初恋の日(914.6)
恋多き幼少期でした。
どれが初恋だろうか。
幼稚園の時、スカートめくりをしてくる男子が気になっていた。
スカートをめくられるかもというドキドキを勘違いしていた可能性あり。
小学校4年生の時は複数人同時に好きだった。
優しくて大人しい男子。
足が早くてクラスの人気者男子。
喧嘩をふっかけてくるけど負けてくれる男子。
私は浮気者だった。
彼らが自分をどう思っていたか全く不明であるが、人生で最も恋バナで盛り上がっていた時代だった。
ピーク早すぎやろ。
中学校では何もなし。
自分、厨二病を発症し、オタク化する。
高校ではクラスの人気者男子が若干気になるも、何もアクションせず。
大学ではバイト先の背の高い男子。
この頃には男性への耐性がなくなっており、二人きりの緊張が吊り橋効果(以下略)。
社会人でお付き合いもしたけれど、もはや「初」恋ではあるまい。
初恋の日がわかる人は羨ましいなぁ。
良い思い出なのでしょうね。
明日世界が終わるなら…(914.6)
…がとてもオタクっぽくて良い(笑)
もしも、明日世界が終わるとわかっていたら。
もはやジタバタしても遅いし、どう足掻いても全員同じ運命を辿るなら、家族で最後の晩餐をするかな。
美味しいものか好きなものを食べて、これまで楽しかったねって話す。
でも、どうだろう。痛いのは嫌だから終わり方がどういうものかにもよるかも。
痛いのと怖いのは嫌だから、そういう最後なら意識をなくせるよう睡眠薬とか、何かに頼ろうとするかも。
足掻いて助かる可能性があったらパニックになるかもなぁ。
ノストラダムスの大予言の時に色々シミュレートした世代だからか、年齢がいっているからか、昔、若い頃は最後になるならあれもこれもやりたいと思っていたけれど、今は特にやりたい事もないなぁ。
まぁ、人間が滅んでも、世界は続いていくと思う。
世界の終わりは生物が死に絶えて観測者がいなくなるか、時空が歪んでブラックホールなりに飲み込まれて無になるか、時間がとまる事だと思うから。
まぁ、ないと思う。
君と出逢って、(オリジナル)
世界には、自分と同じ顔の人間が3人いるという。
僕はまさしく、その人と出逢った。
全くの偶然だった。
街を歩いていて、向こうから歩いてきたのが彼だった。
最初、鏡を見ているのかと思った。
しかし、服装は違っているので違うと気づく。
次に、生き別れの双子でもいただろうか、と思う。
しかし、取得したことのある戸籍にはそのような記述はなかったと思い出す。
驚いている僕に気づいたのか、彼と目が合った。
お互いに、あっ、という声が出る。
顔以外に、背格好も、髪型も、空気感も似ていた。
世界には不思議な事があるものだ。
僕はあまり運命とか非科学的な事を信じるたちではなかったけれど、この一瞬の奇跡の邂逅によって、全く信じる立場に宗旨替えする羽目になった。
というのも、彼と目が合った瞬間、暴走した車が車道に乗り上げ、彼が跳ね飛ばされたからである。
ドッペルゲンガーを見た者は死ぬという。
(僕がドッペルゲンガーだったのか)
世界がひっくり返るほどの衝撃だった。
けれど、生き残る側であった事は幸いだった。
救急車とパトカーのサイレンが鳴り響くなか、僕はヨロヨロとその場を後にしたのだった。
耳を澄ますと(オリジナル)
私はパチリと目を開けた。
いや、正確にはついに覚醒したと言うべきか。
のそりと身体を起こす。
四つ足で立ち、アスファルトの地面を歩いた。
視界が人より低い位置にある。
そう、私は猫に転生していた。
何でだろう。いつの間に死んだのだろうか。
この猫の身体は何歳なのだろう。
四つ足で歩く事に違和感ないくらいには馴染んでいる。
私はキョロキョロと周囲を観察した。
どうやら人であった頃に住んでいた町のようだった。
見覚えのある風景が続いている。
水たまりに映る自分の姿。
それは、茶色い毛並みの、幼い猫の姿であった。
飼い猫なのか野良猫なのか捨てられたのか。
人として覚醒してしまったせいか、その辺りがどうにも曖昧だ。
車や自転車に轢かれないよう、慎重に歩く。
耳を澄ますと、人より遥かに優れた耳が、聞き覚えのある声を捉えた。
(翔太!!)
私は夢中になって、声の方に駆けた。
子猫ゆえにヨタヨタ走りになってしまったけれど。
体力的にもかなりキツイ。
お腹も空いている。
けれど。
曲がり角を曲がると、小さな公園に、恋人だった翔太の姿があった。
男友達の孝四郎と一緒にベンチに座っている。
(翔太!!)
私は泣きべそをかきながら彼に駆け寄った。
良かった。元気そうだ。
実際何年ぶりなのだろう。
年齢は記憶にあるものとそう変わりはなさそうだった。
私は彼の膝に縋りつき、爪をたて、必死に話しかけた。
(翔太!久しぶり?元気してた?私だよ!亜澄だよ!)
けれど、口から飛び出すのは当然ながら、
「うにゃにゃにゃあ!にゃ〜ん!うにゃうにゃー!」
というものだった。悲しい。
「おい、どうした?この猫、お前の猫か?」
孝四郎が、私を覗き込んでくる。
翔太は困惑した顔をして、首を横に振った。
「いや。全然知らない猫だ。でも可愛いな。へへ」
翔太は、しがみつく私の頭をヨシヨシと撫で回した。
「すっげー懐いてんな?ウニャウニャ言ってるけど、何言ってんだろ」
「全然わかんないけど、なんか必死で話しかけてくれてんな。こんなに懐かれたの初めてだよ。猫って可愛いんだな」
そうでしょう、そうでしょうとも。私だしね。
私はにっこり微笑んだ。
翔太は私を両手で抱え上げた。
私は素直に爪を引っ込めて、身を委ねる。
「でもな〜。今の物件、生き物不可なんだよなぁ」
私はギクリと身を震わせた。
私たちが同棲していたこの近所のアパート。
(確かに!!ペット不可だった!!)
嘘でしょ。翔太にまた会えたのに、一緒にいられないの?!
私は絶望のあまり、泣き出してしまった。
「あ。なんかまた泣き出したぞ。可愛いなぁ」
孝四郎が私の頭を撫でにきたが、気がたっていたので、気安く触るなとバシリと叩く。
「あっ、こいつ!俺には塩対応だ!」
「うーん、あそこを出るわけにもいかないしなぁ」
翔太は私を地面に置くと、
「ごめんね。飼ってあげられないんだ。他の人を探して、ね?」
と言った。
困る。
非常に困る。
このままだと餓死する。
私はそれこそ命の危機を感じ、力一杯彼の足にしがみついた。
(もう絶対離れない!駄目!翔太以外無理!お願い!家は引っ越していいから私と生きて!ねぇ!)
私はにゃんにゃんと泣き喚いた。
決して猫語が通じた訳ではあるまいが、彼はため息をつくと、
「しょうがないなあ。お前、アパート着いたら静かにできるか?」
「おい、翔太」
「いや、なんかこいつ、必死で可哀想になってきちゃって」
私はブンブンと頭を縦に振った。
「……なんか人間臭いなこいつ。言ってる事理解してないか?」
「もともと飼い猫なのかなぁ?まぁ、しばらく大家さんには秘密で飼ってみるよ。亜澄がいなくなって、ちょっと寂しいところだったからさ」
「……そっか」
孝四郎が安堵したように、優しく微笑んだ。
私がいなくなってから、彼を支えてくれていたのかも。
さっきは叩いて悪かったな。
私は彼の方を向いて、ぺこりと頭を下げた。
私が態度を軟化させたのがわかったのか、孝四郎は恐る恐る手を伸ばしてきた。
お詫びに、好きに撫でまわさせてやった。
猫好きの、慣れた手つきだった。
心地良くて、喉がゴロゴロ鳴る。
「えへへ、可愛いな。俺も協力する」
「ありがと」
(ありがとー!)
私はにゃーんと泣いた。
楽しい日々が始まる予感がした。
二人だけの秘密(オリジナル)
「あなたにだけは教えておくね」
明日には妻になる彼女が、真剣な目をしてそう言った。
彼女は両親とも他界しており、親類縁者とも疎遠。
天涯孤独の身の上だった。
人生ハードモードだろうに、真面目に、健気に、一生懸命に働く姿に好感を持った。
案外古風な彼女は結婚までは決して身体を許してくれず、それもついに明日の入籍で解禁となるわけなのだが。
それに関して、何か私に言っておく事があるのかもしれない。
私は居住まいを正した。
「実は私、身体に大きな欠陥があって」
私は予測していた事もあり、大きく頷いた。
「どんな君でも愛しているよ」
「…ありがとう。でも、たぶんびっくりしちゃうと思うから、先に少し見せておくね」
そう言って、彼女はそっとパジャマをめくった。
その下の、下着のシャツの部分もたくしあげて、お腹が見える。
はずだった。
「は?」
お腹があるはずの場所に、大きな穴が空いていた。
それこそ、生きていられるはずもない、大きな穴が。
骨はどこに?
内臓もどこだ?
彼女はいったい?
私は恐る恐る手を伸ばした。
穴は手品でも夢でもなく本当に穴で、後ろのシャツに手が触れた。
至近距離に、彼女の顔がある。
彼女は恥ずかしそうに、はにかんでいた。
「えへへ、二人だけの秘密、だよ」
約束を破ったら、私の両親みたいになるからね。
その言葉は幻聴だと思いたい。
私はそのまま気を失った。