【白い吐息】
汚い男。
臭い息。清潔感のない外見。気分を害する体臭。
満員電車で席を荷物分まで横領。
老婆にぶつかり舌打ち。
笑えないほどの冗談の連発。
これが私の夫。
思えば交際当時からモラハラ気味だった。
若い私はその事実に気付くことができなかった。
我が人生最大の汚点だわ。とよく思う。
愛想も情もない。あるのは憎しみ。
寒い冬の夜、
庭で奴を仕留めた時、
白い吐息をしたのを目にした。
こいつ、生き物だったんだ。
そう思った。
【きらめく街並み】
涙を流しました
とても美しい夜でした
理不尽なことに、不平等なことに、
人を不幸に陥れた人は幸せそうだね
陥られた人の記憶は永遠に苦しいものだと言うのに
この世界で生きるには優しすぎる君へ
不安で怖くて泣きたい君へ
共に今日を苦しむ君へ
涙で滲んだ夜は
光が溢れてきらめく
それは君だけが見られる景色
冷えた君をあたためてあげよう
君はとっても素敵な人だよ
【贈り物の中身】
行かないで
どれだけ泣いても足掻いても
貴方は首を縦には振らない
壊れそうなほど泣いた耐えられなかった
ちょっと早いけど誕生日プレゼント
そう言って君は箱を差し出した
私は受け取ることを拒んだ終わりたくなかった
君はお守りとして受け取ってと強引に渡す
箱の中身はなかった
何故?何故?何故?何故?何故?
あの人ならプレゼントをくれるでしょ?
私の好きな物知ってるでしょ?
いつまでも愛してるでしょ?
いいえ
私を愛するあの人はいない
彼の人生に私はいない
私はもう終わった人間だ
その事実が痛いほど胸を刺す
何故
【君と紡ぐ物語】
___2人は、いつまでも幸せに暮らしました。
僕は、ようやくこの物語を描き終えたのですね
この物語の主人公はもしもの世界の君
美しい花に囲まれて、貧しいながら支え合い
君と僕が幸せになるまでの物語
現実になればどれほど嬉しかったのだろうか
この物語は途中から筆跡が違う
これは君が描いた物語でもある
僕はこの物語を書き換えたのだ
物語の中でも不幸な終わりなんて
君は、
どうして僕と幸せになってくれないの?
【落ち葉の道】
赤い落ち葉の道
去年歩いた時とはまた違う感覚だな
解放感、虚しさ、安堵感、苦しさ
この人と落ち葉の上を歩くのは今年で最後だ
愛し、憎しみ、幸せを願い、不幸を願った
この人はどうして生まれてしまったのだろう
それでもこの人を愛してしまった
もう戻れない
僕達が通った落ち葉の道は
赤く染まった