美佐野

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(二次創作)(My Heart)

 ブレアは映画という趣味を共にする友人である。だが彼女の映画の趣味はジャックのそれとは違い、お互いにお互いの気持ちを理解するまでは至らなかった。恋愛映画をよく見るブレアに対し、ジャックにとっての恋愛映画は見ないこともないが優先度が低いもの、という扱いだ。
 入口の呼び鈴が鳴り、ジャックの入店を告げる。ちょうど、プロモントワに出勤しようとしていたブレアを見掛けたジャックは、すれ違い様に切り出した。
「ブレアが前お勧めしてた“My Heart"観たよ。泣いた」
「はあ?」
 ブレアは耳を疑ったけれど、ジャックはさっさと席についてしまった。ブレアも急がないと遅刻してしまうので店を出たが、脳内にはジャックの言葉がぐるぐると回っている。恋愛映画なんて余程他に観るものが無い時にしか選ばないあの男が、ブレアの中で最高傑作と名高い“My Heart”を観て、しかも――泣いた?
(明日は大雨かしら)
 恋愛映画を観る同士が増えたのは良いことだ。ブレアは考えを切り替えた。せっかくなら、初心者にオススメの作品を探してみようか。だが、あまり薦めすぎると却って尻込みするだろうか。
(My Heartがいいなら……)
 傾向の似たものをいろいろと思い浮かべる。と、ブレアは、はた、と思考を止めた。
(え、てかジャック、誰かに片想い中?)
 My Heartは、引っ込み思案な女の子が、男まさりで何でも出来る男まさりな女の子に恋をする映画だ。筋書きこそよくある物語だが、同性どうしの恋のままならなさを緻密に描いた意欲作として、幅広いファンを持つ。
(ジャック、もしかして男の人が好きなのかしら)
「ブレア?」
「ひゃいっ!」
 いつの間にか店に着いていて、ミサキに再三話かけられていたようだ。ぴしゃっと背筋を正したブレアは、そのうちジャックの恋の相手が誰かなんて話を忘れてしまった。

3/29/2024, 9:29:38 AM