愛は叫べるのだろうか。
そんなロマンチックなことを現実でやったところで、近所迷惑になりそうだ。
旬だとキャッチコピーで謳われている野菜を買い物カゴにつめながら、そんなことを思った。
きっと私が愛を叫ぶのは、びっくりするほど先であろう。その時は、今までの気持ちが全て吹っ飛ぶくらいに叫んでやる。
私は買い物カゴをもってレジへ向かった。
#愛を叫ぶ。 0512
「あれ、モンシロチョウ。」
公園の適当なベンチに座って休憩。
後ろにレンガの塀があって、ちらっと見てみた。
そこにいたのはモンシロチョウ。羽が破れてて、見るも無惨な姿。
誰にやられたんだろう、可哀想。
そんなことを思うけど、きっと明日には忘れちゃう。なんだか無性に悲しくなる。でも、これも人間なんだなって、神秘的にも感じる。全然神秘的じゃないのにね。
虫の世界にも、人間の世界にも、殺人は起こる。
ただ、法律で罰せられるかっていうだけの違い。
たまに人間に生まれたことを嫌に思うけれど、どうせ同じようなものなんだったら人間の方がマシかな。まだ自分の夢が持てるし、意思疎通もできる。治安だって虫よりかは良いだろう。
虫に人類が支配されたら、きっと地球は終末を迎える。人間にしか世界は作れない。驕りすぎかもしれないけど、人間って強情で我儘だから、そんなものだ。
この世界にある数々の輝かしい栄光や技巧だって。
怒りを通り越して仰天するような事件の犯行理由だって。
バカで結局自分が一番大切な僕達だって。
全部、人間だから成り立ってる。
虫なんかに取られちゃたまらない。
でも、虫は大切にしなきゃね。共存できるものとはしておかないと。
僕はモンシロチョウに、小さなお花をお供えした。
死化粧は、美しく。
#モンシロチョウ 0510
嗚呼、嗚呼、優しい人。
私は一生涯、貴方のことを忘れないでしょう。
このことに罪悪感を覚えても、忘れたくなる程の幸せが訪れたとしても、私はきっと、貴方の呪いからは解き放たれることは無い。
愛は優しさだけじゃ生まれない。
優しさだけで生まれるものは、きっと、
呪縛だけでしょう。
#優しさだけで、きっと 0503
今日は私の誕生日だ。
本当は彼が祝ってくれるはずなのだが、何だか気配が感じられない。
私の彼が少し忘れっぽくて、おっちょこちょい。でも、私は彼のそんなところに惹かれたのだ。
だが、流石に私の誕生日を忘れるのは些か酷いのではないだろうか。
私は彼を見つけるために、彼の部屋を訪ねた。何だか違和感を覚えたが、気にしない。
コンコン、と木の音がする。だが彼は出てこない。
勝手に入ることに申し訳なさがあるが、仕方がない。ドアを開けて部屋を見渡すが、彼はいなかった。
リビングにも風呂場にもトイレもいない。何故か、少し体が動かしにくい。
流石に焦りを覚えてきたころ、玄関の棚に写真が飾ってあった。見覚えのない、古い額縁。
辺りを見渡してみるが、やはり先程彼の部屋を訪ねた時のように、違和感が拭えない。そして気づく。
古い。
記憶よりも家が古く、心做しか人の温もりが感じられない。
ふとさっきの写真に目を向け、じっと目を凝らす。目が見えにくい。
写真には、二人の老夫婦がいた。
思い出した。思い出してしまった。
彼はもう居ない。私よりも先にいってしまった。
ああ、思い出さなければよかった。ずっと若い自分のままでいたかった。
時計の針なんて、なければ良かった。
#0107 時計の針
周りがみんな20歳になった。
でも私は早生まれだから、まだ19歳。
どうして1歳しか変わらないのに、できることがこんなにも異なるのだろう。
どうして1歳しか変わらないのに、みんな大人に見えるのだろう。
学年は一緒なのに、年下になってしまった自分。
みんなはお酒が飲めているのに
みんなはタバコが吸えているのに
自分だけ取り残されたみたい。
次の誕生日には私も20歳になって、お酒も飲めるしタバコも吸える。
でも、それでもみんなには追いつけない。
ああ、20歳になったらまず何をしよう。
早生まれ同士で、お酒を飲んでみたい。
初めてのお酒は何がいいかな。
20歳になった自分は、今のみんなのように、大人になっているのだろうか。
未熟な大人が1人、もうすぐ飛び立ちます。
#0110 20歳