雷鳥໒꒱·̩͙. ゚

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10/28/2022, 9:54:31 AM

―愛言葉―

『久しぶりだね』
「だね、元気してた?」
『うん、元気だったよ』
「そっか、良かった」
『そっちは?』
「相変わらずだったよ〜♪」
『ふふふ、口振りからして分かる。
話は後で聞かせてね』

『…』
「…」
『そうだ、あのさ、彰人と南帆と4人で、
よく遊んだじゃん?』
「あ〜、懐かしい。毎日小屋で遊んでたんだっけ?」
『そうそう。
その時に決めた合言葉って、まだ覚えてる?』
「黄昏時を森奥の小屋で」
『それそれw
今急に思い出してさ』
「…ねぇ、僕らでも愛言葉作ろうよ」
『僕らって…?』
「君と僕だよ」
『合言葉?なんで急に?』
「ふはは、合言葉じゃなくてさ、愛言葉、だよ」

10/26/2022, 11:22:22 AM

―友達―

私は、小さな頃から友達が居なかった。
たぶん、私が歳に似合わず陰気だったせいだ。
みんな、何となく近寄りづらかったんだろう。
でも、そんな私にも、1人だけだけど、
友達ができたことがあった。
それは、私が7つか8つだった時の話だ。

帰り道、私は、嬉しさのあまり、スキップをした。
最近できた私の友達1号が、私の家に
遊びに来てくれることになったのだ。
遊ぶのは明日。
帰ったら、サッと宿題を終わらせて、
部屋を綺麗にして…
初めての友達を迎える準備をしなければ。
お母さんも喜んで許可してくれたし、
もう今からワクワクだ。

そして、友達を待ち合わせ場所まで迎えに行った。
他愛のない話をしながら家に着き、
ただいま〜!連れて来たよ〜、と、
お母さんに声をかけ、友達と一緒に家に上がった。
すると、お母さんは、
「…あれ?お友達は?」
家をキョロキョロ見渡しそう言った。
『え、お母さん、何言ってるの?
ちゃんとここにいるよ!!』
「お母さんを騙そうとしているの?
馬鹿な真似はやめなさい!」
私は困惑した。
だって、友達は紛れもなくここにいる。
当の本人は、目を伏せて俯いている。
その割には口角が上がっていて、
私は、その時初めて日常で恐怖を覚えた。

10/24/2022, 12:39:54 PM

―行かないで―

『行かないで?
そんなこと言わないでよ
君のために行くんだからさ
そりゃあ怖いし、本音言うと、
行きたくないよ
でも、君のためだと思えば、
そんなの、容易いものなんだよ

んー…強がってる…か、確かにそうかもね
でもさ、最後くらい、僕に強がらせてよ?

あぁ、ごめん、最後なんて言っちゃダメだね
兎に角、少しは君にかっこいいとこ、
見せたいんだよ
こんな僕の我儘に、
ちょっとだけ付き合って、ね?』
「…!じゃあ、絶対、逝かないでよね!!
約束だから!ね!!」
『うん、じゃあ、行ってくる
…絶対戻ってくる』

別に、君のためにここへ来る事は怖くなかった
それは本音だったし、
死を目の前にした今だって、怖くは無い
後悔もしてない
けど―零れるほどの涙を目に溜めて、
約束だから、と言った君が脳裏を過ぎる
君との最後の約束を守れなかった事だけは、
悔やんでも悔やみきれない
…もう嘘はつかないと静かに誓ったあの夜でさえ、
僕は嘘にしてしまうんだね
そんなことを考え、自嘲の笑みを浮かべた
諦めるようにふっと息を吐く
そして、謝罪の言葉と
愛する人の名を口にして…
僕の前に立ちはだかって、
大きな口から雨ほどの涎を垂らす"怪物"の糧となった
僕が流した一滴の涙が、
どうか死者の跡を残しますように

それが僕の最後

10/23/2022, 1:53:55 PM

―どこまでも続く青い空―

どこまでも続く青い空
澄んだ空気を覆う空には、
雲がひとつもない
この空をずっと見つめてると、
空に吸い込まれてしまいそうだな、なんて
ボーッと考えてた

まさか、そんな淡い妄想が現実になるなんて
思いもせずに

10/23/2022, 8:49:44 AM

―衣替え―

ずっと暗くて変わらない風景に飽き飽きしていた頃、
もうそろそろなんじゃないかな、と勘づき始めていた頃、
一筋の光が現れた。
その光は段々と大きくなり、やがて待ち焦がれていた
主様のお顔が見えた。
久しぶりに見た主様のお顔は、
また随分と大人びて、品のある顔立ちになられていた。
主様は、お洋服がとてもお好きだ。
そのため、毎年、衣替えを行われる時は、
とても晴れやかで嬉しげな表情をお見せになる。
そのまま、久しぶりに見る私たちを
体に当ててみたり、着てみたりと、
それはそれはとても長い時間、衣替えを楽しまれる。
私たちも、それを望んでいる。
だから、いつも衣替えの時のこの部屋には、
ほんわかとした幸せな時間が流れる。
今年も主様に気に入って頂けますように、と。
密かに願う10月初旬。

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