悠は昔から怖がりだ。ちょっと部屋が暗いくらいで
大袈裟に怯えたり、何も無いところを見て悲鳴を上
げたりする。俺はそんな悠のこと、内心少しバカに
してたんだ。あの時までは。中学1年生の夏、クラ
スのやつらと肝試しに行く事になった。なんでそん
な話になったかって言うと、普段の遊びに飽きてち
ょっと変わったことがしたくなったから。まあこん
なしっかりした理由なんてその時は考えていなかっ
たかもしれない。ただ、夏と言えば肝試しじゃん?
みたいな軽いノリで決まったような気もする。近場
の肝試しスポットと言えば、近所の裏山にあるあま
り使われていないトンネルくらいしかなかったので
行くところは元々決まっていたようなものだろう。
悠はその時話をよく聞いておらず、周りのみんなも
多分言ったら着いてこないから言わないでおこうみ
たいな流れで、その場で悠だけが話の流れについて
行けてなかったように思える。習い事とかで来れな
かったやつを除いて、9人がトンネルに集まった。
もちろん俺と悠も含まれてる。トンネルは先が見え
ないくらい長くて真っ暗だった。トンネルに着いた
時悠は小刻みに震えていてもう泣く寸前だった。俺
はいつもの怖がりかなって簡単に思ってた。「大丈
夫?」って俺が聞くと悠は「大丈夫じゃない!!」
っていつも出さないくらいの大声を出して「なんて
ところに連れて来てくれたんだよ!!真っ黒で目玉
のいっぱい付いたやつがこっちをみてる!!」なん
て言うからトンネルの奥の方をみてみたら、先が長
すぎて見えないから黒いと思ってたトンネルの黒い
部分に目玉が付いてるのを見てしまった。さっきま
では無かった、いや今まで見ない振りをしていた、
わるいものがこの時から、見えるようになってしま
ったのだ。俺は怖がりになった。それこそ悠をバカ
に出来ないくらいにおかしな子になっただろう。何
も無いところで怯えたり、ちょっとの暗闇に震えた
り、だってみえてるんだ。こわくてわるいものが。
【怖がり】
暗がりの空の下、僕と君はどうでもいい話に花を咲
かせる。ふと突然に、何故今言おうと思ったかは分
からないが、僕は君に告白する。多分満天の星の下
で、ロマンティックなムードに呑まれて居たのだろ
う。僕は君に「ずっと前から、君が最初に話しかけ
てくれた時から好きでした。」なんてテンプレのよ
うな告白をした。すると君は目を大きく見開いてか
ら「私も、貴方が私に笑いかけてくれた時から、好
きでした。」と目から星のような涙を溢れさせる。
まるで純愛もののラブストーリーみたいだ。
クラスで端っこの、僕ら。でもその時はモブなんか
じゃなく。確かに僕らが主役だった。
【星が溢れる】
お母さんはいつも忙しそうだった。 お父さんは、
いつも仕事で私に構ってくれた事なんてない。でも
お母さんは違った。毎日仕事が大変だと思うのに、
朝食を作ってくれるし、ちゃんとお話してくれる。
家事だってあって私に構う暇なんてないと思うのに
それでも私に関わる時間を作ってくれる、いい母親
だった。私が一番お世話になった人はお母さんとし
か言いようがない。親孝行がしたいってずっと思っ
てた。でもお母さんは一年前死んでしまった。自殺
だった。うちのマンションの屋上から飛びおりたん
だ。いつもなら閉まってるはずの屋上の鍵は、空い
ていたらしい。ぐちゃぐちゃになった身体。ペンキ
のように真っ赤な血。部活から帰ってきたところだ
った私は、落ちる人影を、母を、いまでも忘れられ
ない。止められなかった事、何にそんなに追い詰め
られていたのか、とか。思うことは沢山ある。でも
ただ一つ、落ちる母の瞳は今までに無いくらい安ら
かな瞳だった。きっと母は解放されたのだろう。自
分を見てくれない夫、山積みの仕事、溜まった家
事、娘のお世話から。
【安らかな瞳】
澪ちゃんは世界一可愛い私の幼なじみ。
バスケでボールを追っている澪ちゃんはカッコイイ
けど新しく買ったキーホルダーを自慢する澪ちゃん
はもっと可愛い。嫌いなとことなんて一個もない。
澪ちゃんの可愛いとこなら、沢山言える。可愛い物
好きなとことか。虫が苦手なとことか。ピーマンが
嫌いなとことか。だって私はずっと隣でみてたから
「なおちゃん!」 澪ちゃんだ。
「どうしたの?澪ちゃん。」澪ちゃんは少し興奮し
た様子でこう言った。「私好きな人が出来たの!」
は? 澪ちゃんに好きな人?
「どういう人?どんなところが好きなの?」私は少
し苛立ちを抑えられず聞いた。
「えっとね~みんなに優しいとことか!どんな時も
真剣に本気でやるとことか?あと〜…」
澪ちゃんは【好きな人】の事を恍惚な表情で語って
いる。あぁ、そんな顔、私には見せてくれた事なん
てなかったのに。ぽっと出のヤツなんかにそんな顔
見せないで。私だけの澪ちゃんでいてよ。
「私、来週先輩に告白してくる!
…早まり過ぎかなぁ?」
「……頑張って。澪ちゃんなら大丈夫だよ。」
「ほんと〜?ありがと!! なおちゃんに相談して、良かった!」
澪ちゃんの嫌いなとこができた。私以外に、みせる
笑顔。私以外に浮かべる表情。私以外にみせる関心
…私の方がずっと隣にいたのにな。あわよくばずっと隣に居たかったのに。
「私じゃない人の隣に行かないで欲しかった。」
【ずっと隣で】
私は絵が好きだ。描くのも好きだし、見るのも好き
だ。でも好きなのと上手いって違う訳で、描いてか
ら一日たって、見返してみたらなんかあんま上手く
ないかもしれないなんて思うことは多かったりす
る。でも、それをどう解消するかが大事なわけで、
そのまま諦めていい訳じゃない。なんか違うと思っ
たら構図やポーズを見直して、他の人を参考にでき
る限り変えてみる。勉強や掃除は嫌いだけど、絵は
好きだしもっと知りたい、上手くなりたいって思う
まあ少し直したら面倒くさくなって未来の自分に丸
投げすることの方が多いけどね。
【もっと知りたい】