My Heart (オリジナル)(異世界ファンタジー)
人は誰しも善悪を併せ持つ。
いくら外面が良くても、裏には色々あるに違いない。
そう思って生きてきた。なのに。
「ヨウはさ、ライのどこが嫌い?」
「えっ!?急に悪口?どうしたの?」
ヨウは驚きつつ、きちんと考えて答えてくれた。
「嫌いなところ…うーん…あ!隠し事しがちなところかな」
「確かに」
ライは我々にも関係あるような大きな問題を、黙って一人で解決しがちだ。
それは、優しさの裏返しでもあるのだけれど。
「あいつ、外面良いじゃん?大勢に好かれてるし。あまりに人が良すぎて、本当にあれが本性なのか疑わしく思ってさ。怒ってるのとか見た事ないし」
「そうなんだ?」
ヨウは楽しそうにクスクスと笑った。
「大事なものを傷つけられたりしたら、すごく怒るよ。声のトーンに出てる」
「え?ヨウはライが怒ってるのに遭遇した事あるの?」
「…リンクもその場にいたよ?」
「え?嘘!」
どうやら己の感受性が鈍いだけだったらしい。
リンクは脱力して、
「よくわからん」
と、机に突っ伏した。
「人間、皆、汚いところも卑怯なところもたくさんあると思うわけ。でもあいつ、こっちをコンプレックスの塊にするくらいの出来た人間じゃん?ずるくない?」
「リンクに殴られても嬉しそうだもんね」
「そう!それ!」
リンクは吠えた。
「普通殴られたら嫌だろ?!嫌いになるだろ?!なんで嬉しそうなんだよあいつ。マゾか?!」
ヨウは声をあげて笑った。
「リンク、あばたもえくぼ、って知ってます?」
「知ってる、けど…」
そう答えながら、リンクは衝撃に頭を割られていた。
(え、それって、ライが好きだから何でも良く見えてるって事?!)
頭に血が昇ってくる。
それは、羞恥からか、怒りからか。
私の本心はどこにあるのだろう。
頭をグルグル悩ませていると、噂をすればのライ本人が通りかかった。
二人を見つけて嬉しそうに手を振り、満面の笑みで走り寄ってくる。
「あ、リンク!どうしたんですか?顔赤いですけど。熱でも?大丈夫ですか?」
ライは心底心配そうに、リンクの顔を覗き込みながら、綺麗な手を額に伸ばしてくる。
「デリカシー!!!」
「ええーっ?!」
照れ隠しの拳が飛び、直撃したライは笑顔のまま、数メートル後方に吹っ飛んでいった。
ないものねだり(オリジナル)(異世界ファンタジー)
ライは人たらしだ。
明日は闘技場で敵になるかもしれないキメラに、恐れも気後れもなく、話しかけにいく。
瞳をキラキラさせて。
「あの、その3つの頭って、視界はどうなってるんですか?身体の主導権とか混乱しません?」
キメラとしての弱点を知られるわけにはいかないので、だいたい皆無視するのだが。
「ご飯はどなたの口から?喧嘩になったりしないんですか?脳が別なら兄弟と常に一緒にいる感じですかね?良いなぁ。私にも複数頭をつけられないかなぁ」
などと、怖い事を平気で言う。
怖いのは、こっちを見て言うからである。
私とレッジの首を取ってつける想像をしている。
本人は至って本気である。たぶん。
やめていただきたい。
そんな不穏な空気に気圧されて、
「そんなに便利なもんでもないぞ」
「ご飯はそれぞれ。手が一対だから歯磨きも大変」
「頭より手が複数ある方が良いよな」
三ツ首が、つい、と言ったふうに話し出す。
ライは楽しそうに話を聞き、寄り添い、雑談しながら、敵である彼らの特性にあった上手い戦闘方法を考えて助言してあげたりするのであった。
キメラは基本異形だ。
生理的に嫌悪感を抱く見た目の者もいる。
それでなぜ生きていられるのかという姿もある。
コンプレックスから怒りの塊となっている彼らにも、ライは無邪気に突撃し、懐柔してしまう。
「絶対皆が恐怖する姿なんて、戦闘時に仲間だったら心強くてしょうがないじゃないですか。格好良いなぁ」
うっとりしながら、そんな事を言う。
「私もそんな風になれるかなぁ」
ライは大変見目麗しい青年だ。
なので「格好良い」が嫌味にしか聞こえない。
しかし、彼にとっては本心で。
ここで止めないと、本当にグシャグシャにされて喜びかねない。
リンクはキメラから遠ざけるために、ライの首元をぐいと引いた。
「ぐぇ、リンク、く、苦しい」
「阿呆か貴様。普通、一般的に、お前の方が羨ましい容姿してるからな?!嫌味にしか聞こえないからな!」
「え、絶対彼の方が格好良いですよ!!ん?私、容姿良いですか?」
ライの美醜感覚は一般からかけ離れているようだった。
リンクは呆れる。
「むしろ容姿しかないだろ」
「ありがとうございます」
何でお礼。
しかも、ちょっと寂しそう。
ライは異形のキメラ達を見回して、愛おしそうに、
「結局、ないものねだりなんですよね…自分が持っていないから。羨ましくて仕方ないんです」
と呟いた。
まぁ確かに、と、リンクは納得する。
強さという意味では、彼には何もなさそうだったので。
「ライは結局、どうなりたいんだ?」
「そうですね…とにかく強くて、皆様のお役に立てる人になりたいです」
「ホント…ないものねだり…」
「あ、ひどいリンク。叶わないって思ってますね?」
「うん。まぁ、頑張れ。…筋トレするか?」
「します!」
喜びに顔を輝かせたライであったが、リンクが普段使いしている斧を微塵も持ち上げられず、筋トレは即終了したのであった。
好きじゃないのに(オリジナル)
「残業好きじゃないのにありがとね」
上司が、社内の自販機で買ってきた紅茶を差し出し、申し訳なさそうに言ってきた。
「はい。まぁ、今日は予定なかったので大丈夫です」
私は紅茶好き。ゆえにこだわりがあって、ペットボトルの甘い紅茶は私的にナシなのであるが。上司のお気持ちを無碍にするのも可哀想なので受け取って差し上げた。私、優しい。
「そっかー」
上司は安心したように笑った。
私は毎日定時に帰っている。それゆえ残業嫌いだと思われているのだが、別に嫌いではない。もちろん好き好んでやるものではないが、上司の指示で、相応のお給金をいただけるのであれば、用がない限り残業も悪くないとは思っている。ただ、時間内に収めるのがプロだと思って、頑張って実践しているだけだ。
上司も仕事が残っているので自席に戻る。
その後ろ姿を目で追って、私はにんまりと笑った。
上司は丸々としていて、全くもってイケていないのであるが、後ろ姿がむっちりポテポテしていて、なぜか癒される私なのであった。
(正面はホント、好きじゃないんだけどなぁ)
失礼である。が、心の中で思ってるだけなので許して欲しい。
ところにより雨(オリジナル)
家を買いたいと思っている。
なので、街を歩くたび、人の住まう家に目がいった。
ここはどんな人が何人で住んでいるのだろうか。
この辺は何がウリで、何がデメリットだろう。
スーパーが近い方が良いか、学校が近い方が良いか。
騒音はどうか。隣人はどうか。
今日は友人と街を歩いていた。
彼は私が家を買いたい事を知っているので、話題は自然と家の話になった。
「高層ビルはどうよ」
「オール電化は災害時に心配だなぁ」
「一軒家は?」
「庭の手入れとか面倒そう」
「庭ない方が良いん?前に野菜栽培したいとか言ってなかった?」
「そう。だからベランダで育てたい」
「じゃあアパートかねぇ」
家々を眺めながらそんな話をしていた矢先、突然、バシャリと何かが頭に降ってきた。
「へ?」
メガネが水滴で汚れ、突然の雨かと空を見上げると、晴天だった。
続けて視線を友人に向けると、彼は全く濡れていない。
彼は唖然とした表情で私を見ていたが、濡れ鼠の私を見て、プッと吹き出した。
どうやらアパートの側を歩きすぎたらしい。
真上を見ると、私の理想のベランダつきアパートで、植物を育てているベランダからニョキニョキ緑がはみ出して見えた。
部屋の住人が雑にジョウロで水やりしたのだろう。
勢い余って外まで飛んできて、真下にいた私に降ってきたという塩梅のようであった。
なんというジャストタイミングか。
「わははは!」
「まぁ、鳥のフンよりは良いが…」
私はハンカチで頭や肩を拭きながら上を向いて犯人を探したが、ごめんの言葉も降ってこなければ、下を伺う顔もなかった。
ここは、ところにより雨のリスクあり。
心に刻むのであった。
それ以来、外を歩く時は建物から離れるようにしている。
特別な存在(914.6)
宇宙
時間
地球
神
天皇陛下
富士山
家族
推し
自分
自分がいないとそもそも色々と認識できないので。
私の世界は私の感じ方でしかないので。
特別には、有形無形、様々ありますな。