【通り雨】
男は復讐心で燃えていた
ある女を憎しみ、殺害を目論んでいた
男は雨の中、女の自宅へと向かっていた
コンビニに寄り道し、わざとゆっくり歩いている
その様子はまるで時間稼ぎをしているようだった
そうこうしている内に雨は止んだ
男は歩く速度を早め、女の自宅へ直行した
女の自宅のインターホンを鳴らすと、
女は叫ぶようにこう言った
「また嫌がらせですか?警察呼びますよ!」
男はそれを聞くとフッと笑い、礼をして立ち去った
男は雨が止み、インターホンから自分の顔が
はっきり見えるようになるのを待っていたのだ
男は復讐心で燃えていた
だが、復讐心に愛されてはいなかった
男は復讐心に身も心も委ねる事はできなかったのだ
だが男はそんな自分を十分理解していた
男は復讐心に全てを捧げる事ができるような
選ばれた人間でないことに安心したかったのだ
何者にもなれないその男は、哀れそのものだった
あぁ、堕ちるところまで堕ちることができたら
男にとってどんなに幸せなのだろう
9/27/2023, 12:52:28 PM