をする。

「なぜ泣くの?」

顔を顰めながら私に聞く。

「分からない、」と答えれば、顔を叩いてくる。

「悲しいから、」と答えれば、身体を蹴ってくる。

「怖いから、」と答えれば、髪を引っ張ってくる。


今日、そのお母さんが亡くなった。

事故だった。
私の目の前で、轢かれた。
なんともグロテスクな様だった。他人事のようだが、実感が無いのだから仕方が無い。

葬儀では泣かなかった。
今まではどんな些細なことでも泣いていたのに。
初めは実感が無いから泣けないんだ、と思っていたが、一時間、二時間、一日経っても泣かない。

なんで?

逆にどうしてそこまで泣けるのかが不思議だった。
そこで、私は聞いてみた。

「なぜ泣くの?」


#なぜ泣くの?と聞かれたから 0819

8/18/2025, 11:01:41 AM

コツ...コツ...

「ヒッ...」

恐怖のあまり声が漏れる。
私が恐怖している元凶の足音は、今も少しずつ近づいて来ている。

怖い話を聞いたばかりだった。

リビングのテレビをつけ、適当な番組をつけては消してと繰り返していた。そしたら、ふと目に留まった。それだけの事。
別に観なければ良かったんだ、怖いなら。でもつい観てしまった。

【夏のホラー特集】

シンプルな見出しに少しでも惹かれたのがダメだった。次の瞬間、

「うわっ」

心霊写真が映った。
こうなったら仕方がないとでも言うようにテレビに目線を固定した。

そこからはまあお察しの通り、最後まで観てしまった。そして今に至る。


コツ...コツ...

相変わらず足音は鳴り止まない。

コツ...

足音が止まった。背中に冷や汗がつたう。

ガチャ...ガチャガチャッ

ドアノブを開けようとする音。

ガチャッ...

扉が開く音。

コツ...コツ...

歩いてくる。顔は見えない。

コツ...

また足音が止まる。

「スゥッ」
「ヒッ...!」

何かを喋ろうとしている。距離はあるが、怖いものは怖い。心音が鳴り止まない。

くる...!

「アンタまだ起きてんの〜?さっさと寝なさいよ〜」

......

「お母さん...?」
「ん〜?そうだけど?」

ホッ、安心して息をつく。

「なに?まあ、早く寝なさいね。おやすみ〜」
「あ、おやすみ...」

良かった...とりあえず今日は寝っ...

「え?」

目を擦った。幻覚?

「おっ、お母さ...!」

お母さんの後ろに立っている" ソレ "が振り返る。

「ぅぐっ..」

口を塞ぐ。振り返った" ソレ "の顔は、さっきテレビで見た心霊写真の幽霊にソックリだった。

後ろから、さっきとは違う別の足音が聞こえた。


#足音 0818

8/17/2025, 12:20:51 PM

20XX年
夏は毎年最高気温を更新し続けており、その暑さに人類は結局順応している。人間というのは慣れる生き物なのだ。
そんな中季節は巡り、冬。
とある会社のオフィスにて、同僚二人組があるものと戦っていた。

「「あっぢぃー...」」

そう、暑さだ。

「冬だってのにこの暑さは何よ...」
「分かる、夏に改名しろっての...」

この時代では、冬でも夏真っ盛りとでも言うくらいの暑さがあった。
二人は額に汗を滲ませながら、エアコンに身を投じていた。

「十年前くらいまではまだ全然マシだったのにさぁ〜」
「でも当時はその暑さでも喚いてたよねぇ」
「うんうん...いやぁー懐かしい!あの頃に戻りたいわぁ〜」
「雪遊びしたぁ〜い」

成人女性二人が散々喚き散らかしているこの光景。
とうに限界に達していた二人は、頭が働かずにジタバタと動き回りもっと暑くなっていた。

「終わらない夏って感じ〜」
「うわ、天才?まさにそれじゃん」
「なんか曲作れそうだわ」
「良いじゃん良いじゃん、終わーらなーい夏ぅーみたいな?」
「めっちゃいいじゃーん」

学生の頃に戻ったかのようにふざけまくる二人は、最早ここが仕事場だということも忘れているようだった。

「おーい、二人共〜」
「あっ、上司」
「暑いのは分かるけど、そろそろ仕事戻れよ〜」
「はぁーい」

さて、仕事戻るか。

さっきまでの自分達の行動を忘れたのかというほどあっさりと、二人は仕事に戻ったのだった。


#終わらない夏 0817

8/16/2025, 10:47:36 AM

「鳥って凄くない?」

脈絡も無くそう語り出す友人。

「何、急に」
「いやー、だってさ」

彼女曰く、何処までも続く遠い空を迷子にならず飛べることが凄いのだと言う。

「私だったら絶対迷子になっちゃうよ〜、方向音痴だし。」
「いや、アンタは方向音痴の次元超えてるでしょ」

どこへ行くにしてもすぐに迷子になる友人は、最早方向音痴という言葉だけでは庇いきれない程に方向音痴だ。

「いつかさー、」
「うん」
「方向音痴治して、遠くの空へ行ってみたいな」
「うん」
「そん時は、あんたも一緒に行こうね。」
「うん、」
「置いてったら許さないから!」
「...うん、勿論」

置いていかないよ。


#遠くの空へ 0816

8/15/2025, 2:32:55 PM

「…あ」

驚いた。自分でもビックリする程。
その感情をたった1文字の平仮名に託した。

色々な色が混ざっているクジラの絵だった。何種類もの色が混ざっているはずなのに汚く見えない。何故か心を惹かれた。

描いてみたい、そう思った。

もっと見たい、そう思った。

空を浮いている、白いような青いような、でも少し赤いような、そんな幻想的な絵。帰り道の夕焼けに照らされているそれは、その綺麗さをもっと引き立たせているようにも見えた。

「おーい、行くよ〜」
「あっ、待って」

たった数分の出来事が、数時間に思えた。


#!マークじゃ足りない感情 0815

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