エドゥアール

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もしも未来を見れるなら

ある少女は世界を呪っていました。
なぜなら世界が彼女を呪っていたからです。
世界のありとあらゆる人は火と鉄の武器を持ち、夜闇よりも深き森へと彼女を追い立てました。
深き森は彼女を惑わせる濃霧と闇で翻弄し、木々の隙間で舌なめずりをするフェルトロと呼ばれる猛獣で彼女を怖がらせました。
彼女は必死に、列して追い立てる火から、立ち込める無明から、痩せた獣から、森のあらゆる死から逃げて、逃げて、逃げて。そして、湖に辿り着きました。
飛び込むようにして湖の岸に這いつくばると、月明かりに照らされて水面に自らの顔が映るのです。
なんと醜く滑稽でしょう。なんと哀れで無様でしょう。
きっとこれが劇ならば観客たちは大笑いするでしょう。
凱旋するナポレオンを迎えるように高らかに、首を落とされるマリーアントワネットを待ち望んでたように喝采して。
少女はそれが許せませんでした。
あぁ、もしもこの湖面に映るのが世界の未来であったなら。彼女はそう願いながら、自らの首を持っていたカミソリで切りました。
湖に飛び込んで、涙すらなく、ただ狂奔する怒り、怒涛の憎悪、滂沱の苦しみを孕みながらそこに沈んでいきます。
きっと湖面には火を持ったものどもの未来が映るでしょう。ドス黒く尽きぬことのない血の海。
少女は水底から見たことでしょう。未来で、最後の一人となった人類の末裔が孤独のすえに世界を呪うところを。

4/20/2024, 8:50:06 AM