美佐野

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4/1/2024, 11:35:50 PM

(二次創作)(エイプリルフール)

 月曜日の朝が来て、私は新しいリサーチフィールドへ移動することにする。伝説のポケモン・ライコウが現れたらしく、この一週間、ワカクサ本島は落雷がひっきりなしに発生していた。無事、ライコウの寝姿はリサーチできたし、何なら2回目遭遇した個体はネロリ博士お手製のライコウサブレをいたく気に入り私たちの仲間になったし、この場所に用事はない。
「次はシアンの砂浜かな。それとも新しく行けるようになったラピスラズリ?」
 落雷の中、リサーチを手伝ってくれた最大の功労者・カメックスの希望を尋ねる。ちょうどその時、ネロリ博士からの通信が入った。
――ねえねえ、ポケモンスリープワールドシップスが行われたんだって、知ってるかい?
「はい?」
 初耳だ。博士によると、カビゴンの周りにどれだけ珍しいポケモンが集まり、知られていない寝姿をリサーチできるかを競う大会らしい。その開催記念にと、サブレや夢の塊などが全リサーチャーに配られているのだとか。
――そうそう、それと、ワカクサ本島のカビゴン、なんだかいつもより大きいみたいだよ?
「そうなんですか」
 私はそうとだけ返して、次なるリサーチフィールドに向かおうと腰を上げる。すると、珍しくも画面の向こうで博士が焦ったようだった。
――えっと、今日はほら、エイプリルフールだから、その、……。
 つまり、私が全部真に受けて大した反応もしないので、戸惑っているらしい。
「知ってます。どうせ全部嘘でしょう」
――ええぇー……。
 博士はどこか不満げだ。私は観念して、博士の相手をしてやることにした。
――そうこなくっちゃ。あのね、嘘なのは1つだけ。世界大会が開かれたってのだけだよ。
 その証拠に、と博士が何か操作すると、こちら側の端末が何かのメッセージを受信した。早速開いてみると、先ほど博士が言っていたアイテムたちが入っているようだ。
「え?」
 実際には開かれていない大会の、記念品だけ存在する。私は妙な状況に、すっかり混乱してしまった。

3/29/2024, 9:29:38 AM

(二次創作)(My Heart)

 ブレアは映画という趣味を共にする友人である。だが彼女の映画の趣味はジャックのそれとは違い、お互いにお互いの気持ちを理解するまでは至らなかった。恋愛映画をよく見るブレアに対し、ジャックにとっての恋愛映画は見ないこともないが優先度が低いもの、という扱いだ。
 入口の呼び鈴が鳴り、ジャックの入店を告げる。ちょうど、プロモントワに出勤しようとしていたブレアを見掛けたジャックは、すれ違い様に切り出した。
「ブレアが前お勧めしてた“My Heart"観たよ。泣いた」
「はあ?」
 ブレアは耳を疑ったけれど、ジャックはさっさと席についてしまった。ブレアも急がないと遅刻してしまうので店を出たが、脳内にはジャックの言葉がぐるぐると回っている。恋愛映画なんて余程他に観るものが無い時にしか選ばないあの男が、ブレアの中で最高傑作と名高い“My Heart”を観て、しかも――泣いた?
(明日は大雨かしら)
 恋愛映画を観る同士が増えたのは良いことだ。ブレアは考えを切り替えた。せっかくなら、初心者にオススメの作品を探してみようか。だが、あまり薦めすぎると却って尻込みするだろうか。
(My Heartがいいなら……)
 傾向の似たものをいろいろと思い浮かべる。と、ブレアは、はた、と思考を止めた。
(え、てかジャック、誰かに片想い中?)
 My Heartは、引っ込み思案な女の子が、男まさりで何でも出来る男まさりな女の子に恋をする映画だ。筋書きこそよくある物語だが、同性どうしの恋のままならなさを緻密に描いた意欲作として、幅広いファンを持つ。
(ジャック、もしかして男の人が好きなのかしら)
「ブレア?」
「ひゃいっ!」
 いつの間にか店に着いていて、ミサキに再三話かけられていたようだ。ぴしゃっと背筋を正したブレアは、そのうちジャックの恋の相手が誰かなんて話を忘れてしまった。

3/27/2024, 10:26:07 AM

(※二次創作)(ないものねだり)

 イリスの髪はさらさらで艶めいていて、とても綺麗だ。だがそれは毎日時間をたっぷりと掛けて手入れをしているから維持できるものだと、牧場主エイジはもう知っていた。
 赤土のオアシスで出会ったこの美しい人を、縁あって自分の牧場に連れてきて季節がひとつ。たくさんの人々に祝福されて、それから、……。
「エイジったら、顔がにやけているわ」
「イリスさんみたいな綺麗な人をお嫁さんにもらえたんだもん、そりゃあ、顔もでっろでろのどっろどろだよ」
「あら、それじゃまるで私の顔にしか用事がないみたい」
「まさか!イリスさんが男でも、僕は青い羽根を渡していたさ」
 イリスは声を出さずに静かに笑う。小さく揺れる肩の代わりに、絹糸のような髪がさらりと揺れた。結婚する前は、ずっと結い上げてあったから、こんなに真っ直ぐで尊いものだとは知らなかった。
 エイジは椅子に腰掛けたイリスの後ろに行く。ひとこと断ってから、既に下処理の済んだ髪をそっと一房手に取る。エイジの役割は、この状態の髪に櫛を滑らせること。そしてゆるい三つ編みにすること。結婚してから始まった、至高の日課だ。
「子供の頃は、この真っ直ぐな髪のこと、嫌いだったわ」
 イリスは話し始める。
「なんで?こんなにいいのに」
 エイジの言葉に、イリスは微笑んだ。
「よくある話よ。ふわふわの髪が羨ましくって。何度か、パーマを試したこともあるけど……上手くいかなくて、結局今のかたちに落ち着いた」
 でも、とイリスは夫を振り向く。
「あなたがこんなに気に入ってくれるなら、よかったわ」
 ちょうどそのとき、三つ編みが終わった。きつすぎず、でも解けない程度に。最初はこれが難しかったのだが、今は慣れたものだ。イリス自身が軽く触れて成果を確かめれば、あとはベッドに入るだけ。
「ああ、幸せだなぁ」
 エイジの本音に、イリスはしっかりと頷いた。

3/23/2024, 10:51:14 PM

(※二次創作)(特別な存在)

 じっくりたっぷり悩んだ末に、牧場主エイジは天を仰いだ。
「ああむり、僕には選べない!!」
 返事を貰いに来た雑貨屋のジャックは、特大のため息を返した。
「選べないって、それじゃあ約束を破るのか?」
 事の発端はこうだ。都会から祖父の牧場の跡地にやってきたエイジは、あっという間に牧場を立て直し、かつ、豪華客船が毎月立ち寄るまで街を発展させた。お昼ご飯までに仕事を終わらせ、昼からは街を歩いては人々と交流し、暮れなずむ時間帯から日付が変わる寸前まで今度は非連続な仕事に戻る。困っている人を放っておけないし、みんなの誕生日や好物を覚えて配って回るし、結果としてエイジは、とてもモテたのだ。
 オリーブタウン中の若者たちと恋人や親友になること、まさかの10股。
 当然、浮気された若者たちは面白くないが、それでも許してしまうぐらいエイジに惚れこんでいる。結果、誰を選んでも恨みっこなしだから、特別な存在をひとり選んでほしいと全員で詰めかけて、エイジにイエスと言わせたのだ。
「約束は破らないけどぉ……」
 エイジはうじうじと言い返す。
「あのね、一人はジャック、君なんだ。でももう一人、同じぐらい好きな人がいるんだ。イリスさんって言うんだけど」
「は?」
 ジャックはここに来て、知らない名前に面食らった。エイジは10股ではなかったのか。よくよく聞くと、エイジの牧場から行ける場所が3か所あり、それぞれ4人ずつ、計12人も恋人や親友がいるのだという。
「に、にじゅうに股……」
「そこから2人に絞ったんだよ、すごくない?」
 エイジは縋るような目でこちらを見ている。その2人のうち1人に選ばれて嬉しいのに、素直に舞い上がれないジャックは困ってしまう。二の句が継げないうちに、エイジは、
「あ!」
と顔を輝かせた。
「いいこと考えた!ジャックと僕とイリスさんの3人で暮らそう!」
「どこが『いいこと』だよこの優柔不断男!!」
 ジャックの声が空に響く。

3/14/2024, 7:12:02 AM

(※二次創作)(ずっと隣で)

 牧場主ユウトは養鶏場のリックと大親友の儀を交わした。
「さあ、今日からここがリックのおうちだからね!」
 ユウトは家の扉を開けると新たに伴侶となった青年を案内する。今日この佳き日を迎えるために、大工のゴッツに建て増ししてもらった自慢の自宅だ。おかげで余剰資金と呼べるものはほぼほぼ失われてしまったが、それがどれだけの意味を持つ?
「リックの荷物はぜーんぶ、運び込んであるからね」
 ユウトは寝室に案内すると、リックのベッドを見せた。
「いやぁ、でも嬉しいなあ。まさかリックと一緒に暮らせる日が来るなんてなあ!」
「…………」
 上機嫌なユウトと対照的に、リックはずっと黙ったままだった。これは大親友の儀の最中からだ。幸い参列者は彼の母と妹ぐらいなもので、誰もそのことに気付かなかった。仕方ない、とユウトは心の中で呟く。この顛末は、恋破れて傷心していた隙に付け込んで、強引にもぎ取ったものだからだ。
 そう、リックが長年片思いしていたカレンにフられたのが、つい2週間前のこと。この千載一遇のチャンスを、初対面でリックに一目惚れしていたユウトがどうして逃がすだろうか。しかも、カレンは単に結婚・恋愛をしたくないからフったわけで、リック本人には何の非もない。付け入らずにいられないだろう。
 そっと寄り添い、慰めながら、僕なら絶対に幸せにできるからと吹き込んだ。毒のように、小さく、しかししつこく、何度も何度も甘い言葉を流し込んだ2週間だった。
「……ほんとに僕でよかったの?」
 長い沈黙を経て、ぽつりとリックが呟く。
「悪いけど、同性相手にキスとかできないし、多分君の望むような伴侶にはなれないと思うけど……」
「ぜんっぜん!気にしないで!」
 ユウトは、リックの手をそっと握った。
「僕はただ、リックに、ずっと僕の隣にいてほしいだけなんだ」
 泣くのも、笑うのも、怒るのも、全部全部隣で見ていたい。それ以上のことは何も望まない。ただリックと一緒に生きられるだけで、望外の幸せなのだから。

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