逆光(オリジナル)
いつも俺を助けてくれた先輩がいる。
ヒーロー活動をする上で、心構えや在り方を教えてくれた尊敬する先輩だ。
眩しい光の人。
正義と愛とエネルギーに溢れていた。
俺が苦しい時、伸びずに挫けそうになった時、支えてくれたのは、彼の言葉であり態度であり存在だった。
彼のようになりたかった。
彼の背中を追いかけた。
そうやってがむしゃらにやっていくうちに、実力もつき、世間に認められ、認知され、俺はヒーローランキングを駆け上がった。
呼ばれる事が増え、毎日が忙しくなり、初心を忘れそうになっていた。
そんな時に舞い込んできた、連続窃盗犯の確保依頼。
犯人を追いつめ、覆面を剥ぎ取って正体を知った俺は愕然とした。
「そんな…嘘だろ」
俺が尊敬してやまない、先輩だった。
「スパイ活動でもしてたんですか?」
震える声で問うも、彼は無言だった。
「あ、悪い奴を懲らしめてたんですね。義賊的な」
俺の手は震えていた。
「なぁ、何とか言ってくださいよ…先輩」
俺は涙ながらに訴えかけた。
先輩は力ずくで俺の手を振り払い、飛び退って距離を取った。
俺と反比例するように、彼の人気が降下しているのは知っていた。しかし俺にとっては変わらず、目標であり、偉大で大好きな先輩だったのに。
先輩は腹の底から絞り出すように、小声で呟いた。
「…お前にはわからないさ。どうあがいても報われず、世の中から必要とされなくなる者の気持ちなんて…」
「先輩…」
「お前は偉いよ。頑張ったな。これからも頑張れよ」
逆光で、その表情は見えなかった。
歪んだ笑みを浮かべていたのか、昔のように優しく微笑んでいたのか。
そして、彼は高いビルの屋上から飛んだ。
飛べもしないのに。
「先輩!!」
落ちて行く彼を、助ける事はできなかった。
1/24/2026, 10:33:29 AM