優しさ(オリジナル)
私は会社で「優しい人」と言われている。
困っている人がいれば積極的に声をかけ、手伝う。
場合によっては仕事を引き取る。
皆がやりたがらない、誰も手をつけない仕事もやるし、用事があるのに仕事が終わらない人の仕事も進んで引き受ける。
効率化のために専用の入力シートをつくり、パソコンが弱い人をよく手助けする。
よく気がつくとも言われ、雑用関連は「気づいた人がやる」形式だったので、ほぼ全て私がやっていた。
皆には感謝され、優しいね、と言われていた。
そろそろかな、と思ったので、急に辞めてやった。
少しして風の噂で、社内が崩壊していると聞いた。
雑用を押しつけあい、手伝わない助けない仕事ができないお互いを罵り合い、壊れた入力シートを直せる人もおらず、ストレスMAXで毎日イライラしているという。
爽快である。
優しさとは。
ミッドナイト(914.6)
横文字が苦手である。
英語が苦手なので必然的にそうなる。
ミッドナイトも「真夜中」でええやんと思う。
しかし、ファンタジー世界では人の名前が外国語の単語だったり、そういうのには抵抗がない。
むしろ私もそういうのを参考にしてた。
また、外国の人が日本土産のTシャツで、たまに「その言葉?!」という日本語を着ているのも好きだ。
昔、肩のところに「便所」と書かれたシャツを着ている人がいて、ネタなのか、知らないで着てるのかわからなくて、本当に面白かった。
言葉がたくさんあるって良い事だ。
安心と不安(914.6)
世の中物騒になってきた。
逮捕されても刑期が短くてすぐに出てきてしまう。あるいはストーカーのように警察の抑止が難しい犯罪もある。
世界では性犯罪者にGPSを義務付けて、アプリで近くにいるかどうか確認できる国もあるという。
なので、常習性があったり、再犯多かったり、凶悪な犯罪を犯した人間にはそのくらいして欲しい。
自衛手段が欲しい。
とはいえ、初犯は避けられない。
それに、GPSを外したり狂わせたりして再犯しそう。
それと、例えば、窃盗、強盗、オレオレ詐欺、口座売買、ロマンス詐欺、投資金詐欺、暴行(いじめ)なども対象に含めると、おそらくGPS反応が至る所に現れて、外を歩くのが怖くなるだろう。
安心するか、不安になるか。
難しい問題である。
逆光(オリジナル)
いつも俺を助けてくれた先輩がいる。
ヒーロー活動をする上で、心構えや在り方を教えてくれた尊敬する先輩だ。
眩しい光の人。
正義と愛とエネルギーに溢れていた。
俺が苦しい時、伸びずに挫けそうになった時、支えてくれたのは、彼の言葉であり態度であり存在だった。
彼のようになりたかった。
彼の背中を追いかけた。
そうやってがむしゃらにやっていくうちに、実力もつき、世間に認められ、認知され、俺はヒーローランキングを駆け上がった。
呼ばれる事が増え、毎日が忙しくなり、初心を忘れそうになっていた。
そんな時に舞い込んできた、連続窃盗犯の確保依頼。
犯人を追いつめ、覆面を剥ぎ取って正体を知った俺は愕然とした。
「そんな…嘘だろ」
俺が尊敬してやまない、先輩だった。
「スパイ活動でもしてたんですか?」
震える声で問うも、彼は無言だった。
「あ、悪い奴を懲らしめてたんですね。義賊的な」
俺の手は震えていた。
「なぁ、何とか言ってくださいよ…先輩」
俺は涙ながらに訴えかけた。
先輩は力ずくで俺の手を振り払い、飛び退って距離を取った。
俺と反比例するように、彼の人気が降下しているのは知っていた。しかし俺にとっては変わらず、目標であり、偉大で大好きな先輩だったのに。
先輩は腹の底から絞り出すように、小声で呟いた。
「…お前にはわからないさ。どうあがいても報われず、世の中から必要とされなくなる者の気持ちなんて…」
「先輩…」
「お前は偉いよ。頑張ったな。これからも頑張れよ」
逆光で、その表情は見えなかった。
歪んだ笑みを浮かべていたのか、昔のように優しく微笑んでいたのか。
そして、彼は高いビルの屋上から飛んだ。
飛べもしないのに。
「先輩!!」
落ちて行く彼を、助ける事はできなかった。
こんな夢を見た(オリジナル)
夢オチエンドほど興醒めな事はない。
7年ほど週刊誌で連載していた漫画作品だった。
独特の世界観で、魅力的なキャラがいて、格好良い敵がいて、印象的な戦いがあった。
手に汗握って、泣いて笑っていたのに。
まさかの夢オチ。
創造の産物なので、実在しない事などハナから承知のはずなのに、なぜ夢オチエンドが許せないのだろう。
実体を持った人物としての想像が、とたんに二次元の紙っぺらに感じてしまうからだろうか。
それとも、ただの他人の夢妄想だった事実を突きつけられて冷める(覚める?)のだろうか。
とにかく、僕はひどくガッカリした。
雑誌を閉じて、本棚に羅列した単行本に目を向ける。
お気に入りの巻を取り出してペラペラとめくってみたが、ワクワクはもう取り戻せなかった。
(売るか)
目を閉じて、漫画をパタンと閉じた。
目を開けると、目の前に天井が見えた。
(?!)
困惑して身を起こす。
そう、僕は布団に横になっていた。
サラサラした手触りの布団を手に、僕は唖然とした。
(まさか、夢オチの夢?)
漫画雑誌を確認しようと周囲を見回して、自宅の自分の部屋でない事に気づく。
「ここ…どこ?」
その声に応えるようなタイミングで、部屋のドアが開いた。
「よう、目が覚めたか」
「!!??」
今さっきまで読んでいた漫画の主人公の友人の敵ポジションのキャラがいた。実は一番好きなキャラだ。
絵柄が独特の漫画だったけれど、目の前の人はちゃんと三次元で成立していて、そのキャラだとわかる造形をしていた。
(なんで?!)
頬をつねってみたが、痛い。
(夢じゃない?!)
「オイオイ、何つねってんだ。面白いな」
彼は途中で死ぬキャラなので、時間軸は最終回よりだいぶ前のようだった。
(もしや、生存ルートありか?!そのための異世界転生?!なんかそんなアニメ見た気がするな?!)
僕は密かにガッツポーズをした。
(燃えてきたぁ!)