マカロニサラダの妖精

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9/17/2023, 12:26:49 PM

【花畑】

「妾はシェプスト様 今は蝶の姿だ

だが、元はファラオという高貴な存在だったのだ

今は花の蜜を吸い、人気のない花畑に住んでおる

虫類には妾の特別さに気付かない馬鹿しかおらんが

人間であれば妾に直ぐに気付き、崇拝するであろう?

妾はそなたのような者が来るのを待っておった

そなた、名はなんと言う? 褒美をくれてやろう」

青年は言語能力のある蝶に驚いておるようだった

全く、蝶は人間と話したくないだけだ

誰が話せないと決めたのじゃろうか

「すみません。蝶が話したことに驚いてて…
良ければ家に来ませんか?きっと助けになれますよ」

青年は人の良さそうな笑顔で提案をすると

妾の速度に合わせてゆっくりと歩き出した

青年の家は狭いが、涼しく居心地も悪くなかった

「シェプスト様にご紹介したい者がおります」

「良かろう 連れて来るが良い」

そう言うと、青年は楽しそうに部屋を後にした。

数分後、「入りますよ」という声と共に扉が開いた

その瞬間、何かが妾の体を捕まえた まずい 猫だ

「辞めろ!妾は蝶なのだぞ!辞めろ!辞めてくれ!」

青年は慌てて猫を抱えて猫を落ち着かせた

「駄目だよササミ この子に傷がついたら困る
この子は僕の大事な標本になるんだから、ね?」

妾にはその標本というものが何か分からなかった

だが、その時の青年の顔のその恐ろしいこと、

蝶は多くを望んではならなかったと思い知らされた

あぁ、妾の居場所はここではなかったのだ

蝶は蝶らしく何も知らず

花畑を世界の全てと思えば良かったのだ



9/16/2023, 10:45:49 AM

【空が泣く】

目の前の男は変態だ。

正直言って胸糞悪いが、気を悪くしないで欲しい。

道路をゆっくり歩く老婦人に対してわざと大きな声で

「危ないよ!邪魔邪魔!」

と言って老婦人を辱めて快感を得たり、

またある時は、電車で自分の後に即座に席を奪った

女に対して笑いを堪えるように、馬鹿にしたように、

「まだ貴方のお尻の下の定期取れてないんですけど」

と言い、恥ずかしそうに謝る女に快感を得ていた。

そんな男は今、泣きながらある要求をしているのだ。

その要求はこうだ。

「僕は毎日が退屈で仕方ない。終わらない退屈が続く人生には飽きてしまった。人を辱めるだけじゃ足りないし、僕はこの手で僕を辱める。本当は人の手は借りたくないが、どうか僕を撮影して恥の絶頂までの手伝いをしてくれ。自由を手に入れさせてくれ。恥の絶頂の先で言葉、感情、呼吸まで忘れてみたいんだ。」

僕は快く承諾した。男の涙も悪くないと思ったのだ。

撮影当日は台風並みの大雨だった。

空も彼が来るのを拒んで絶望して泣いているのか。

大丈夫だよ。もっと泣いていいよ。

綺麗に撮るから。






9/15/2023, 10:39:25 AM

【君からのLINE】

元彼が亡くなった。

病死。最後まで君の隣に居続けると

決めたはずだった。

だけど君は、二股してたんだよね。

相手の女にもう近付くなと言われて私達は別れた。

故人にこんなこと言いたくはないけど、

君はクズでヘタレで無神経なヒモ男だった。

でも知ってる。君が私を愛して苦しんでいたこと。

相手の女の人が君の妹ってことも知ってた。

君は家族と絶縁したのに必死で頼んだんだよね。

本当馬鹿だ。

ちゃんと傷つけて。幻滅させてよ。嫌いにさせてよ。

でもね、最後の君からのLINEで思った。

やっぱり君はクズだ。

私に未来も何も無い。君だけって分かってる癖に。

あんなこと送ってくるなんて。






『全部捨てて一緒に逝かない?』




9/14/2023, 11:54:23 AM

【命が燃え尽きるまで】

私ね、いつもエリーちゃんと2人で閉じ込められてるの

ここは寒いし、お食事は少なくて味が薄いの

でも私全然平気よ!だってエリーちゃんがいるから!

エリーちゃんは私の天使!だけどね、

満月の夜になると、エリーちゃんは私を襲いにくるの

あぁ怖い、怖いよ怖いよ怖い怖い怖い

「助けて!誰か!お願い!エリーちゃんが来る!」

ドンッ

「エリー?何故此処にいるんだ!パパの邪魔だ!」

「エリーちゃん!?何処!おじさん助けてお願い!」

「何を言ってる!お前がエリーだ!
お前の下らん妄想にはうんざりた!戻れ!」

私がエリー?

そうだったわ 思い出した 私がエリーなのよ

私は満月の夜に全てを思い出して

夜が明けると忘れるんだ

誰も私が変人だからこのことに気付いてくれないのよ

このままじゃ私は命が燃え尽きるまで1人なんだ!

嫌だ嫌だ嫌だ忘れたくない!忘れたくないよ!




あら?エリーちゃんはどこかしら?

9/13/2023, 10:59:58 AM

【夜明け前】

今日もまた、眠れない。

僕は夢遊病でいつも人を傷つけ迷惑をかけてしまう。

それがきっかけで眠る事が怖くて怖くて、

眠るという事が難しくなってしまった。

だが、その日はいつの間にか眠ってしまっていた。

そして夜明け前、僕は目が覚めた。

僕は眠れたことに安堵を覚えた。

だが、それも一瞬だった。何故なら、

右手に、血の付着した出刃包丁が握られていたから。

隣には、母の遺体。

夢なら幸せなのに。どうか数時間前に戻してくれ。

頭の中の整理がつかず、1人で部屋をくるくる回り

必死に考えていた。僕はこの瞬間から人殺しなんだ。

だが、この時の僕は知らなかった。

全てが母の手の内ということを。

これを愛と呼ぶべきか、僕への執着と呼ぶべきか。

僕は永遠に母に囚われ生きるしかないんだ。




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