No.5『君に会いたい』
散文 / 散文詩 / 歌詞?
せめて夢の中ででも君に会いたい
ただ眠るのが怖い
そんな夜ももう終わりにしたい
夜が来るたび願うことはただひとつだけ
君に会いたい
夢でしか会えない君に
君の訃報を聞いたあの日から
止まってしまった時を動かす魔法
ただ眠るだけなのに
なかなか寝付けない夜もあるけど
夜に限定しなくていい
お日様が眩しい昼でも
眠れないまま目覚めてしまった朝でも
静かに目を閉じて上手く眠れたなら
君に会える
夢でしか会えない君に
現実逃避じゃなくて
それが君に会う唯一の方法
お題:夢と現実
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今日はちょっと歌詞のような散文に。いつもは歌詞を書く時は曲が先なんだけども、たまには。というか纏まらなかったので歌詞というか、自由詩という括りにしてしまった;
No.4『別れの前日』
散文 / 恋愛 / 掌編小説
貴方に気づかれないように、少しずつ荷物をまとめた。二年半に及ぶ同棲生活のなかで、少しずつ増えていったものを。
お揃いの歯ブラシや茶碗、マグカップ、日常生活で使う日用品なんかはまだ置いてある。ただ、一年を過ぎる頃から家事を一切やらなくなった貴方は、わたしのマグカップや茶碗がなくなったからといって、この部屋を出て行くために荷造りをしているだなんて思いもしないのだろう。
お互いに仕事で忙しいわたしたちだけれど、二年目までは毎日一緒に朝食をとっていた。夕食もできるだけ一緒にとっていたし、仕事が終われば寄り道もせず、真っ直ぐ帰宅していた。
それが、いつの間にか残業を言い訳に帰りが遅くなり。気づいた時には朝食で顔を合わせることもなくなっていた。
もう何日、貴方と口をきいてないのかな。これなら別れの言葉もいらないね。
明日、貴方が仕事に行っている間に、さよならは言わないで出て行くね。
お題:さよならは言わないで
No.3『無題』
散文 / 掌編小説 / 散文詩
朝起きてすぐ、わたしはいつも絶望感と喜びの両方を味わう。さっきまで見ていた悪夢から逃れられた喜びと、今日も生きていたことへの絶望感とをだ。
夜眠る時はいつも、このまま目が覚めなきゃいいと願うのに、悪夢を見ると今すぐ夢から醒めてと目覚めを乞う。
そんな光と闇の狭間で揺蕩(たゆた)うわたしは弱い。
強くなる方法を見い出せなくて、今日もわたしは光と闇の狭間で項垂(うなだ)れる。
お題:光と闇の狭間で
No.2『君がいない』
散文 / 恋愛 / 掌編小説
『どうにもならないことが分かっているから、わたしはあなたから離れます』
そんな君が遺した一言が胸を締めつける。嫌いになったからだとか、もう愛してはいないからなどという明確な理由があれば、こんなにも苦しむことはなかったかも知れないのに。
昨日、ぼくが仕事に行っている間に、君はぼくの部屋から出て行った。同棲を始めてから増え続けた、君の荷物と一緒に。
歯ブラシ、マグカップ、お茶碗、シャンプーにリンスに至るまで。二つずつ揃えていたものはひとつずつになり、君が生活をしていた空間だけが、ぽっかりと綺麗さっぱり、最初から何もなかったかのように。君の痕跡だけが消えていた。
君がいない。
あんなにそばにいた君が、今はこんなにも遠い。
お題:距離
No.1『優しさの呪縛』
散文 / 掌編小説 / 散文詩
わたしが泣きそうな顔をしたら、君は必ず「泣かないで」と言う。泣きそうな顔に見えるかもし知れないけれど、わたしはまだ泣いてはいなくて、泣いているのは君のほうなのに。
いつもそうだ。君のほうが先に泣くから、だからわたしは泣けないでいる。わたしが泣かないように守ってくれているつもりなのかも知れないけれど、わたしは君のせいで今日も泣きたいのに泣けない可哀想な子だ。
お題:泣かないで