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1/24/2026, 10:33:29 AM

逆光(オリジナル)

いつも俺を助けてくれた先輩がいる。
ヒーロー活動をする上で、心構えや在り方を教えてくれた尊敬する先輩だ。
眩しい光の人。
正義と愛とエネルギーに溢れていた。
俺が苦しい時、伸びずに挫けそうになった時、支えてくれたのは、彼の言葉であり態度であり存在だった。
彼のようになりたかった。
彼の背中を追いかけた。
そうやってがむしゃらにやっていくうちに、実力もつき、世間に認められ、認知され、俺はヒーローランキングを駆け上がった。
呼ばれる事が増え、毎日が忙しくなり、初心を忘れそうになっていた。
そんな時に舞い込んできた、連続窃盗犯の確保依頼。
犯人を追いつめ、覆面を剥ぎ取って正体を知った俺は愕然とした。
「そんな…嘘だろ」
俺が尊敬してやまない、先輩だった。
「スパイ活動でもしてたんですか?」
震える声で問うも、彼は無言だった。
「あ、悪い奴を懲らしめてたんですね。義賊的な」
俺の手は震えていた。
「なぁ、何とか言ってくださいよ…先輩」
俺は涙ながらに訴えかけた。
先輩は力ずくで俺の手を振り払い、飛び退って距離を取った。
俺と反比例するように、彼の人気が降下しているのは知っていた。しかし俺にとっては変わらず、目標であり、偉大で大好きな先輩だったのに。
先輩は腹の底から絞り出すように、小声で呟いた。
「…お前にはわからないさ。どうあがいても報われず、世の中から必要とされなくなる者の気持ちなんて…」
「先輩…」
「お前は偉いよ。頑張ったな。これからも頑張れよ」
逆光で、その表情は見えなかった。
歪んだ笑みを浮かべていたのか、昔のように優しく微笑んでいたのか。
そして、彼は高いビルの屋上から飛んだ。
飛べもしないのに。
「先輩!!」
落ちて行く彼を、助ける事はできなかった。

1/23/2026, 12:13:21 PM

こんな夢を見た(オリジナル)

夢オチエンドほど興醒めな事はない。

7年ほど週刊誌で連載していた漫画作品だった。
独特の世界観で、魅力的なキャラがいて、格好良い敵がいて、印象的な戦いがあった。
手に汗握って、泣いて笑っていたのに。
まさかの夢オチ。

創造の産物なので、実在しない事などハナから承知のはずなのに、なぜ夢オチエンドが許せないのだろう。
実体を持った人物としての想像が、とたんに二次元の紙っぺらに感じてしまうからだろうか。
それとも、ただの他人の夢妄想だった事実を突きつけられて冷める(覚める?)のだろうか。

とにかく、僕はひどくガッカリした。
雑誌を閉じて、本棚に羅列した単行本に目を向ける。
お気に入りの巻を取り出してペラペラとめくってみたが、ワクワクはもう取り戻せなかった。
(売るか)
目を閉じて、漫画をパタンと閉じた。

目を開けると、目の前に天井が見えた。
(?!)
困惑して身を起こす。
そう、僕は布団に横になっていた。
サラサラした手触りの布団を手に、僕は唖然とした。
(まさか、夢オチの夢?)
漫画雑誌を確認しようと周囲を見回して、自宅の自分の部屋でない事に気づく。
「ここ…どこ?」
その声に応えるようなタイミングで、部屋のドアが開いた。
「よう、目が覚めたか」
「!!??」
今さっきまで読んでいた漫画の主人公の友人の敵ポジションのキャラがいた。実は一番好きなキャラだ。
絵柄が独特の漫画だったけれど、目の前の人はちゃんと三次元で成立していて、そのキャラだとわかる造形をしていた。
(なんで?!)
頬をつねってみたが、痛い。
(夢じゃない?!)
「オイオイ、何つねってんだ。面白いな」
彼は途中で死ぬキャラなので、時間軸は最終回よりだいぶ前のようだった。
(もしや、生存ルートありか?!そのための異世界転生?!なんかそんなアニメ見た気がするな?!)
僕は密かにガッツポーズをした。
(燃えてきたぁ!)

1/22/2026, 11:30:13 AM

タイムマシーン(オリジナル)

タイムマシーンを発明した。
皆には秘密だ。
しかも、車に乗る感覚で手軽に使える。
我ながら天才だ。
ただし、未来には行けない。
あくまで行き来できるのは、過去と現在だけだ。

タイムマシーンを夢想する誰もが考えるように、賭け事には本当に有用で、開発費用もすぐに回収できた。
人生の選択肢を誤って過去に戻った時など、たまに、新たな選択肢が本当に良かったのか、検証のため、その時間軸に長めに残る事もある。
とはいえ、各1回のやり直しで、概ね順調だった。
過去を過ごしていて、たまに現在軸を超えてしまう事もあったが、結局はそれも過去になるため、やり直しはいくらでもきく。

やがて、賭け事に勝つ勝負師として有名になった。
そして、SNSやテレビで「老け顔」と指摘されて初めて気がついた。
過去に戻る自分の年齢が、巻き戻っていない事を。
元の時間軸に戻った時、過去で過ごした時間分、歳をとっていたのだ。
小中学生まで戻ろうとした事がなかったので気づかなかったが、当たり前といえば当たり前である。
あまりに手軽すぎて、巻き戻ししすぎていた。
生誕年から算出すると実際は40歳なのだが、見た目と身体は50歳になっていた。
このままでは早死にしてしまう。
けれど、この便利さを手放したくはない。

結局、未来の世界を見る事よりも、過去と現在を選んだのであった。

1/21/2026, 11:51:31 AM

特別な夜(914.6)

夜遊びをした事がない。
正確にはオールをした事がない。
学生時代、ちょっとした反抗期に、親の過干渉に嫌気がさして、わざと終電を逃してみた事がある。
友達が家に泊めてくれたのだが、ご実家だったし、兄弟のお布団だったし、ものすごく申し訳なくて。
事後も、お礼の電話やお菓子とか、色々気を使って、大変すぎて、二度とやらないと誓ったのであった。
結局、今となっても夜遊びの経験はなく、これとても決してオールの経験ではないが、教訓として、この日は特別な夜となったのだった。

1/20/2026, 1:34:22 PM

海の底(オリジナル)

彼氏と水族館デートに来ていた。
ペンギンの解説を読み、一夫一婦制に、
「仲良しだね」
と笑いかけたら、
「ペンギンも人と同じで浮気するよ」
と言われ、
イワシの群れに、
「スイミーみたい」
と言ったら、
「食べられる魚は美味しそうとしか思えない」
と言われ、
水槽をくり抜いたような海遊回廊では、まるで水の中にいるような青くキラキラした風景に感動して、
「まるで海の底にいるみたい!」
と言ったら、
「水深によるけど、本当に海の底にいたら俺たち水圧でペシャンコだよ」
と言われ。
感性や感想が全く一致しなくて面白かった。

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