【そして、】
来世は可愛く、来世は芸能人として、
来世は金持ちで、来世は才能に溢れていて、
願えばいいよ
ちゃんと叶えてあげないから
君は君自身がいかに幸せかを知るべきだ
あまりに苦しくてあまりに惨めで耐えられないって?
慰めたりしないさ、僕の仕事じゃない
君が願う限り何度繰り返しても叶えてあげない
でもね、僕は君が愛おしいよ
沢山傷ついたね
沢山苦しんだね
大丈夫
君は幸せを自分で掴む力を持ってる
そして、いつか、
生まれ変わる日が来たとしても僕は君を、
「そして、」
tiny love
心春と私の子供はもうすぐ生まれるだろう
女の子だといいなぁ 名前は何がいいだろうか
早く私達の小さな愛の結晶に会いたいなぁ
毎日そんなことばかり考えている
親バカだって?ハハハ…
当たり前だ
こんなに可愛い娘相手にバカにならないわけが無い
大事に大事に育ててきたのだから
ずっと私だけのものだ
一緒に育てようね、心春
今日で上原月乃がアイドルを卒業して1年だ
僕は今でも君の赤いペンライトを振り続けている
「つっきー!こっち見てぇー!!つっきぃーー!」
ドンドンドン
また隣の住人か
「いい加減にしてくれないか。うるさいんだよ」
隣の住人はキレ気味に向かってきたが、無視して扉を閉める
「ごめんね。怖かったよね。」
僕は急いで戻ってそう言った
「大丈夫だよ。ほーら、よしよし」
さぁ、続きをしようね
まだまだ僕を楽しませてくれるよね?
まだ赤く消えない焔を振り続けないといけないんだ
「まだいけるよね?月乃」
月乃の痩せ細った身体も
変わり果てた色のない顔も
吐く呼吸さえも
僕を興奮させる
僕なら君を一生アイドルでいさせてあげられるんだ
「お姉様はどこへ行かれたのでしょうか?」
幼い頃の私はそう問いかけました。
「お姉様のことは今後一切話してはなりませんよ」
母は冷めた表情でそう言いました。
こちらをチラリとも見ずに、美しい横顔だけを向けて
その冷たさ、その不自然さ、その奇妙さ
その薄情さ、その恐ろしさ、その美しさ
今でもあの日の母を忘れられません。
あの日から母は私と目を合わせませんでした。
姉と私を重ねて辛くなったのでしょうか。
それとも
私が恐ろしかったのでしょうか。
今となっては母がどこまで知っていたのか知りようもありませんが、
「さぁ、お母様はどこへ行かれたのでしょうか?
えぇ、そうです。次は貴方に質問してるのですよ。」
【カーテン】
子供達にお化け屋敷と呼ばれている家があった
その家は汚れてくすんでおり、木々が生い茂っていた
カーテンはいつも閉められていて誰が住んでいるのか
知る者はいなかった
茉莉はいつもその家を通って出勤していた
ある日、茉莉はあることに気付いた
カーテンの隙間から誰かが茉莉を覗いているのだ
茉莉は恐怖で固まり、動けなくなった
すると窓が開き、中から青白い男の顔が出てきた
「いつもここを通ってますよね。この場所でずっと見ていたんです。気づいてくれて嬉しいなぁ。」
男は照れたよう笑いながら、窓を潜って出てきた。
男は悪びれる様子もなく、茉莉を家に招こうとした
だが、危険を感じた茉莉は逃げ出そうとした
すると男は豹変した
男は細く弱々しい体から出るものとは思えない力で
茉莉の腕を掴み、家に引きずり込んだのだ
茉莉は暴れるように抵抗し、逃げようとした
しかし、努力も虚しく彼女は部屋に閉じ込められ、
その生涯を終えるまで部屋から出ることは無かった
男は茉莉を愛し続けた
茉莉はいつしか男に依存するようになっていた
結局茉莉は最初から最期まで男の思い通りだった
最も男は、茉莉がカーテンの隙間から
密かに助けを求めていたことは知らなかったが…