「この世に意味のないことなんてないんだぜ」
うららかな休日の午後。
友人宅でアニメ鑑賞をしている最中、突然そんなことを言い出した。
「なんて?」
「この世に意味のないことなんてないんだぜ」
「いや、もう一回言えって意味じゃなかったんだけど…」
「?」
「いきなりどうしたのってこと」
「ああ!そっち!」
「うん」
「いやぁ…命をかけて戦ってるアニメとかみてると考えさせられるんだよねぇ。こうして穏やかに過ごせる1日1日にも意味があるんだなぁって」
「影響され過ぎでは?」
「その顔はバカにしてるなぁ?!
これだからリア充は!!!!!滅びろリア充!!!!」
「ええっ?!意味ないことじゃん!!!それ‼」
「…いったい何が悪かったのかな…」
夕暮れ時の某カラオケ店。
そこで大量に買ったグッズの開封の儀を行っていた友人は、あらかた開けきったあとでそうぼやいた。
「ねぇ、あなたとわたし同じだったよね…?」
「いや、まあ…うん」
「だったらなんでぇ…?!」
「なんでと言われてもこればっかりはねぇ?」
絶望するのも無理はない。
いくつもバイトを掛け持ちして、一生懸命ためたお金でグッズを購入したのにも関わらず、ひとつとして彼女の推しが出なかったのだ。
かくいう私は購入した半分以上が推しだったというミラクル。
怨まれるのも仕方ない。
「こんなに愛を積んでるのに…!!」
「あー…、たぶんあれだ。
その愛の重さに世界が追いつけてないんだよきっと」
知らんけど。
雨が降っている。優しい、柔らかな雨だ。
ぬくもりさえ感じるその雨は、まるで彼女を優しく包みこんでいるかのよう。
その美しく神秘的な姿に、彼女に声をかけようとした私は息を呑んだ。
2〜3分見続けていただろうか。
ふとこちらを向いた彼女と視線が合った。
「あー!おそーい!!…は、ふぁ、ぶぇっっくしょい‼!!!
だぁー‼くしゃみでた〜!ずびっ…」
「うん。あんたに神秘さを感じた私がバカだった。
感動を返してくれ」
「は?」
光が見えた気がした。
暗闇の中に差す、一筋の光が。
幻かもしれない。もしかしたら何かの罠かもそれない。
でも、それでも僕はその光に向かって必死に走った。
闇に囚われ、気が狂いそうになっていた僕にとって、それは救いの光だったから。
だからどうか…、どうかお願いします。
たどり着いたその瞬間に消えてしまいませんように。
「うーん…うーん…」
「…」
「うーん…えぇえ…?」
「…あのさぁ、さっきから何を一人で唸ってるの?」
眉間にシワを寄せてうんうん唸る僕。
はじめこそスルーされていたものの、10分たった今も続くそれにいい加減嫌気がさしてきたのか、友人が呆れたように聞いてきた。
「いやぁ、あのさぁ」
「おう」
「今日のテーマが【哀愁をそそる】なんだよ」
「テーマ?」
「そう。出されたテーマで文章作るんだけど【哀愁をそそる】ってなに?どこで使うの?誘うじゃだめなの?」
「いや、しらねぇよ」
「ひどッッ!!こっちは一生懸命考えてるのに!!!
もぉおぉ!!【哀愁をそそる】って何なんだよ!!
調べても誘うとか漂うとかしか出てこないんだよぉ!!
誰かー!おつむ弱者の僕に教えてくださーーい!!!」
「やかましい!!!!!」