マカロニサラダの妖精

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10/7/2023, 11:17:53 AM

【力を込めて】

もう書く力も湧かんが私の人生をここに残そう

何度も悪事を働いた私は生涯孤独で当然だ

だが、懺悔の為に私の罪を認める必要があるのだ

今から私の罪を端的に言っていこう

1.私という極悪な思考の人間が生まれたこと

2.心優しき友を辱め、自殺に追い込んだこと

3.社会を呪い、革命家になったつもりでいたこと

4.人の思想を自分の考えた思想のように振舞ったこと

5.ある女が私を好きになるよう誘惑し、洗脳したこと

6.その女に身体的、精神的暴力を振るい続けたこと

7.娘を見えない牢獄に意図的に閉じ込め続けたこと

8.懐かしき友人への復讐を見事にやり遂げだこと

9.殺人を犯し、孤独の道を選んだこと

10.それらの一切の罪が誰からも裁かれていないこと

10つも書いたら腕がもう疲れてきた

しかし、私はこれだけは書かねばならない

最後の腕の力を込めようではないか

私は報復から、罰から逃れ続けてきた

何故急に懺悔など書き出したかというと、地獄が怖い

それだけの理由で逃れてきた罪を吐いてしまうのだ

諸君らは笑うかい?蔑むかい?

だが、諸君らも罪から逃げていないと言えるのかい?

本当にかい?

諸君らとまだまだ語りたいが、もう腕の力が限界だ

10/4/2023, 11:40:39 AM

【踊りませんか?】

恋とは、愛とは、そんな抽象的な事はどうでもいい

恋も愛も見えないし、皆が同じ気持ちで定義なのか

証明しようがないのに同じだと勘違いしてしまう

彼はそっと私の手を取り、

「私と踊りませんか?」

と言い、端正な顔でこちらを見ている

恋に関して冷静で、盲目的では無いつもりなのに

彼を前にすると盲目的なのかもしれないと考える

私は彼の手を握り返し、彼に身を任せた

それは、楽しくて熱くて夢のような時間だった

私は勇気を出して彼をそっと抱き締めた

彼にも抱き締めて欲しかったし夢を見せて欲しかった

だが、彼は私を抱き締めはしなかった

端正な顔を歪め、冷たい目でこちらを見ていた

彼は私に恋を囁き、愛を誓って共に踊ってくれた

だから彼の私に対する恋を、愛を、私と同じ物だと

勘違いし、自分と同じ愛を求めていた

彼はただ恋や愛に踊るような楽しさを求めていた

全てを受け入れて抱き締め合う愛というものを

彼は求めていなかったのだ

そうなると、誰かと分かり合うのは

本来は不可能なのではないだろうか

自分そのままを受け入れられる関係なんて

どちらかを曲げないと生まれないのではないだろうか

だけど本当は誰かに自分の全てを愛して欲しいな


10/1/2023, 12:31:19 PM

【たそがれ】

娘は欲の無い健気な少女でした

物欲も無く、出された物を文句も言わず素直に食べ、

私の言うことに従う本当に良い子でした

しかし、14の頃でしょうか

娘は色気づいて炭水化物を減らしたいと言い出し、

美容院に行きたい、流行りの音楽を聞きたい、と

日に日にわがままで汚い娘になっていきました

もちろん、私の教育が悪かったことは分かっています

ですから、私は娘の再教育を試みました

勉学にも専念して欲しいですが、

男と会う環境は悪なので、中学を数ヶ月休ませ、

スマホは没収して部屋に閉じ込め、

食事の有難みを教えようと食事を与えませんでした

最初はスマホを返せと反抗していた娘ですが、

数日で食事を必死にせがむようになりました

欲を剥き出しにする娘に嫌気が差しましたが

親として真剣に娘に向き合い続けました

1ヶ月も経たない内には娘は瞬きもせずに

たそがれ始めました

欲を忘れ、たそがれる娘に私は安心しました

娘はきっと私に感謝し、親孝行してくれるでしょう





9/27/2023, 12:52:28 PM

【通り雨】

男は復讐心で燃えていた

ある女を憎しみ、殺害を目論んでいた

男は雨の中、女の自宅へと向かっていた

コンビニに寄り道し、わざとゆっくり歩いている

その様子はまるで時間稼ぎをしているようだった

そうこうしている内に雨は止んだ

男は歩く速度を早め、女の自宅へ直行した

女の自宅のインターホンを鳴らすと、

女は叫ぶようにこう言った

「また嫌がらせですか?警察呼びますよ!」

男はそれを聞くとフッと笑い、礼をして立ち去った

男は雨が止み、インターホンから自分の顔が

はっきり見えるようになるのを待っていたのだ

男は復讐心で燃えていた

だが、復讐心に愛されてはいなかった

男は復讐心に身も心も委ねる事はできなかったのだ

だが男はそんな自分を十分理解していた

男は復讐心に全てを捧げる事ができるような

選ばれた人間でないことに安心したかったのだ

何者にもなれないその男は、哀れそのものだった

あぁ、堕ちるところまで堕ちることができたら

男にとってどんなに幸せなのだろう




9/24/2023, 10:33:32 AM

「形の無いもの」

私はマカロニサラダの妖精

何の秀でたものもない、

むしろ全てにおいて不器用な大学生

今日のバイト中、私の腕に蚊がとまった

普段なら容赦なく叩いているが、

今年はあまり蚊を見なかったなーと思い、

そのまま血を吸わせた

夏中、私の周りに姿を見せなかった蚊が、

暑さに負けず、私の血を吸いに来たことに

何故か感動した

自分でもよく分からん

こういう形の無いものの感動を伝えるのは難しい

自分でも具体的に何に感動したのか分からない

バイト中で疲れて頭がおかしかったのかもしれないし

蚊を久しぶりに見て何故か嬉しかったのかもしれない

だけど、その後の痒みも

今日はそんなに嫌だと思わなかった







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