ずんちゃ

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11/13/2023, 11:11:46 AM


「ここでお別れですね…」


目の前には2つの分かれ道。
彼女は右に、わたしは左に。


きっともう二度と会うことはないだろう。
けれど、それを言葉にしてしまうのが怖くて。
言ってしまったら、今まで築いてきた絆さえも消えてしまいそうで。

彼女も同じことを思っていたのだろう。
ぼろぼろと涙を流しながら笑みを浮かべていた。


「いつか、いつかまた、どこかで」

「…っ…は、い…!!また会いましょう…!必ず…!!」


私たちは[さよなら]のかわりに、叶うことのない再会の約束をして、互いの行くべき道へと進んだ。

たとえ二度と会えなくても、どんな困難が立ちはだかっても、きっとこの日交わした言葉に勇気づけられるはずだから。






11/12/2023, 11:10:13 AM


息を殺して、気配を消す。
間違っても相手の視界に入らないように注意しながら跡をつけ、様子を伺っていると脳内に声が響いた。


《この緊張感…スリルがあってたまんないよねぇ!》


同期が固有する力、テレパシーだ。
私は眉間にシワを寄せ、呆れきった表情で同期の顔を見た。


《あのねぇ、スリルを味わうためにやってるんじゃないんだよ?》

《わかってるよう!先輩の謎に包まれたプライベートを知るためだよねっ!彼女とかいるのかな〜?》

「わか…っっ」

わかってねぇだろ!!!と叫びそうになって慌てて口を抑える。
ターゲットに視線をやったが、気付いた様子はない。
ゆっくりと心呼吸をして同期を睨みつけた。


《あのねぇ!プライベートじゃなくて、敵か味方かを見極めるために跡をつけてるの!彼女云々じゃないの!》

《えー!知りたいじゃん!だってイケメンだよ?スパダリだよ?高身長で紳士でハイスペックで皆から慕われてる人気者!!》

《ああいう人種苦手なんだよなぁ…胡散臭いだけじゃん。笑顔の下で絶対人を見下してるんだよ》

《そんなこと言ってぇ!ほんとは気になってるんじゃないのぉ?》

《なってない》

「ムキになってるところが怪しぃ〜!ほらほら正直になりなよ〜!ねー?」

「だーかーらぁ!」

途中からテレパシーではなく、直接声に出して会話していることに私達は気がついていなかった。



「愉快な探偵ごっこはこれで終わりかな?君たち」



かくして、緊張感とスリル漂うはずだった尾行は、はじめからバレていたことと、私達が騒いだことによってあっけなく終了した。



「ぎゃあああーッ!!!なんで空ぁーッ?!」

「ひぃぃいーッ!!!!転移先間違えたぁーッ!!!」


声をかけられたことにびっくりしすぎた私は、とにかくここを離れなければという一心でテレポートを発動させたが、慌てすぎたせいで移動先はまさかの空。
スカイダイビングする羽目になってしまったのだった。

その後、命の危険性を感じてすぐに冷静さを取り戻し、無事に自宅にテレポートできました まる

11/11/2023, 12:47:07 PM


期待に胸を膨らませ、希望の翼を羽ばたかせる人がいるのなら、変化を嫌悪し、進むことを恐れる私が持っているのはきっと飛べない翼なのだろう。


「ねえ、ほんとに受けないの?」

「…うん」

「せっかくのチャンスなのに?」

「…うん」

「そっか、残念だけど仕方ないね。
わたしは受けるつもりだから、しばらくは一緒には帰れなくなっちゃうけど…」

「…うん。応援してる。頑張ってね」


落ちこぼれの私にも優しくしてくれる彼女には本当に申し訳なく思っている。

けれど。

進むことを恐れる私と、進むことを恐れない彼女。
二人の道が分かたれているのは明らかだ。


だからせめて、精一杯応援しようと思う。
私は自分には無理だと諦めてしまったけれど。



11/10/2023, 11:17:40 AM


「秋ですなぁ…」

時刻は夕暮れ。
辺り一帯のススキの草原は、夕日に照らされて赤く色づいている。

「いやぁ、きれいだねぇ」

「黄昏れてるとこ悪いんだけどさぁ」

「うん?」

「ここはどこ?」

「…………………………………ドコダロウネ?」

そう、私達はいま見知らぬ土地にいる。
道に迷ったというわけではなく、気がついたらここにいた。
まるで異世界転移したかのように。

「さっきまで普通に道歩いてたのになんで?」

「気づかないうちに迷い込んじゃっただけかもだよ?ね?」

「気づかないわけないでしょ!さっきまで朝だったじゃん!午前10時!見てみなよこの景色!明らかに夕方じゃん!!」

「とっ、とりあえずさ、ここらへん探検してみようよ!案外すぐもといた道に戻れるかもよ!」

…まかり間違って本当に異世界だったら話は別だけど。

11/9/2023, 11:31:52 AM


脳裏に焼き付いて離れないあの光景。
目を閉じていてもありありと思い出してしまうその光景に、朝から気分は急降下していた。

「どったの?なんかあった?」

「聞くも地獄、語るも地獄な嫌な夢見たんだよぉ」

「えー?なになに?ききたいっ!どんなの?」

「人の話聞いてた?」

「大丈夫大丈夫!!」

「もぉー…」

「ほらはやく!」

「お風呂掃除機してる夢みたんだけどね。
何を思ったか、浴槽を傾かせて裏側を見ようとしたんだよ。そしたら床一面に…(自主規制)が…」

「ギャーー!!!!!やめろぉぉー!!!!!!鳥肌立つわ!!!」

「いやだから聞くも語るも地獄だって言ったじゃん!!!」

「そんなのって思わないじゃん!バカー!!!
うぁぁあ!!!夢に見るぅうう!!!!!」

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