エドゥアール

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4/20/2024, 8:50:06 AM

もしも未来を見れるなら

ある少女は世界を呪っていました。
なぜなら世界が彼女を呪っていたからです。
世界のありとあらゆる人は火と鉄の武器を持ち、夜闇よりも深き森へと彼女を追い立てました。
深き森は彼女を惑わせる濃霧と闇で翻弄し、木々の隙間で舌なめずりをするフェルトロと呼ばれる猛獣で彼女を怖がらせました。
彼女は必死に、列して追い立てる火から、立ち込める無明から、痩せた獣から、森のあらゆる死から逃げて、逃げて、逃げて。そして、湖に辿り着きました。
飛び込むようにして湖の岸に這いつくばると、月明かりに照らされて水面に自らの顔が映るのです。
なんと醜く滑稽でしょう。なんと哀れで無様でしょう。
きっとこれが劇ならば観客たちは大笑いするでしょう。
凱旋するナポレオンを迎えるように高らかに、首を落とされるマリーアントワネットを待ち望んでたように喝采して。
少女はそれが許せませんでした。
あぁ、もしもこの湖面に映るのが世界の未来であったなら。彼女はそう願いながら、自らの首を持っていたカミソリで切りました。
湖に飛び込んで、涙すらなく、ただ狂奔する怒り、怒涛の憎悪、滂沱の苦しみを孕みながらそこに沈んでいきます。
きっと湖面には火を持ったものどもの未来が映るでしょう。ドス黒く尽きぬことのない血の海。
少女は水底から見たことでしょう。未来で、最後の一人となった人類の末裔が孤独のすえに世界を呪うところを。

4/10/2024, 12:30:13 PM

皮膚の上に硫酸の雨が降りしきって、爛れ模様を描いたような落ち桜。甘く濡れ、踏み潰されたばかりの夢のように敷き詰められている。仰向けに死んだ兵士の焼けて黒い肋骨の間を通って喉仏を越えるんだ。朝の硫酸の雨を浴びて、爛れる肌の上を、黒く焼けた肋骨の間を、僕たち私たちは超えてく。歩け、走れ、オヤジとオカンが追いつけないくらいの速さで。私たちは卒業と入学を超えるたびにそうやって傷ついていくんだ。硫酸と死の山を超えてるんだ。コレからも春が来るたびに押し流されるようにして、散る桜の死を踏み越えていく。
青空、涙、ニヒル、貪る肉体。

4/7/2024, 2:53:15 AM

君が代は千代に八千代に。君が目は十重に八十重にたなびく。日の丸。万歳。

4/5/2024, 2:16:30 PM

一度やってみたかったことがある。それは車の屋根に寝そべって星空を見上げてみること。久々に休みの取れたある日、私は休日を忙しく過ごして充実させることをやめてみたくなった。子供の頃のようにありったけ、目的もなくダラダラしてみたくなった。映画や美術館を周り、同僚に土産話を飲み会でする。私はそんな日常が好きだけれど、休みたい日もあったのだ。ヘッドライトに照らされたヘアピンカーブだらけの山道を登り、誰もいないパーキングエリアに泊まる。エンジンを停止させ、外に出てみると風と自然の匂いが心地いい夜が私に寄り添った。車のフロントガラスに足跡をつけつつ背に乗ってみると意外と狭い。見上げる星空は美しく、深淵、しかし落ちるような感覚はなく包み込まれる安心感があった。3つ並んだ星がある。オリオン座を見つけた。

4/2/2024, 12:10:44 PM

本の影に煌めくもの。ひれあるものとして泳ぎ、天高く、また地の底まで響く。人はその輝きに自らを託し、死して不死身であろうとする。かつてありし日のことをその輝きに照らしてもらう。この世全ての人の手を渡り歩くそれを、人は“文字”と呼ぶ。

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