『アオの双子(あおのふたご)』
夏、あっつい。
梅雨も開けてそろそろプール開き。
ボランティアで参加したプール掃除に行く。
ぽちゃん
「?」
足元を見ると小さな青いスライムのようなものがこちらを見ていた。
「みみみ……」と鳴く不思議なスライム。とりあえずここでは隠しておくことにした。
「それじゃーお疲れ様ー」
ワイワイガヤガヤ、各々が帰って行く中僕はさっき隠したスライムを見る。
「みみみみ……」なんだ、腹でも減ったのか。サンドイッチでも食わせるか。
昼飯用に残しておいたサンドイッチをパクリと一口でスライムは平らげた。
「………」「みみ……」……「バカ野郎」「んみ」
このスライム、バカだけど何か似ている。誰かに。
「みみみ」と鳴くので、名前は「みん太郎」にした。僕の名前も太郎だし。
その後の一ヶ月間。僕はそのスライムと過ごすことにした。
「みみみみ……」これは腹が減った合図だ。
「ほらよ」「んみ!」……おかしい。少し前まではハムが好きだったのに最近はハンバーガーしか食べてくれない。
「お前、僕と食の好み似てきてない?」「んみぃ」……まぁ、いいんだけど。
夏休みがそろそろ始まるそうで、またプール掃除をしに行くこととなった。
「お前ーついてくんなよー」「んみぃ!!」めっちゃついてこようとする。ウザい。
「ハンバーガー買ってくるからおとなしく待っとけよ!」「んm」ガチャン
遅れそうだったので急いで鍵を閉めて走り出す。あいつちゃんとまってるかな。
「ほーいじゃあそろそろ終わりだーお疲れなー」
意外と早く終わった。更衣室で着替えよう。
ガチャ「んみみ!!」……ん?「あっ」案の定あいつは家を抜け出したみたいだ。
「みみみ……」「なんだまた腹減ったのか。ちょっとまt」
「み、み、ミ、身ガホシイ」……「は?」
ぽちゃん
あれ、ここどこだ……目線が低いてゆうかからだがぬるい?
「あ、アオくーん!」「はーい」……アオって誰だ。てか、僕は、誰、だ、
何だか、腹が、減った……「みみみ……」
あれ、空って、あんなに、アオカッタッケ。いつにもマシテ快晴ダナ。
お題『快晴』
『超蝶飛躍(ちょうちょうひやく)』
ここはどこだろ。
暖かい……
歩き進めば見えてくるのは、なんだろこれ。心臓?
心臓は宝石のように輝いて周りの血液を赤々と照らしている。
もうすこし、奥に進めば見えてくるのは、うーん?羽かな?
真っ白に塗られた羽。少しだけ黒色が見えるような。
奥に、奥に奥に奥に奥に、
落ちている羽をたどって行けば、着くのは背中?
白いペンキが垂れ落ちる。
嗚呼、この翼、本当は黒色なんだ。
可哀想に。わざわざペンキで塗られたのね。
「正しい」と言う言葉に溺れ自我を失ったのね。
「善」「悪」そして「偽善」
自らの正しさそれが善。他人の正しさそれが悪。
そして他人の正しさに溺れてしまったのが偽善。
他人から見たら貴方の羽は黒なのでしょう。
だから白に塗り替えられている。
善に見せようたって結局は偽善。見せかけだけ。
でも、貴方にとってはこの羽は白色なんでしょう?
それなら間違っていない。ペンキのせいで羽が重くなって飛べなくなっている。
大多数には黒に見えても、必ず貴方の羽を白色だと気づく人はいる。
あぁ……足にだって重りがついている。
「親」「友達」「先生」「社会」「個性」「恩人」
ゾンビのように何度倒しても沸いてくるこの言葉。
切っても切り離せない。
だったら私が切ってみせましょう。
何を言われたのかしら。「不細工」?「死ね」?「生きてる価値なし」?
……大丈夫よ。貴方は貴方。誰も理解してくれなくたって。恥かいて生きてたっていい
「「生きるか死ぬかは自分で決める」」……だったら死ぬ?それも自分で決めていい。
そろそろ飛ぶ準備はオーケー? ……後はその背中を少し押すだけ。
お題『遠くの空へ』
※偽善=見せかけの善行。まやかし。
『』←(題名です。書き忘れたわけではありません。)
言の葉と書いて「言葉」と読む。
言う「葉」これの由来は「葉は木にとって特徴があるように、話すことによって人が判別できるということから」だそう。
言わば多様性なのだ。
現代では多様性、多様性、多様性、煩すぎるほどに「「多様性」」
いつからだろうか。
そう言いはじめたのは、実は50年も前だったりする。
その頃はたった一つ「性」についてだけだった。
しかし今は、
「人種」「国籍」「性別」「年齢」「障害の有無」「宗教」「性的指向」「価値観」
溢れに溢れかえり、そして今さら受け入れようだって?
別にいいんだ、恋愛に性別や年齢が関係なくたって、どんな人種だって、
でも、日本はなんだか周りに合わせているだけのような気がする。
急に言いだしただろう?「トランスジェンダー」
別にいいとは思うんだ。性別がどうだろうと、でも何故か偽物が多すぎる。
しかも、その偽物達はこぞって「性差別だ!」的なことを言いやがる。
そうやって、本当の人達を虐めている貴方達の方がよっぽど性差別だよ。
でも、これでもまだ一部。
この個性溢れる社会、君はどう生きていく?
自我を貫き通す?
ただの飼い犬になる?
何もなく死んでゆく?
誰かにしがみついて生きていく?
平凡に生きて枯れ落ちる?
今こそ戻ってみるべきじゃないか?言葉が無かったあの頃に。純粋だったあの頃に。
折角手に入れた言葉という多様性。活用する他ないであろう?
その多様性からもふきこぼれる君だけの新世界。
それが「言葉にできない」ということなのではないだろうか。
お題『言葉にできない』
※煩すぎる=読み。うるさすぎる
※多様性=ある集団の中に異なる特徴・特性をもつ人が共に存在すること
『春日起想(しゅんじつきそう)』
今日は大切な人の命日。
あれからもう十年もたったのか。早いもんだ、十年なんて。
今日も君の前に立つ。
君は、お饅頭が好きだったよね。
すごいよね。人の死って。たった一つ「死んだ」という事実だけでどんなことでも、変えられてしまう。
「あの人の代わりに頑張る」
「あの人の為に死ぬ」
「あの人の為に生きる」
感情の原動力になる。
君の為に植えた桜も今年は満開だ。
君は僕を守って死んだ。交通事故、僕はショックで君のことをほとんど忘れてしまった
君がフランス人のハーフだったことは覚えている。君の名前は覚えていない。
フランスに留学して緊張ばっかしていた僕を君は笑って絆してくれた。
春になって、一緒に花見に行ったよね。鼻に桜がついていたのは可愛らしかった。
しばらくして付き合うことになって、大きな桜の木の下で告白した……と思う。
その後、一緒に散歩して……そこからはほぼ覚えていない。
僕が君の名前を呼んでいたはずなんだけど、どんな名前だったかな。
んー日系の名前だったと思うんだけどなぁ。
僕は君に手向ける花を持っていない。なんでだろう。僕も分からない。
あ、お墓の上にてんとう虫がいる。落っこちそうだ。助けてあげよう。
「……!」
そう君のお墓に触れた瞬間僕は全てを思い出した。
君の名前は桜。僕が手向ける花を持っていないのは君がそうしてと言っていたからだ。
フランスでの桜の花言葉は「私を忘れないで」
……皮肉なものだね。桜という名前なのに忘れてしまっていたなんて。
「あっ」
助けたてんとう虫が空を飛び、それを合図に桜がざわめく。陽の光が少し眩しい。
貴方には、大切な人はいますか?その人のこと、今でも思い出せますか?
お題『春爛漫』
※春爛漫=花が咲き乱れてあふれ、美しく輝く春
※フランスの花言葉(桜)=私を忘れないで
※手向ける=旅立つ人に餞別(せんべつ)を送ること
余談なんですが、一回途中で全部消してしまいました。皆さんは途中で消してしまわないように注意しましょう。所々おかしい文になっているかもしれませんが、お許しくださいませ。
『愛反する(あいはんする)』
「別れよう」
僕がそういうと君は懇願する目で「嫌だ」と言ってきた。
でも、証拠はもう揃ってるんだ。ごめんね。
絶望する君の目の前に写真を落としていく。
嗚呼、本当はこの写真に写ってるのは僕と君だったはずなんだけどなぁ。
何でおっさんと写ってる君がいるのかなぁ。
「パパ活?」
「違う」
何が、違うのかな。僕のお金じゃ愛じゃ、君の心は満たされない?
もしかして僕は……
「っ……」
君が僕の喉にナイフを突き刺す。
僕と別れるより一緒に死んだほうがいい?
涙目の君の喉元に僕もカッターを突き刺す。
これ、君がよく使ってたカッターだよね。やめてって言ったのに。こんなに錆びてる。
僕じゃ満たされないものがきっとあるのは分かってる。でも、寂しかったよ。
「「ゴフッ」」
血が、同時に、
「……」
あーあ、おっさんになれちゃって気づかなかったんだね。
変装させたおっさんにも気づかないんだね。
僕はそんな君が誰よりも、ずっと大好きで、
ずっと、ずっと、ずっと、死んでほしかったんだ。
次は、間違えないでね。来世も待ってるよ。
お題『誰よりも、ずっと』
※パパ活=援助交際とも言われる。言わば闇バイト。若い女の子が20~幅広い世代の男性(パパ)とお出かけ等をしたりその他もろもろ。反対語はママ活。やりすぎはしないようにしましょう。