『矛盾色(むじゅんしょく)』
あの子は水色。
あの子は赤。
あの子は黄色かな。
僕には人にぼやっとした色が浮いて見える。
皆色んな“個性”を持っていていいね。
君は無色?
珍しいね。無色だなんて。
色には必ず意味があってね、時と場合によって変わったりもするんだ。
赤色のあの子が視ているのは葛藤かな。怒号が聞こえる。
水色のあの子が視ているのは澄んだ世界。少し涙の味。
黄色のあの子が視ているのは向日葵畑?でも、向日葵は枯れかかっている。
無色の君が視ているのは、何もない世界?
足元には薄く水が張っていて……薄暗い。
あ、反対側を見てみて!
逆にカラフルだね。
これは無色の人にしか視えない世界。きっと感情がごちゃ混ぜになっちゃってるんだ。
なんでもあってなんでもないんだね。
色は個性。でも、無色だからって無個性ってわけではないよ。
無色ってのは最強の色なんだ。
何てったって無色はどんな色にでも染まるけどどんな色にも染まらないもの。
矛盾してる?そう。矛盾している色それが無色。
最強だけど、最弱の色。
よく無個性だって自分のことを卑しめる人がいるよね。
無個性だって立派な個性。
何なら個性の頂点なんじゃない?
だって無個性って一番個性として価値が高いじゃない。
あれ、そう言っている内に君に色がついてきた。
僕が言ったからかな?
発っせられる言葉は色。色って思った以上にそこら辺に転がっている。
そう言っている内にまた一色。どんどんと染まっていく。
泣きじゃくる君の瞼に、今日も僕は色をのせる。
お題『無色の世界』
『斉一性桜(せいいつせいざくら)』
「さくら」
「なぁに?」
僕には幼なじみがいる。さくらと言う可愛らしい名前の女の子だ。
少しぐらいしか会えないけれど、会える期間は毎日話している。
学校のことや家族のこと、相談なんかも聞いてくれている。
「ねぇ、さくら」
「なぁに?」
「僕、もうすぐで死ぬかもしれない。」
さくらは何も言わず、ただ、静かに虚空を見つめていた。
「僕、いじめられてるんだよね。」
最近周りの皆が冷たくって全然僕と話してくれないの。
「なんかしちゃったかなぁ」
窓の縁に座り、満月を眺めていた。
「ねぇ、さくら」
「なぁに?」
「僕、今年は一緒にいけるかもしれない」
「ねぇ、あの子」
「あー死んだんだっけ?」
「え、誰?」
「何か花に向かって喋ってて気味悪かった」
「なんそれキモw」
君が居てくれた時は毎回楽しかった。
僕、話す相手っていなくってさ。
君だけは何も言わず、ただ聞いてくれるだけだから心地よかった。
毎年春が過ぎると寂しくなるけど、今年は一緒に逝けるね。
人間は散る時美しいのなんてごく少数だけどさ、花はいつも美しいよね。
僕も来世ではもう少し美しく散ってみたい。
お題『桜散る』
※斉一性(せいいつせい)=物事が一様であること。ととのっていること。
※虚空(こくう)=何もない空間、大空。
『理想のままで(りそうのままで)』
君にはお気に入りの場所ってあるかい?
例えば海。とっても綺麗で吸い込まれそうだよね。
例えば山。野うさぎ可愛いよね。
例えば空。誰しも一回は空をとんでみたいって思わない?
例えば自室。なんだろう。一番落ち着く。
例えば学校。賑やかで楽しいから僕は好きだな。
例えないで言うと、君の胸の中。
とっても暖かくて僕が、君が、生きているって実感できる。
でも、とっても好きなんだけど君は最近そこに居させてくれない。
少し寂しいけど、大丈夫だよ。だって君が好きだもん。
今日はどこに行ったのかな。誰と話したのかな。何を食べたのかな。
知りたいことでいっぱいだ。
ねぇ、君さ、最近帰ってくるの遅くない?気のせいかな?
いつもより火照った顔で帰ってくる。お酒でも飲んできたの?
そういえば最近聞いたよ。同僚の山田さんと仲いいんだってね。
君好みの男性だよね。優しくて、格好良くて、相談にものってくれるらしいじゃん?
どんな相談をしているのかな。あぁ、そういえばこの前君の声を録音したんだ。
僕のことを話してくれていたのかな。にしては大分暗い声だったね。
僕のこと好き?
当たり前だよ。
おかしいな。前までは「当たり前だよ!」って元気に言ってくれてたのに。
ねぇ、あの人の胸の中は暖かい?君の匂いが変わってる。
明日もどこかへ行くの?忙しいんだね。でも、ごめんね。
ザクッ カランカラン
僕、君のお気に入りの場所が僕じゃなくなるの嫌だよ。
あぁ、とっても苦しそう……でも大丈夫だよ。お腹を刺したから、即死ではない。
綺麗。綺麗。綺麗だよ。君が世界一。今はどこにもいかないでくれるね。
暖かい。暖かい。暖かい。暖かい。
いつもより鮮やかなスカート。真っ赤なドレス綺麗だよ。
ふふふ。君の胸の中、あったかい。
お題『ここではない、どこかで』
『愛踊(アイドル)』
「届け!」
今日もそう言い、画面の前で愛想を振り撒く。
「皆ー!愛してるよー!」
わーっとコメ欄が盛り上がる。
「俺も愛してるぞ!」
「私も愛してる!」
「僕も!」
ワアアーッ
「皆ー!ありがとうー!それじゃあ最後!「でりばーどらぶっ」!」
ワアアーッ
「キタ━(゚∀゚)━!」
「神曲!」
「まってました!」
♪
「ふぅ。つっかれた~」
疲れたことを忘れる為にさっきのライブのコメントを見る。
「最高だった!!でりばーどらぶっアンコール!!」
「自分用 24:15 37:07 59:56 1:15:42」
「新衣装かな?スカートの部分が少し変わってたね。後胸ボタンが一個減ってる」
今日も皆いい感じに喜んでくれたようだ。
「!」
「もう、見たくない。もう、死にたい。」
……最近こんなコメントが毎回来る。
「……」
「……はぁっ~……アイドルは笑顔をお届けして皆を幸せにするお仕事なんだよ?」
「……仕方ないなぁーもう。」
~~~~~~~~~~
「よーし!皆!私を愛する準備はオーケー?」
「え、急に特別ライブ?」
「やったー\(゚∀゚)/」
「……」
「皆の為の特・別・ライブ!今後やることは絶対ないから目に焼き付けといてね!」
「じゃあ早速さっきのでりばーどらぶっ!から!」
ワアアアーッ
誰かに、皆に、君の為に
「今日も私は愛踊る」
お題『届かぬ思い』
『神近感(しんきんかん)』
神、本当にいるのだろうか。
お母さんに聞いてると「神様はいるのよ」と
お父さんに聞いてみると「神様はいない」と
君は考えてみたことあるかい?
「神様は実在しているのか」
とある信者は言う「神様はいるに違いない。なにせ私達を守ってくれているのだもの」
とある学者は言う「神はいない。科学的根拠が存在していないからだ。」
とある君達は言う「神様、いたらいいな。どんなお願い事をしよう。」
また、とある僕は問う
「神様がいる必要はあるのか」と
皆、何故かことあるごとに「神」という存在にすがろうとする。
「皆が幸せになれますように」
「あいつが死にますように」
「僕が成功しますように」
これら全て愚問である。
なにせ神は、、、
神が本当にいるかいないか証明する方法がこの世にあるとすれば一つ。
「一回死んでみる」こと。である。
死ぬのが怖い。そうかもしれない。でもそれ以上に知りたいのだ。
「神はいるのかいないのか。はたまた必要性はあるのか。」
大事な煙草を吹き散らし、僕は最期神へ問う。
「僕が生きている意味はあったのか」
ーーーーー昨夜、未明。東京都の○○区のアパートで「自分は神だ」と名乗る男性が死んだそうだ。死因は首吊り自殺。部屋には空の煙草の箱と丸い蛍光灯が頭の上に置いてありーーーー
僕は、君は、
何者なのだろう。
お題『神様へ』
※愚問(ぐもん)=愚かな門答。無意味な門答。
※すがる=頼みの綱としてしっかりつかまる。しがみつく。頼りにする。