光と影(914.6)
ロードス島戦記の「宿命の魔術師」というカセットブックをご存知の方、いらっしゃいますでしょうか。
私はこれが大好きで、カセットからMD、その後ウォークマンに落として、いまだに聞けるようにしてあるくらいなのですが。
(年齢がバレる)
ロードス島戦記の外伝的なもので、主人公パーティにいる天才魔術師のスレインが、旧友の招きに応じて出かけたところ、罠に嵌められて、というお話。
ネタバレであらすじを全部言ってしまうと、ナウシカで言うところの巨神兵のようなものを封じ込めた壺に閉じ込められ、出る方法はあるが、巨神兵も解き放ってしまうというピンチに陥ったスレインが、それでもチートな奥さんの力を借りて何とかしちゃう、というお話なのですが。
その、旧友のひねくれ具合が。
とても心に刺さるんです。
どんなに努力しても勝てない。
飄々とトップの座に君臨する天才。
かつ、能力をひけらかさない人格者。
権力欲がなく、能力相応の地位を望まない男。
自分は常にNo.2。
今で言うと呪術廻戦の夏油的な。
彼は、親友かつライバルというポジションにいながら、常に敵わない事に打ちのめされていて。
友情を信じてまんまと罠に嵌まったスレインに高笑いしながら、そんな過去の自分の事を、
「太陽の存在なくしては輝けん月だったのさ」
と言うんです。
自らは輝けず、他人の光で認知され、認められ、綺麗だねぇと褒められる。
その悲しさたるや。
それが、当時の自分には刺さりまくりましてねぇ。
光と影。
そんな事を思い出したお題でございました。
そして、(914.6)
引っ越し族だった。
小学生の頃が一番大変だった。
子供は無知で正直で残酷だから。
自分とは異なるものを、己の正義で正そうとし、嘲笑う。
関西から関東に引っ越してきた時、喋るたびに笑われた。
単語が違う、イントネーションが違うと。
同じ日本語なのに。
関西圏では正しい言葉なのに。
それ、笑うところ?!
通じない単語ならまだしも、イントネーションなんぞ、通じれば何でも良くない?!?!
そして、
その経験のおかげで、
好き嫌いはあれど、多様性を認め、他人を否定しない、いくらかマシな人間になれたと思う。
ーーーーー
追加
そして、(オリジナル)
コンプラ違反で稼ぎ頭がクビになった。
情報漏洩でIT人材がクビになった。
パワハラで人が病んで辞めた。
セクハラを訴えて事務員が辞めた。
SNSで拡散され、捜査が入った。
主任がパワハラでクビになった。
副社長がセクハラで解雇になった。
時給1130円で土日夜勤可の経験者募集するも来ず。
激務に1人辞め、2人辞め。
給料の未払いで社長一家が夜逃げ。
そして、
誰もいなくなった。
tiny love(914.6)
私は鳥が好きだ。
犬派か猫派かと聞かれれば、鳥派だと答える。
ちなみに、
ガンダム派とエヴァ派なら、銀英伝派。
クラスに二大勢力あれば、常に第三勢力。
飼っていた動物を好きになりがちなのか、
好きだから飼うのか(卵が先か鶏が先か問題)。
はたまた、
争いを好まず、王道から外れた生き方をよしとする性格ゆえか。
単なる天の邪鬼か。
閑話休題。
鳥のうち特に、
小さくて頭がつるつるしている子が好きだ。
なでなでしたくなるキュートさがある。
カモなどの水鳥も好きだ。
頭だけ潜って、水面に可愛いおちりが突き立っているのも可愛いし、頭の位置を戻した時に、水滴が、頭と体を伝ってつるんと流れ落ちるもいとをかし。
優雅に進んでいるように見えて、水面下で必死に足を動かしているのも、地上ではよろよろよたよた歩きになるのもまた可愛い。
鳥の、少しお馬鹿な感じも良き。
tiny love。
おもてなし(TOV)
宿に戻ったユーリの目に、異様な光景が飛び込んできた。
宿併設の食堂にリタがいたのだが、その目の前の食卓に、ケーキやクレープなどの甘い菓子がずらっと並んでいたのだ。
甘いものに目がないユーリとしては、頬が緩まざるを得ない。が。
「どうしたよ、これ」
リタは肩をすくめて目線をやった。
そこには、満面の笑みを浮かべた、エプロン姿のレイヴンがいた。
「青年、お帰り。待ってたわよ〜。さあさあ!座って!おっさん頑張っちゃった!日頃の感謝をこめて♡め・し・あ・が・れ♡」
胡散臭さ満載の笑顔と態度である。
ユーリは眉をひそめた。
「何やらかしたんだ?おっさん」
「え、な、何って?」
「おかしいだろ。急に。なんか謝らなきゃならん事でもしでかしたのか?どうせすぐバレるんだからさっさと吐いちまった方がいいぜ」
「ひっ、ひどっ!まだ何もしちゃいないわよ〜」
「まだ?」
「せ、青年、甘いもの好きでしょ」
「そりゃ好きだが…」
あからさまに話を逸らしに来ている。
何の理由もなくこれほどの菓子をせっせと作るはずもない。
ユーリはしばし考え、
「そっか。じゃあ純粋に感謝のおもてなしってわけで、食べた後で、謝罪もお願いもないんだな?」
そう詰めると、レイヴンはグッと言葉に詰まった様子であった。
(やっぱりか)
ユーリは席に着き、クレープを手に取った。
(美味い)
レイヴンの手作りだった。
「ううう…そんな事言われたら白状するしかないじゃない」
レイヴンはしばし唸っていたが、覚悟を決めてそう言った。ユーリの横に来て正座をし、手のひらを合わせて頭上に差し上げる。
「青年!お願い!この後一緒に酒場につきあって!」
「なんで」
「いや〜今日出会った、とっても素敵なお姉さんがさぁ〜青年を連れて来たら一緒に飲んでくれるっていうからぁ」
そう、ヘラリと笑った。
期待を裏切らないレイヴンらしい理由に、ふたりは心底呆れた。
「馬鹿っぽい…」
「裏事情しかねぇじゃねぇか。俺は釣り餌か」
「そ、そんな事思ってないわよ?!」
「じゃあ、どういうつもりだよ」
「そ、そもそも!!青年がフェロモン垂れ流しで歩いてるのがいけないのよ!」
「はぁ?」
「お姉さん、街中で青年見かけたらしいけど声かけらんなかったって、一緒にいたおっさんに声かけてきたんだもん。俺様の魅力を存分にお伝えして、夜一緒に飲みませんかって誘ったら、青年が来るならって…」
勢いの良かったレイヴンの声が、みるみる萎んでいく。
話を聞いていたふたりは、哀れみの目でレイヴンを見た。
「それ、普通にお断りされてるじゃん」
「モテねぇんだな、おっさん」
「ううう、傷つく」
レイヴンは肩を落とし、泣き真似をした。
気持ち的には本当に、少し泣いていたかもしれない。
その後、レイヴンの賄賂目的の手作りお菓子は、次々帰ってきた他の仲間のお腹におさまった。事情を知らないカロルやエステルから感謝され、少し報われた気持ちになるレイヴンなのであった。
裏ばっかり=表なし
思ってない=思てなし
モテない=おモテなし
消えない焔(オリジナル)(異世界ファンタジー)
声にならない叫び声をあげて飛び起きた。
全身にびっしょり汗をかいている。
荒い息をつきながら、胸元のシャツをギュッと握って痛みに耐えた。
痛いのは、心の臓ではなく、心。
いつもの夢を見た。
まだ夜は明けておらず、宿の部屋は真っ暗で、シンとした空気があたりを包んでいる。
誰にも気づかれなかったようだ。
ラッツは安堵の吐息をついた。
夢の種火は常に燻っていて、少しのきっかけで容易に燃え上がる。
今回は、久しぶりに合流したネオと酒場で情報交換をしているうちに、周囲の冒険者達を巻き込んでのドンチャン騒ぎになったことが原因だろう。
楽しかった。
だからこそ。
まだ10代の若い頃、孤児院の仲間3人とパーティを組んで冒険者になった。
当時、無知ゆえの万能感に溢れていた。
だから、禁忌に手を出した。
自分たちなら、何が起きても、きっとどうにかできると考えて。
今の技術では到底造れない古代の遺物を手に入れようとして、封印を解いてしまった。
今とは比べ物にならない強力な魔術時代の封印を。
そして、封印を解いた者に対する強力な呪いが発動した。
ラッツは洞窟の最奥で封を解くと同時に気を失い、次に目を覚ました時は洞窟の入り口にうつ伏せで倒れていた。
洞窟の入り口は巨大な岩が崩れ落ちて埋まっていた。その石の下から、見覚えのある手甲をした手が。
こちらに伸ばされるような形で、手首から先だけが。地面を真っ赤に濡らして落ちていて。
その時の情景が。
その後、洞窟を独り掘り進め、皆の変わり果てた姿に現実を突きつけられた慟哭が。
今も鮮明に夢で甦る。
封印を解こうと希望したのは自分だった。
仲間が持つドラゴンの魔防マントに対抗して、何か強力な物を、自分でも持ちたかった。
気を失った自分を、仲間が出口まで運んでくれた。
何の落ち度もない仲間の方が死んでしまった。
彼らの輝かしい未来を奪ってしまった。
そのせいだろう。
楽しいことがあると、己を戒めるように夢を見る。
己にその権利があるのかと。
知らなかったからといって許されるわけもなく、
しかし、孤児ゆえに謝るべき生者もなく、
許してくれる人もなく、
許されたいとも思っておらず、
罰されたいと思いながら、
罰してくれる人もおらず。
だから、種火のままいつまでも。
取り返しのつかない過ちに対する後悔と、彼らの歩めなかった未来を楽しんでいる事への罪悪感で、あれから10年以上経った今でも、ささいな事ですぐに轟々と燃え上がる。
大丈夫。もう巻き込むような仲間はつくらない。
助けられた命、彼らの分まで精一杯生きる。
決して彼らの事を忘れたりしない。
しでかした事も忘れない。
彼らの形見を胸に掻き抱き、ラッツは早鐘を打つ心臓を宥めるように、深く深く息を吐いた。
夜明けまでは、まだ、遠い。