誰しも一度は自分だけの秘密のものに憧れるものだろう。私も例外ではない。
だが、幼い頃と違って大人になった今。秘密のなにかを作ったところで、忙しく過ぎる日々に巻き込まれて無くなってしまう。それでもなにか簡単なものを作ろう、と模索して考えついたのが「秘密の箱」だ。
自分だけの思い出や秘密にしたいものを入れれば、たちまちタダの箱から特別な箱に変身する。誰でも作れる簡易的な魔法の箱だ。
お洒落な箱を適当にお店から選んで購入する。あいにく、今日は雨模様だ。だが、うきうきと浮ついた心では雨も暗い空も綺麗な景色に移り変わる。
家に帰って早速箱を開けた。
シンプルな薄紫色の外装に、中は薄めたブラックのようなキラキラした紙ぺらが敷いてある。なんとも言えない胸の高揚に、勢いのまま箱に入れるものを探していく。
一人暮らしをする際に実家から持ち込んだ熊のぬいぐるみに、昔仲良くしていた友人からの手紙。高校や中学のみんなで撮った写真をキーホルダーに加工したものもある。思い出のあるものをどんどん見つけ、昔の記憶に浸りながら箱に入れていく。
もう長らく話せていない、小学校時代からの親友に貰ったインクの出ないペン。勿体なさに目を背け、大事に最後まで使ったことを鮮明に思い出す。
もう既にパンパンになりかけている箱に、最後の思い出を仕舞った。
この秘密の箱に、また親友と共に仲良く話すことが出来ることを願いながら。
#秘密の箱 1024
10/24/2025, 10:33:35 AM