雷鳥໒꒱·̩͙. ゚

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―行かないで―

『行かないで?
そんなこと言わないでよ
君のために行くんだからさ
そりゃあ怖いし、本音言うと、
行きたくないよ
でも、君のためだと思えば、
そんなの、容易いものなんだよ

んー…強がってる…か、確かにそうかもね
でもさ、最後くらい、僕に強がらせてよ?

あぁ、ごめん、最後なんて言っちゃダメだね
兎に角、少しは君にかっこいいとこ、
見せたいんだよ
こんな僕の我儘に、
ちょっとだけ付き合って、ね?』
「…!じゃあ、絶対、逝かないでよね!!
約束だから!ね!!」
『うん、じゃあ、行ってくる
…絶対戻ってくる』

別に、君のためにここへ来る事は怖くなかった
それは本音だったし、
死を目の前にした今だって、怖くは無い
後悔もしてない
けど―零れるほどの涙を目に溜めて、
約束だから、と言った君が脳裏を過ぎる
君との最後の約束を守れなかった事だけは、
悔やんでも悔やみきれない
…もう嘘はつかないと静かに誓ったあの夜でさえ、
僕は嘘にしてしまうんだね
そんなことを考え、自嘲の笑みを浮かべた
諦めるようにふっと息を吐く
そして、謝罪の言葉と
愛する人の名を口にして…
僕の前に立ちはだかって、
大きな口から雨ほどの涎を垂らす"怪物"の糧となった
僕が流した一滴の涙が、
どうか死者の跡を残しますように

それが僕の最後

10/24/2022, 12:39:54 PM